第42話 たまにはお互い、素直な気持ちを言葉に乗せて
ブックマーク、評価、感想、誤字脱字報告ありがとうございます。
パーティーも終わり、箱庭に帰った途端駆け付けてきたのはミアとテトじゃった。
どうやらパーティーの様子を異世界テレビで見ていたようで、涙を流しつつ「愚かな父が申し訳ありません!」と謝罪してきた。
「なに、全てはナースリスが事を進めておったのは2人も知っておよう」
「ですが……ですが‼」
「私たちの恩人であるお2人に対して、父たちのしたことは許される事ではありません!」
「確かにそうかも知れんが、全ては終わった事じゃて。そう気に病む必要ない」
「今回の事であなた方を咎めるつもりもありませんし、心配しなくていいのですよ?」
「マリアン様ハヤト様……」
「ありがとうございます1」
こうして一段落つき、お互い温泉に入って汗を流してスッキリししようと言う事になり、ワシとマリアンだけの夜遅くになったが温泉タイムとなった。
女湯と男湯は声は届くが姿は見えない壁になっており、ワシはゆったりと温泉に浸かりながらマリアンと会話を楽しむ。
「マリアンのドレス姿はほんに美しかったのう」
「あ、有難うございます! ハヤト様もとても素敵でしたわ」
「明日は休養日ではあるが、色々バタバタしていて、新たに保護した者達のスキルチェックが出来ておらんかった。明日それをしようと思う」
「かしこまりましたわ」
「じゃが、マリアンがそれぞれのスキル一覧を作ってくれているから助かる……。後は割り振りだけじゃからのう。正に有能じゃ」
「お、おほめ頂言えて光栄ですわ! 皆さんが生活をしやすいように色々話を聞いておりましたの」
「そうか……。ワシの至らぬ点をマリアンが助けてくれる……。ワシの方こそ感謝しておるぞ」
「そんな……。でも、有難うございます」
お互いに風呂に入りつつ、心の中をさらけ出す。
たまにはこんな夜もあっていいじゃろう。
すると――。
「私……守る事はあっても、好いた男性に守られたのは初めてなんですの」
「む?」
「あの時、腕を引いて庇ってくださいましたでしょう?」
「あ――……うむ」
「とても嬉しかったのです……。ハヤト様……大好きですわ。お慕いしております」
「そ、そうか! その……うむ!」
「ふふふ」
マリアンのストレートな思い。
年齢だのなんだのと格好つけておったが、マリアンの心の清らかさ、そして優しさは天下一品じゃとワシは思う。
そうなると、やはり年下であっても、心根の綺麗な娘と一緒に居たいと思うのは至極当然であって……やましい事はない。
「ワシも……」
「え?」
「ワシも……好いておるよ」
「――ハヤト様!」
「それ以上は今は流石に言えん。恥ずかしすぎるからのう」
「ふふふ! 嬉しいですわ!」
その一言。
恰好が良いとか、もっと気が利いた一言でも言えればいいのに言えず、その程度の言葉しか言えないというのに……マリアンは心から喜んでくれた。
――嗚呼、愛おしいとはこういう事か。
「ワシは幸せ者じゃな」
「私もですわ」
こうして風呂から上がり、マリアンに髪を生活魔法で乾かして貰ってから部屋へと戻る際中、ふと湯上りのマリアンと目が合った。
「……」
「どうなさいました?」
「いつもと違う化粧の姿もええが、ワシは何時ものマリアンの方が好みじゃ」
「!」
「何時も装いも仕事のしやすい服装で何時も駆けまわって……。化粧とて最小限じゃろう?」
「そう……ですわね」
「じゃが、それがワシには……好ましく思う」
「……嬉しいです」
「マリアンは、ありのままで、ほんに美しいのだな」
素直に出た言葉。
素直に思えた言葉。
その言葉を聞いてマリアンは立ち止まると、顔を真っ赤に染めて――。
「それ以上言われたら、私……ハヤト様を抱きしめすぎて骨を折りそうですわ! お休みなさいませ!」
「う、うむ! おやすみじゃ!」
そう言って部屋に駆け込んでいった。
少々言い過ぎたじゃろうか?
じゃが、本音じゃ。
本当に、マリアンが愛おしくてたまらんのは、事実じゃ。
生前では得られなかった居場所。
そして、ワシだけを好いてくれる女性。
それらは、ワシにとっては全てが眩く、そして全てが愛おしいのじゃ。
『ハヤトもやっと素直になってきたんですね』
「……たまにはそう言う日もあっていいじゃろう」
「マリアンとても嬉しそうでしたにゃん♡」
「うむ……。もっともっと喜ばせる事が出来たらええのう……」
男の甲斐性と言うべきものなのか。
婚約者に対して何かをするというのは、この世界での事は知らんが、何かしらプレゼントするのは定番じゃとしっておる。
プレゼントか……。
服ならばマリアンと言うモデルを用いて色々作っておるし、食べ物もなんだなんだとマリアンと最初に食べる事が多い。
となると、何がええじゃろうか……。
「マリアンへの贈り物は悩むのう」
『そうですね……。毎回共にいらっしゃるから大抵の事は知っていらっしゃいますし』
「チョコ生地で作ったチョココルネはどうなのにゃん?」
「いや、形に残る物を贈りたい」
そいえば……錬金アイテムと付与とで完成する『身代わりの華』と言うアクセサリーがあったのう。
それを作るのも手か。
美しいバラで作ったブローチはお守り代わりにもなるじゃろう。
ピンブローチならば邪魔にはならんじゃろうしな。
合間を見て作って行こうと決め、ワシも部屋に戻ってベッドで横になる。
アンジュもワシの近くで横になり、ナースリスも静かに眠りについた翌日――。