第30話 マリアンを攻撃する女子を放置等しておられるか!
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突き進むべき道は決まった。
リディアには負けるが、ワシとて手を差し伸べられる所は差し伸べたい。
マリリンに後日話があるという事を伝えて貰いにマリアンに行って貰い、ワシは何時も通り箱庭で作業を進めていた。無論、異世界テレビの横でじゃが。
大盛況のワシに任された店は連日超満員。
これで拍が着かない方が可笑しいというものじゃて。
そんな事を思っておると【ロクサーヌの雫】の面々がやってきて、「是非に箱庭での商売人として人生の再スタートをきりたい」と申し出てくれた。
「おお! お主たち引き受けてくれるか!」
「実は、俺達の両親は行商中に殺されてな……。跡を継ぐべきだった俺達は行くあてを失くして冒険者になったんだ」
「行商のいろはなら叩き込まれてるっす。それぞれが商材を分担して売る事は可能っすよ!」
「お任せください。俺達にもう一度商売人としての道を!」
「うむ……有難く思う! どうぞよしなに」
「「「ありがとうございます‼」」」
こうして箱庭の商材を売る面々も決まった。
安全を考慮して旅に出ての行商はしなくていい方向にも進み、彼らは今後、ワシがマリリンとの話し合い次第で、ムギーラ王国以外とも取引をするやもしれんと言う話をしておいた。
彼らもそれは納得し、まずはムギーラ王国での販路を開いて来てくれることも決定したんじゃ。
「箱庭産なんて、早々ないですからね」
「楽しみだな!」
そう語る面々にワシは微笑み、早速商材の見本を持ってムギーラ王国にでの販路を開きに行った彼らに、彼らの今後の未来に幸多からん事を祈った。
さて、ここ迄は……順調じゃが、ここからがワシの腕の見どころじゃ。
マリアンに頼んでマリリンとの交渉じゃが、上手く行けばいいが。
そう思った時、珍しく異世界テレビがブレてマリアンを映し出した。
一体何事かと思っておると、ザワザワと言う声と同時に雄叫び声、奇声が聞こえてくる。
そして、マリアンとマリリンのいる部屋のドアが開き、1人の質素なドレスに身を包んだマリアンと同じ年齢の女性が、目を血走らせて入ってきた。
『マリアン! アンタの所為でわたくしの人生台無しよ‼』
『アクアビア様!』
『家の跡も継げない、結婚相手も無理、お父様はそうそうにわたくしを見限ったわ! そしてわたくしは貴女を虐めた罪で修道院に入れられるのよ……。あんたの、アンタの所為で‼』
『あら、私の所為ではありませんわ。ハヤト様の申しておられました。人間、してきた事しか返った来ないと』
『きいいいいい‼ 婚約者がいるからって強気に出て! 愛し合っているなんて嘘! アンタを利用するための男性に違いないわ!』
『お好きに勝手に言うのは構いませんわ。でも……ハヤト様を馬鹿にされて黙っていられる程、私も寛容ではありませんの!』
おおっと?
こうなるとマリアンは強いんじゃ。
じゃが後で必ず凹むのは目に見えておる。
ワシは急ぎ人前に出る用の着流しに着替えてレディー・マッスルの自分の部屋に飛び出し、マリアンの元へと走っていく。
他の冒険者も、2人の言い争いに困惑しておる様で、マリリンはきっと頭を抱えておるじゃろう。
すると――。
「アンタなんて所詮はレディー・マッスルの娘だから利用されてるだけの大バカ者よ! アンタを愛するなんて絶対にありえないんだから!」
「そんな事は分かりませんわ!」
「絶対そうなのよ! 大体その見た目で愛されてるって思ってる訳⁉ その見た目で‼」
「そこまでじゃ‼」
ワシが声を上げて部屋の中に入ると、マリアンは目を見開きワシを見つめ、マリリンもニヤリと微笑むと「どうしたハヤト!」とワザとらしく声を上げた。
アクアビアとか言う令嬢は「ガキじゃない!」と驚いておったが、ツカツカとマリアンの隣に立ち、手をそっと握りしめて顔を見上げると、ワシは見つめ合って「大丈夫か?」と聞くとマリアンは小さく頷いた。
「ワシの大事なマリアンに好き勝手言ってくれたようじゃな……。この落とし前、高くつくぞ」
「何よりマリアン、こんなチビと婚約していた訳? ショタコンじゃない」
「人の話も聞く耳持たぬそなたのような女、誰が妻にしたいと思う。マリアンの見た目より、御自分の面白いその顔を鏡て見たことはおありか? 随分と醜悪なでブサイクな顔をしておられるが?」
「なっ!」
「皆の者! この無礼で醜悪なものはお帰りだそうじゃ。外に放り出せ!」
「は、はい‼」
「多少乱暴に扱っても構わん!」
「やめて、やめてよ! きゃあああああああ‼」
そうワシが言うと冒険者達は、ご令嬢故に扱いが困っておっただけの様で、掴みあげて外に放り出したようじゃ。
ギャンギャンと吠える声は煩かったが、暫くすると静かになったので帰ったのじゃろう。
「トドメをさして差し上げましょうかの? あの娘の親に連絡をした方が良いのではありませんかの?」
「今此方からお怒りの書状を相手の親に出したばかりだ。これでアイツは詰んだな」
「よい事ですじゃ。ワシのマリアンを好き勝手言いおって……。マリアン程の美しい女性は他におらんというのに、あ奴の目は腐っておるの」
「はわあ……♡ ハヤト様……っ」
「急いで来たが、マリアン大丈夫か?」
「今全てが大丈夫になりました……!」
「それは良かった!」
ワシが笑顔で答えると、マリアンは感極まってかワシを抱きしめて、慈しむように頭を撫でてくる。
「マ、マリアン?」
「やっぱり私の相手は……ハヤト様だけですわ♡」
「ははははは! まさに相思相愛! しかと見せて貰ったぞ!」
「わ、ワシはマリアンを心配して……」
「それを相思相愛と言うんだ! だが助かったぞハヤト。あの令嬢には毎回困っていたんだ」
「じゃろうな。逆恨みも甚だしい。しかし怪我の功名と言う奴じゃな。マリリンに話がある」
「うむ、マリアンから聞いて居る。話をしようか」
こうして、ワシはマリアンと共に、マリリンから他国の情勢や支援している国の話を聞くことになったのじゃった。
それは一言で言えば地獄。
地獄の中で生きている人々の話でもあった――。




