第27話 高級店は思いの外大盛況で、ワシとしてもホッと安堵したんじゃ
ブックマーク、評価、感想、誤字脱字報告ありがとうございます。
山のように出来上がった商品と、ついでに作った出来立ての菓子パンをアイテムボックスに詰め込み、さらに紅茶や珈琲用の角砂糖も作り、あとは店が完成するのを待つだけとなったのじゃ。
ダブルガーゼのパジャマも作って用意を怠らずに待っていると、店が出来たとの知らせが入り、さっそくその店を見に外へと出たのじゃ。
その際、庶民向けに卸している店にも立ち寄り、今後ともよろしく頼むと頭を下げて挨拶を済ませると、売り場を束ねる男性は恐縮しっぱなしじゃった。
新しい店はその店の隣にあり、中には箱庭へと通じる道を作って、裏手にある棚へ商品名を書いたアイテムボックスを置いていったのじゃ。
「店員は商業ギルドからでしたな」
「ああ、明日にはオープンできるだろう。価格設定はこちらで決めさせてもらったが」
「マリリンとカズマにその辺は任せる。飛ぶように売れるとええんじゃがのう」
「ああ、間違いなく飛ぶように売れるさ! 何せ甘味はこの世界では珍しいからね!」
「後は度々うちの冒険者も様子を見に来る。マリアンには、店の様子をチェックするように頼んである。例の貴族たちに関しては、出入り禁止となっておるから安心していいよ」
「良かったですわ」
ホッと安堵するマリアン。
マリアンを虐めていた者たちは、高級店すら使えないのじゃ。
「しかし菓子パンと紅茶珈琲、角砂糖に甘味。香り付き石鹸にボディーソープとシャンプーセット、ダブルガーゼのパジャマだけじゃが、最初はこの程度でええのかのう?」
「十分すぎるな‼ オープンが楽しみだ‼」
「オープン初日、明日だけど、一応マリアンとハヤトも雇った商業ギルドの方々に挨拶を。早朝だから忙しいとは思うけど、頼んだよ」
「うむ、頑張って売ってもらわねば困るからのう」
「ハヤト様の拍が着くのを楽しみにしてますもの。挨拶は怠りませんわ」
こうして翌朝挨拶を行うこととなり、早めの就寝をして次の日に備えたのじゃ。
早朝に着替えを済ませ、箱庭経由で店に向かうと、すでに陳列が始まっていて皆が感心しきっておった。
軽くあいさつを済ませると、作った者がワシだということで驚かれたが、気後れせず挨拶をし「今後の店を皆に支えてもらう為、是非とも頑張ってもらいたい」と伝えたのじゃ。
「私はマリアン。マリリンの娘です。この店をチェックする事を任されております。度々訪れて様子を見に来ますので、しっかりと働いて売って頂ければと思いますわ」
「かしこまりました。ハヤト様とマリアン様」
「足りないものが出たら、私が来た時にすぐに連絡を。初日は売り切れ状態でも構いませんわ。そちらの方が商品に価値がでるでしょうしね」
「かしこまりました」
「初日で大変でしょうが、頑張ってくださいませ!」
こうしてマリアンがまとめ上げたことで、ワシらも一旦箱庭に戻ることになったのじゃ。
貴族専用店がオープンすることになったが、果たしてどうなることやら……。
異世界テレビでも見ながら様子を見ようかのう?
マリアンと二人、箱庭から異世界テレビを見ながら高級店の様子を眺めていると、来るわ来るわ、ワシとマリアンが婚約して作ったと噂されてやってきた貴族たちが――。
『これは凄いな……。紅茶に珈琲……それに甘味まで』
『早めに買わねばすぐになくなってしまいそうだ』
そんな声を聞きつつ、店員たちは忙しく走り回っておる。
午前中だけでも凄い人だかりとなり、商品棚はあっという間に空っぽに。
だがすぐに補充されて、どんどん売れていったのじゃ。
「ほ――……。この世界での紅茶や珈琲、甘味とは高いとは聞いておったが、ここまで凄いとは思わなかったのう」
「ええ、とても凄いんですのよ? 砂糖や塩といった調味料はとてもお高いですから」
「それをふんだんに使った商品ですにゃん♡ 売れない筈はないですにゃん♡」
『私も菓子パンは食べましたが、この上なく幸せな味でしたね……。特に飴が好きです』
「なるほどのう」
店の中は、最早最後は奪い合いになっておった。
あれだけ作った商品も、夕方前には綺麗さっぱり売り切れ。
残った商品は何一つなかったのじゃ。
昼の三時には店仕舞いとなり、それでも外に並ぶ貴族の多さには驚かされたのじゃが、特に驚いたのは――。
『何故うちが入れませんの⁉』
『わたくしたちだって貴族ですのよ⁉』
『あんまりですわ‼』
『あなた方はマリアン様に酷い仕打ちをしたというご連絡が来ております。謝罪すらマリアン様が受け取らない程の仕打ちをしたと。そのような輩を店に通す訳にはまいりません』
『あのマリアンの癖に生意気なのよ‼』
『キイイイイ‼』
というご令嬢たちの騒ぎじゃった。
「あれが件の令嬢か?」
「そうですわ」
マリアンは笑顔で返しておったが、相当怒っておるのじゃろうな。
結局、彼女たちの家は店に入ることも、商品を買うこともできず、周囲からクスクスと笑われ、居ても立ってもいられずに去っていったのじゃ。
「ザマァないのう……。今さら後悔しても遅いじゃろうがの」
「全くですわね」
「今後も許す気はないのじゃな?」
「ありませんわ」
「なら、今後もあの者達は入らぬように伝えねばな」
「そうですわね。釘をさしておきますわ」
そう話しながらも、飴や甘味をどんどん作り、マリアンが次々とアイテムボックスに詰め込む作業は怠らなかったのじゃ。
今回は様子見ということで控えめに作ったが、これではどんどん作れるうちに作っておいた方が良さそうじゃ。
マリアンの見立てでは、一週間もすればある程度落ち着くじゃろうとのことじゃったので、その間は必死にアイテムを作ることにしたのじゃ。
溢れるくらいで丁度いい、というマリアンの指示に従うことにしたのじゃ。
そして、店仕舞いを始めた店員たちに話を聞くべく、マリアンとともに箱庭経由で店へ向かうと、店員たちは興奮した様子で今日のことを語ってくれたのじゃ。
異世界テレビでだいたいのことは知っておったが、それはもう大興奮だったのじゃ。
「商業ギルドよりさらに人員増加をお願いしようと思います! いやぁ……実に素晴らしい商品ばかりなので、明日はもっと貴族様が来ますよ!」
「明日はもっと商品を用意して頂けると幸いです!」
「ああ、そのつもりで作って置いてある。作ったものはアイテムボックスに入れて持ってきたところじゃ。明日の朝また置きに来るが、売り切れ御免で構わんのでな」
「かしこまりました。今日と同じように商品が無くなり次第、店を閉めさせて頂きます」
「うむ、そうしてくれ」
「ハヤト様にあまり無理をさせられませんものね。お忙しい身ですもの」
こうして店は、今後「売り切れ御免」で営業することに定まったのじゃ。
そうでもせぬと、高級店に掛かりっきりになってしまうからのう。
週に二日は休みを入れることにし、その日は高級店も休みにしてもらったのじゃ。
リフレッシュ期間は大事じゃし、何よりブラックになってはいかんからのう。
「件の令嬢に関しては、今後も一切入れぬ方向で頼むぞ」
「謝罪を受け取っても、聞く耳は持たないでくださいませ」
「かしこまりました」
「ずる賢い様子でしたものね」
「あることないこと言いそうです」
「ええ、無視して構いませんわ」
「かしこまりました」
釘もさせたことで、ワシらは一旦箱庭に帰り、休みまでの間、異世界テレビで様子を見ながらアイテムを作り続けたのじゃ。
そして、件の令嬢たちがギイギイ叫びつつ去っていくのを、ザマァないのうと思いながら、休みまでの日々を乗り切ったのじゃ。
その頃、件の令嬢たちはというと――。




