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老成転生~少年ボディで箱庭スローライフ~  作者: 寿明結未(旧・うどん五段)
第一章 伝説の箱庭師の箱庭を受け継ぐ

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第21話 新しい商品の試案は兎も角として、マリアンへの侮辱は許し難し!

ブックマーク、評価、感想、誤字脱字報告ありがとうございます。

 リディアの生活していたという、ダンノージュ侯爵領のサルビアの店。

 元々はリディアとその夫、カイルが開いたサルビアという店が大元らしいが、集まっておる商品は様々じゃ。


 とはいえ、最近はロストテクノロジー持ちが生まれていないようで、少しだけ閑散としておるのじゃと、ナースリスは言っておった。

 それでも、溢れんばかりのアイテムには目を見張るし、冒険者が欲しがりそうなアイテムは大体揃っておると言って過言ではない。


 ワシが作れそうな物と言えば――?

 水筒やテント、キャンプ道具に、燻製を作る為の道具とかじゃろうか。

 冒険者の衣食住を満足させようとするなら、水筒は必須アイテムになるじゃろうし、燻製機械は此方で作って、調理師たちに魚や肉を燻製にして貰えばええ。

 手間は掛かるが、燻製魚や燻製肉と言うのも出してみていいかもしれんな。

 ポーション等は、レディー・マッスルが卸しておるので問題はない。


 生活に根付いた物も作って欲しいという依頼も来ておる。

 やはり洋服関係じゃな。

 その他にも、普通の生活に困る者達の為に何か作れればええんじゃがのう。


 肌着は飛ぶように売れておる為、現在は裁縫師の方々にも総出で作って貰っておる最中じゃ。

 マリアンも「肌に優しい綿100%のワンピースが欲しい」と言っておったので、マリアンに似合う色合いの綿を作り出し、ロングワンピースを作って貰ったのじゃ。

 マリアンはとても喜んでおった。

 こんな感じで、普段着用に使えるものを用意するのも良いかもしれん。


 後は、外に出たがっておる若者共を、どうにかして外に出して気晴らしさせんと、何時かは爆発するじゃろう。

 外に販売へ行って貰うか。

 そうなると――露店じゃな。

 露店となると……また調理師たちの負担が……。

 負担が少ないもので考えればいいのじゃが……。

 


「パンはワシのロストテクノロジーでも作れるには作れる。マリアンの聞いた話では、この異世界では胡椒などもそこそこ高価らしい。特に砂糖に関しては場所によっては相当高いのじゃそうじゃ」

「なる程ですにゃん」

「しかしじゃ。生活に根付いた物と言っても、ワシが前世でたしなんでいた物ですら、こちらの世界では高級品になり兼ねんそうじゃ。現にサルビアでは紅茶や砂糖と言ったものは扱っておらんでな」


 

 そうなのじゃ。

 ワシは生前、お金自体は少なかったが、それでも唯一の楽しみとして、紅茶や珈琲をたしなんでおった。

 でも、この世界ではそういうものは高級品に入るらしい。

 紅茶や珈琲が高級品に入るのなら、高級品店を作って貰うというのも手ではあるが……。



「紅茶や珈琲を並べた店内……ロストテクノロジーで作れる菓子を売るというのも一つの手じゃな」

「でも、チマチマしたお菓子とかは袋詰めが大変ですにゃん?」

「個数は揃えんでもよいのじゃよ。売り切れ御免で全く構わん。そっちの方がレア感が出そうじゃと思わんか?」

「なる程ですにゃん」

「菓子パンと珈琲と紅茶の店……と言うのもありじゃな。そこに若干のお菓子の販売を添えてというのもアリじゃろう」

「それは美味しそうですにゃん♡」

「そうなると、やはり販売員が必要になってくるのう……」

「それでしたら、商業ギルドで人を雇われては如何でしょう?」



 ワシが悩みつつ口にしておると、見回りを終えたマリアンが部屋に入ってきた。



「マリアンか。やる事が多くて頭がパンクしそうじゃわい」

「一つずつで宜しいんですよ?まずは生活に根付いた物を作っては如何でしょう?」

「ふむ、冒険者向けは後にするか……。まぁ、燻製だけは先だって作って置くがの?」

「それが宜しいかと。私はチラッと聞こえた菓子パンと紅茶や珈琲のお店にお菓子を添えて……というのが気になりますわ!」

「そうか? マリリンに相談せねばならんことじゃろう?」

「そうですわね。高級志向店となりますから、お母様にご相談しないといけませんわね。店員ですが、以前暴走していた方々を使うのはやめておいた方が宜しいかと。あの者達は露店くらいで丁度いいですわ」

「ははは、手厳しいのう」

 


 マリアンはあの一件で彼らに良い心情は持っておらぬようで、それも致し方ないと言えば致し方ないのじゃが、さて、どうしたものか。



「しかし、暴れまわられる前に何とかしたいんじゃがのう」

「でも、彼らのスキルを見るに、彫金師でしょう? 彫金師ならば彫金師としての仕事をして貰わねば困りますわ」

「そうなんじゃがのう……」

「まともに仕事してる様子はないにゃん……」

「一旦彼らの親と相談もしてみるか……。今日の夜にでも集めて貰ってくれるかの?」

「分かりましたわ。伝えてまいります」



 マリアンには苦労を掛けるが、此れ以上問題が浮上する前になんとかしておきたい。


 問題が起きないのなら特に心配する事はないが、仕事も真面目にしないで衣食住を楽しむだけ楽しむというのは、ワシの前世で言う所の――問題ありな感じじゃな。

 働けぬお年寄り達ですら、自分達に出来る事を探して手伝っておるというのに、なんとも情けない話じゃ。


 何とか出来るうちに何とかしてしまいたい……というのが本音じゃな。

 


「ワシの今のうちにマリリンに相談しにいくか」

「お供しますにゃーん♡」

「うむ、頼むぞ」



 こうしてワシは、移動を短縮できる付与アクセで池まで戻り、箱庭から出てマリリンに報告。

 困った連中と高級店の話をしてみると――。

 困った連中に関しては「そんなに外に出たいなら我がレディー・マッスルで鍛えてやろう」と笑顔で答えてくれたので、働かぬ場合はレディー・マッスルに預ける事にした。

 そして、高級店に関しては、カズマとも話し合って欲しいという事になり、後日また時間を作る事が決定した。


 箱庭に帰り、一日の一通りの時間が終わろうかという頃。

 冒険者達も数名、休憩所で温泉から上がって休んでおる間、その端の席を使い、件の働かぬ若者たちと、困惑した親たちがやってきた訳じゃが――。


 

「私達親も、仕事を真面目にやれと口酸っぱく注意しているんですが……」

「注意を聞かぬという事じゃな?」

「ッチ。誰だよ……告げ口したの……」

「あら、あなた方はもうお忘れかしら? この箱庭にはナースリス様という箱庭の神様がいらっしゃるのよ? 私はそのナースリス様からご連絡を受けて、あなた方の様子は把握してますわ」

「キモ‼」

「筋肉ブスに把握されるとか笑えねぇ」

「ウケルだけど」

「筋肉ブスな上にストーカーかよ、お前マジ見た目もだけど終わってんな」



 その言葉を聞いた時、ワシは気づいたらツカツカと彼らに歩み寄り――。

 一人ずつ思い切り金蹴りしておった。

 ワシは前世から弱い為、男に絡まれていちゃもん付けられたら金蹴りするようにしておったんじゃ。


 

「ぎゃああ‼」


 

 と潰れたカエルのような声を上げる面々には悪いが、潰れてはおらん程度に蹴り飛ばしておいた。



「今、マリアンに何といった……? ワシの大事な右腕じゃぞ。その相手に無礼千万。許し難し……っ‼」

「テメェ‼」

「このクソガキ野郎があああああ‼」



 そう彼らが叫んだ途端、休んでおった冒険者達がゾロゾロとワシの後ろにやってきた。



「お? この箱庭の主であるハヤトと、その右腕のマリアンに対しての暴言発言か?」

「そいつぁ~見逃せねぇなぁ~」

「いっちょ兄ちゃんたちと遊ぼうぜ」

「「「ひいいいいいいい‼」」」

「すまんの兄者殿達。この者達をマリリンの元まで連行して、今後箱庭に入る事を禁ずると伝えてくれると助かるのう」

「は? は⁉ 箱庭に入れなくなる⁉」

「精々泥水を啜ってでも生き延びて見せろ。屑野郎共」

 


 そう吐き捨てると、兄者たちは親指を上げて彼らを引きずって去って行った。

 後に残った親は只管謝罪しておったが、最早聞く耳すらないわ。

 どうやったらあの親から、あんな屑が生まれるのやら……。



「マリアン、大丈夫か?」

「……」

「辛かったのう……。泣いては……おらんか?」



 心配してマリアンの手にそっと触れた途端――ギュッと抱きしめられた。



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