第45話 オネェさん軍団に頼まれた品と、新たな商売
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新しく入った者たちも、新たな職場になれるのに、時間は掛かろう。
そういう意味でも、少しずつ彼らが新たな生活に馴染んでいけたらいいのじゃが……と思いつつ、ワシはコツコツと作るアイテムを考える。
この前のパーティーで考えた付与魔法は、後日作るとしてじゃ。
MPも豊富になってきた今、高級店への出荷用があまり始めてきた。
余る……とも違うが〝ここまで出したらこの先は明日以降〟と、アイテムボックスの数を決めて出すことにしたのじゃ。
そうする事で、一定数の供給は確保され、ワシの時間の余裕というのも生まれる。
その生まれた時間で、新たなる商売や、アイテムを考えるわけじゃが……。
「新たなる商売をしたくとものう……」
調理師たちは現在手一杯な部分がある。
これ以上何かをさせればブラック企業よろしくになってしまう。
それは避けたい。
今のところは、現状維持が望ましいか?
そんな事を考えつつ、ワシも次なる一手を出せずにいたのじゃ。
暫くは現状維持が望ましいじゃろうし、さて、どうしたものか。
今でも十分な稼ぎにはなっておるが、もっとできれば稼いで、皆の給料アップも考えたいし、何よりマリアンの為にも資産は必要じゃろう。
「次なる一手……」
「あらん? お悩みかしらん?」
「あららん? 困ったわねぇ。ご相談できるかしら?」
「ん?」
一人悶々と考えておると、後ろにはオネェさんたちであるエリーマリーリリー達がたっておった。
「もう、女性用の着流しの本、くれるんじゃなかったんですか~?」
「おお、忘れておったわい。すぐ用意する」
「こう、爪もお洒落ができたらいいのだけれどねぇ……」
「それは思うわぁ」
「爪もお洒落にか……」
そういえば、ワシの箱庭の持ち主であったリディアは〝マニキュアで店を大きくもした〟とも書いてあったのう。
ならば、ワシもマニキュアを作るか?
母が色々持っておったし、ワシも塗り方なら覚えておるからの。
寧ろ、母の指先を整えるのは、ワシの役目でもあったので得意な方じゃ。
「ふむ、指先を綺麗にするものはあるぞ」
「「「本当⁉」」」
「うむ、マニキュアというのじゃがな」
「それ、大昔にあったアイテムじゃなかったかしら?」
「ええ、ファッション界では有名よね? 当時はとても流行ったと聞いているわ」
「ハヤトちゃん、それ作れるの?」
「作れるぞ。塗り方もバッチリ覚えておる」
「「「きゃ~~素敵~~‼」」」
野太い声が響き渡る……。
「そうなると、爪を彩るい絵師を雇う必要があるわね」
「ああ、マニキュア専門店ね?」
「ハヤト様、どうかしら?」
「むう、そこまで考えてはおらんかったが、いたほうがいいのかのう?」
「「「絶対いたほうがいいわ」」」
「なら、マリアンが戻ってきたらお願いするとしよう。丁度頼みたいこともあったからのう」
そう言いつつ着物カタログの雑誌を〝ロストテクノロジー〟で作り上げて手渡し、ついでに当時母の持っていた〝マニキュアカタログ〟も作って手渡すと、三人とも食いつくように見ておったわ。
「こんなにも爪のお洒落があるなんて……」
「これは是非絵師を雇うべきよ」
「そして、使い方を教えるべきね」
「むう……なら、それはワシが教えるとしてじゃ。三人は着物の方を頼みますぞ」
「「「ガッテン承知!」」」
そういう所は男らしいのう……。
思わず遠い目をしそうになったが……取り敢えず〝絵師〟と、気になっておる〝箱庭師〟を雇うところから色々進めていかねばならんな。
できればもっと調理師も雇いたい。
最悪商業ギルドから雇う事も視野に入れつつ、今後の見通しを立てていこう。
まずはじゃ。
マニキュアの再度普及。
これでマニキュア専門店を作れれば、多少なりと商売にはなるじゃろう。
次に、軽食屋。
パンを使ったカフェを作りたいし、何より牛丼がワシは食べたい。
丼物屋を今後展開していきたいところじゃ。
最終的には焼き肉じゃな。
これは絶対外せんのう。
屋台を作るとしたら焼き鳥やは欲しい。
無論、ワシが食べたいからじゃがな。
マリアンと外を歩いたとき、牛肉や豚肉、鶏肉を使った焼き鳥屋はなかった。
いい棲み分けはできそうじゃと思う。
ああ、何にしても調理師が足りんのう……。
コツコツ進めていくしかあるまいな。
「ハヤトちゃん、ハヤトちゃん」
「ん?」
「マニキュア、できるだけ早めに色々作ってくださる?」
「それは構わんが、どうしてじゃ?」
「この世界の冒険者たちは、何かと縁起を担ぎたがるのよ。爪にお守りの絵柄をつければそれだけで売れると思うわ」
「ほう?」
「後は貴族たちね。爪のおしゃれは透明なものは流通はしてるのだけれど、質が悪いのよ」
「それを、質の良いマニキュアを売っているってわかれば、貴族たちはこぞって来ると思うわ」
「なるほどのう……。わかった、絵師を雇い次第早めにしようかの」
やることは沢山あるが、まずはコツコツひとつずつからじゃな。
ここまでが順調ではあったのじゃし、気を再度引き締めていくしかあるまい。
何事もゆっくりじゃ。
ワシはスローライフを送りたい訳じゃが……その為にも何事もコツコツ進める。
これは決定事項じゃ。
「あら、ハヤト様如何為さいました?」
「おお、マリアン丁度いいところに。実はな……」
こうして、ワシはマリアンに今後の展望を語ると、直ぐに――。
「わかりましたわ。絵師を大量に、それと箱庭師もお米の方も含めて直ぐに集めます」
「すまんな。色々と迷惑をかける。その代わり、マリアンの指先はワシが綺麗にマニキュアを塗ろう」
「まぁ! それだけで俄然やる気が出ますわ♡」
「ははは!」
こうしてマリアンは直ぐに動き始め、商業ギルドに人を雇いに行った。
ワシのために色々動いてくれるマリアンに、少しでも恩返しができればいいのじゃがのう……。




