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老成転生~少年ボディで箱庭スローライフ~  作者: うどん五段
第一章 伝説の箱庭師の箱庭を受け継ぐ

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第32話 地獄からの救出の前に、準備を進めよ!

ブックマーク、評価、感想、誤字脱字報告ありがとうございます。

 4日の間に、箱庭では受け入れ態勢が必死に行われた。

 ワシは店などがある為そっちに掛かりっきりじゃったが、箱庭の皆は必死に、それは戦場のごとく用意に明け暮れた。


 

「赤子用のヤギの乳は充分ですか⁉」

「パン粥はどれくらい後作りましょうか!」

「子供だけで暮らすための施設がありましたよね⁉」

「中の掃除は徹底して行っておきました!」

「寝具もバッチリです!」

「どれくらいの人数が来るかは分かりませんが、バスタオルや肌着、着替えの着流しは充分です!」


 

 そう、この箱庭にて【着流し】を着ている者はかなり多い。

 特に男性に多いのだが、麻と綿混合で織られた着流しは、楽なスタイルとして定着しつつある。

 それに加え甚平もワシの発案で作られており、男性は甚平で過ごす者も多かった。


 過ごしやすい気候に砂場の多い地形。

 仕事中は甚平で過ごす男性陣は正に当たり前の風景となりつつある。

 ワシだけは、作務衣姿に頭に手ぬぐいを巻いている為、一目で違いが判る状態にはなっておるのじゃ。


 

「明日にはマリリン達が到着する。ワシも明日はそっちに掛かりっきりになるつもりでアイテムを作っておる。気合を入れねばな」

「無理はして欲しくありませんが、こればかりは致し方ないのでしょうね……」

「マリアン。お主が此処を束ねるワシの相方ともなれば、色々と苦労も多かろう」

「その様な事はありません。ハヤト様の為に尽くす事は私の使命。苦労と思う筈もありませんわ」

「ははは、頼もしい奴じゃな」

「では、最終確認に行ってまいります。店の方はお任せ致しました」

「アンジュがついてるから大丈夫にゃーん♡」

『私がマリアンについていきましょう』

「ありがとうございます。ナースリス様」


 

 こうしてマリアンは綿のラフなワンピースを翻して箱庭中を回るべく歩いて行った。

 全く、マリアンに任せておけば何かあった時の為の対策もバッチリになりそうで……頼もしい限りじゃわい。


 

「主、マリアンに惚れ直したにゃん?」

「惚れ直すも何もなかろう。マリアンはワシの一応婚約者じゃぞ? マリアンが自分を律して頑張るというのなら、尊敬もするし信頼もする」

「惚気ですにゃん♡ マリアンが聞いたら骨がきしむほど抱きしめて貰えますにゃん♡」

「本当にあの世に行きそうじゃからやめてくれ」


 

 マリアンの力の強さは母親のマリリン譲りな為、本当に力が強い。

 父、カズマ等ボディーブローを喰らい3メートル吹き飛んだほどじゃ。

 ワシが喰らえば内臓破裂の一発KOじゃろうな。


 いかん、あの世が見えるわい。



「マリアンに無礼を働いたあのブ……いやいや、あの令嬢は修道院に送られたそうじゃな」

「良い気味ですにゃん!」


 あの後、マリアンに噛みついておった令嬢は、カズマが言うには即座に学園を辞めさせられ規律の厳しい修道院に入れられたと聞いた。

 もっと早くにこうするべきだったと謝罪に来た両親に、カズマは笑顔で「親の監督責任が問われますね」と答え、相手は肝が冷えたじゃろう。


 他の家の令嬢たちも同じように他所の修道院に入れられ、もうマリアンを悪く言う者達はいない筈じゃ。

 それだけでもホッとできる案件ではあるが、良い話も無ければ気も滅入るというもの。


 後はマリアンに良い相手が出来てくれればそれでええ。


 

「主、素直じゃないにゃん!」

「ワシは素直じゃよ? 素直に、マリアンの幸せを願っておる」

「それなら主がマリアンをしあわせにすべきなのにゃん!」

「大事にしておるよ。ワシは今後マリアンを最も幸せにしてくれる相手に託すための架け橋じゃからな」

「はぁ……分かってないにゃん……」


 

 そう呆れられつつ仕事を全うし、数日分のアイテムを作り終えたところでMPの枯渇気味になり温泉へと入る。


 明日は決戦ともいえる日。

 どれだけの人数を受け入れられるかは分からんが、どうかワシを見くびらず、出来るだけ大勢の人が入れることを祈るしか他無い。


 己の見た目が幼いが故に、舐めてかかられるのは理解しておる。

 じゃが、故に本当に助けを必要としている者達を選別するという意味では……良いのかも知れんのう。


 無論マリアンについてじゃて真剣に考えておるわい。

 あの子の幸せはもっと、もっと高みを目指していい筈じゃ。

 歳離れたワシなんかよりも、もっと素晴らしい男性が現れてくれる筈じゃ。


 そう、願っておる。

 それで何が悪い。


 マリアンが別の男性と微笑み合って……むう。


 

「ワシも重症じゃな」


 

 温泉にブクブクと浸かりつつ口にはしなかった言葉。

 その先を言うのが、ワシとて恐ろしいのじゃ。

 じゃから、今のままでええ。

 今のままがええ。

 それで、ええんじゃ。


 少し長湯してから温泉から上がり、更にアイテムを作っていく時間。

 バタバタと他の者達も用意に明け暮れる時間、明日に向けての準備が終わりかけようかという時間で、ついに夕食時。


 ワシ等は何時も通り集まり、食事をして明日に備え早めの就寝となった。


 

「明日の早朝、人々の受け入れの為に動き出す。皆色々手を尽くしてくださって助かった。礼を言いたい」

「嫌ですよ~。私達の時だって色々手を尽くしてくださいましたでしょう?」

「そうですよ。今度は私達がまた、誰かの為に手を差し伸べるだけです」

「切っ掛けは何であれ、生きる気力を取り戻させてくれたのはハヤト様とマリアン様。その繋がりの糸が更に繋がればと思いますよ」

「うむ、感謝しておる! 明日は困っている住民が来たら色々と手を差し伸べてやってくれ」

「「「「はい!」」」」


 

 こうして各自アパートに戻って行き、ワシらも早々に眠りについた。


 翌朝6時。

 マリリンがワシとマリアンを呼びに来て、ついに人々の選定……と言うと可笑しいが、入れる人、入れない人を確かめる作業に入る。


 

「アンジュ、お主が頼りじゃ。頼んだぞ」

「任せるにゃーん!」

「行きましょう!」


 

 こうして、箱庭の外に出るとそこは――正に地獄の様な有様じゃった。

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