第43話 スキルでの仕事場わけと【箱庭産】の爆発的な人気に……
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翌朝、朝食を全員が終えると、マリリンの元で保護されていた第二陣の面々を集めてスキルに応じて仕事場を割り振る作業に入った。
無論、まだ子供が幼い家は母親なり父親のどちらかが面倒を見る事になるが、そこは無理強いしないがの。
ただ、幼い子供だけで保護されている場合も多く、出来ればあちらの世界で言う、保母さんなり保父さんになってくれたらとは願うが……。
また、有難い事に調理師や漁師と言うスキル持ちも多かった。
漁師のスキル持ちは、内陸に居た為本当にどぶ拾いのような生活をしていたらしく、ここではシッカリと漁師として力を発揮して貰いたいと思う訳じゃ。
「と、言う訳で調理師たちには今後、調理場、及び燻製小屋が主に働き口となる。無論ワシは他の料理関係の仕事も考えている為、そちらに行って貰う可能性もあるがの」
「「「分かりました」」」
それでも数十人の調理師たちを仲間に出来たことは大きい。
米があれば色々作れる上に、パンでもそれなりに色々と作れる。
料理は余り得意ではないが、調味料は作れる。
料理本を出して読んで貰い、カフェを開くのもええかもしれんな。
また、漁師も合計で15人に増えた。
これでムギーラ王国に魚を売りさばくことも可能となるし、何より一夜干し等にして売りに出す事も出来るようになる。
魚のさばき方等は、調理師を派遣してもいいしのう。
ただ、魚を食べるという習慣がないのならば、中々に難しい。
新鮮な魚を食べれば、絶対に売れると思うんじゃがな。
「胡麻和えも捨てがたいし……やはり海鮮丼……」
「料理ですか?」
「うむ、知っておるのか?」
「はい、お父様の方のお婆様のお宅でよく食べますわ。お米でしたらお父様に頼めば日本から持ってきて貰えると思いますけど」
「いや、この世界の米で作りたいんじゃ」
「この世界の米ですと……とある箱庭で少し作っている程度ですわ。ハヤト様がお母様にご依頼されていた品ですよね? ムギーラ王国で見つけた男性らしく、ハヤト様に合わせる為に今度面会の機会を設けるそうですわ」
「ふむふむ。それは有難い」
「箱庭師の中には、畑が箱庭にある人がたまにいらっしゃいます。麦ならいいんですが、物によっては売り物にならない人も多くて」
「ほう。ちと箱庭師を募ってみるかのう」
箱庭の中で育つ植物と言うのも気に掛かる。
こちらの世界では珍しくて使い勝手がない物でも、ワシにとっては金貨に見える可能性も捨てきれんからな。
おっと、まだスキルの途中じゃったな。
「話の腰を折ってすまんかったのう。それで裁縫師じゃが」
「アタシ、マリー」
「あたくし、エリー」
「あたし、リリー」
「濃い面子じゃのう……オネェさん軍団か」
「「「んふ♡」」」
なんと、女性かと思っておったらオネェさん達じゃった。
見事な逆三角形の見事な筋肉。
ここでも筋肉か。
うむ、ワシも慣れてきたぞう‼
「お主たちは裁縫師ギルドにて雇い入れる。布や糸はワシが作れる為、必要ならば言うてくれ。ある程度のものは出せるじゃろう」
「あら、ありがたいわ」
「でもでも、あたしたち、この着流しっていうの?」
「スッゴク気にいっちゃったの~ これの、女性版ってあります?」
「あるぞい。着付けは随分と違うが勉強するのなら本を渡す」
「「「いや~ん! ハヤト様ありがとー♡」」」
野太い黄色い声が箱庭に木霊し、ギョッとした者達も複数人いたが気にしない方向で行くとしようかのう。
どうやらマリーリリーエリー達は着物が着たいらしい。
ここの場合は浴衣じゃが……浴衣生地も今後作って行かねばなるまいな。
ワシも、なんだかんだと「しじら織り」の作務衣をきておるしな。
着物生地はワシは木綿が一番好きじゃが、今は総じて綿と表示される事が多いらしいという話を昔何かのニュースで見たことがある。
今はデニム生地で作られたのも多い様で、幅広くなったもんじゃのう。
その後もそれぞれのスキルの応じて役割を分担し終え、先輩方である最初に箱庭に保護された者達が彼らを連れて仕事場へと連れて行く。
さて、ワシもどうしようかと思ったその時じゃった。
「ハヤト様~~‼ ハヤト様大変です――‼」
「アスカレイ、どうしたんじゃ?」
箱庭産の商品を色々売ってくれている元【ロクサーヌの雫】のアスカレイが息を切れさせつつ走ってくると「大変なんですよ‼」と口にして事情を説明してくれた。
「箱庭産と言うだけで、炭も木材もお皿も飛ぶように売れまくってます!」
「そうか、それの何処が大変なんじゃ?」
「特に貴族様からのご注文が殺到してまして……。ほら、王城のパーティーで一悶着あってその時にナースリス様の加護をハヤト様が貰ってるってバレちゃったでしょう?」
「ああ、そう言えばそうじゃったな」
「少しでもあやかりたいという貴族が大勢詰めかけて来てます! もう対応しきれないくらいには!」
どうやらアスカレイたちでは貴族の対応はしきれないらしく、横暴な貴族たちを何とか抑えて居る状態なのじゃと言う。
これは由々しき問題じゃ!
「そこで、商業ギルドに中間で入って貰う事にしようかって皆で話し合ってて……。そうでもしないと貴族の圧が酷くって」
「なるほどのう……。商業ギルドを通せばある程度はワシ等に向く目が緩和するか。わかった、そこはお主たちに任せよう。ワシも商業ギルドに行った方がいいか?」
そう問いかけると「来て欲しいですけど、うちの娘を嫁にって押しかけてきますよ?」とゲンナリと言われ、流石にそれは困ると思い悩んでいると――。
「それでしたら、私が行ってまいります」
「マリアン。頼めるか?」
「お任せくださいませ」
「嗚呼、箱庭のもう1人の女神……マリアン様お願いします!」
「もう1人の女神なんて烏滸がましいです。さぁ、参りましょう」
こうして商業ギルドの方はマリアンに任せ、ワシは少し目を閉じて悩んだ。
王城でのパーティーでワシの事が大々的にバレたとはいえ、ここ迄影響があるとは思ってもおらんかったからじゃ。
「むう……。マリアンに負担をかけさせたくは無いんじゃがのう」
『恐らく負担とも思っていませんよ。自分の領分を分かっていらっしゃいますから』
「マリアンにここは任せておくと良いですにゃん」
「むう……。男として婚約者として不甲斐ない」
せめて贈り物の1つくらいはしてやらなねば割に合わん。
ただでさえマリアンには負担を駆けておると言うのに……。
「あの……ハヤト様?」
「ん? なんじゃ?」
そうワシが悩んでおると、箱庭の外には出られぬミアが声を掛けてきた。
「これはマリアン様が口にしていた事なんですが」
「うん?」
「外に出る時は、ハヤト様の店の者と分かるマントか何かが欲しいと……」
なるほど、確かにそれは名案な気がするのう。
しかし、ワシと分かるマントは想像つかん。
羽織ならば想像つくのじゃが……。
「羽織……」
和風の羽織等、早々見当たらんじゃろう。
それならばと、アスカレイたちを含む外で働く者達用と、ワシとマリアン用にと、薄手のデニム生地を作り、ワシの文字を入れて貰う事でマークとする事にしたのじゃ。
そうと決まれば、薄手のデニム生地の作成じゃな!
早速始めるとするか!