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老成転生~少年ボディで箱庭スローライフ~  作者: うどん五段
第一章 伝説の箱庭師の箱庭を受け継ぐ
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第1話 毒親によって終わった人生は、異世界で新たな一歩を踏み出すんじゃ

ブックマーク、評価、感想、誤字脱字報告ありがとうございます。

 嗚呼――何と広い世界じゃろうか?

 高層ビルも何もない牧歌的な風景を見つめながら、ワシはこれから生きる世界の台地に降り立ち……光の姿から人間の子供の姿に戻る。


 辺りを見渡すと近くに池があり、水面を覗き込むと――幼い子供の頃の姿が映っておる。

 珍しくもない黒髪に黒目、年の頃は予想通り5歳か6歳くらいじゃろうな。

 周囲に獣等がいない事を確認してから、ナースリスに貰った鞄を開けて本のような説明書を取り出す。

 そのまま丁度いい形をしていた小さな岩に座って説明書を読む。

 何々――?




 説明書には、ワシの受け継いだ【伝説の箱庭師、リディア・ダンノージュ】の事が書かれていた。

 ワシと同じ転生者としてこの世界にやってきたリディアは、当時箱庭師と言うだけで冷遇されておったらしい。それが原因で住んでいた屋敷を追い出されたとも。

 それでもめげなかったリディアは、後の夫となるカイルと共に箱庭で作るアイテムで店を切り盛りし、店を大きくすると共に、元の世界での知識をフルに使って成功を納めたという。

 彼女は弱き人々を助け冷遇されていた者達を保護する傍ら、発明家として数々の商品を生み出し、それを王城に納めるという功績を遺した。

 そして晩年、数多くの弟子たちに見守られる中この世を去ったそうじゃ。


 それから100年が経ち、箱庭は封印されていたが――その箱庭と、リディアの持っていたスキルをワシが受け継いだという訳じゃ。


 毒親に育てられながらも希望を捨てなかったリディア。

 その為には、どれ程の精神力が必要であったじゃろうか。

 その上で、困っている者達を放ってはおけない心根の優しさ、素直さ。

 彼女のそれは、持って生まれた才能と言って過言ではないじゃろう。



「同じことが出来るとは、到底思えんがのう」



 ナースリスはワシに彼女の意志を引き継いでほしいと、スキルと箱庭を手渡したのじゃろうが、そう思えないワシは思わずため息をついてしまった。



「よし、取り敢えず箱庭に入って色々調べるかの」



 そう言って箱庭に近づくとカギが開くような感覚がして、箱庭から光の筋が差し込む。少々躊躇いながらその中に入って行くと、最初に目に飛び込んできたのは、なんとも美しい池じゃった。

 水底で宝石が煌めく池には、キラキラと輝く宝石ではない【ナニカ】がいた。

 一体何かと思って覗き込もうとしたその時――。



『貴方の行動をシッカリ見ていますよ』



 光の玉から先ほど聞いたばかりの声が響いて来た。



「ふぁ! ナースリスであったか!」

『ふふふ、以前ここに住んでいた方々は、【箱庭の神様】と仰っていましたね』

「箱庭の神様......何故、先ほどいた天上ではなく箱庭に住み着いていたのじゃ?」

『心清き者達が集まっていたので心地よかったのです』



 なるほど、確かに女神ならば清らかな者の傍に居たがるじゃろうと納得した。

 改めて箱庭の中を見渡すと、山もあれば炭焼き小屋や陶器を作る窯まである。

 周辺は海に囲まれている島のようじゃが、中央部にある畑にはシッカリと作物が育っており、中には宝石のなる木すらあった。

 この世界でも非常に珍しい木らしく、その木になる宝石をこの池に投げ入れれば、外の世界を覗き見る事が出来るのじゃと言う。



「外の世界の喧騒を見聞きしながら作業するのも、ええかもしれんな」



 そんな風に話しつつ箱庭の中を案内して貰うと、山中には人の掘った坑道のようなものがあった。ナースリスに尋ねると、ここはあらゆる鉱石や化石、魔獣の骨等が手に入る不思議な鉱山であったという事らしい。何人もの人が働いておったのだろう形跡を見たワシは……少しの寂しさを感じてしもうた。



「次は作業小屋と店と……なんとまぁ、アパートか木造マンション……と言うべきか」


 さらに別の場所に移動したワシが見たものは、皆の生活スペースであったであろう建物じゃ。沢山の木造アパートのような建物がずらりと並んでおり、所々に休憩所や温泉、更には調理場と思しき建物や食堂のような場所まであった。

 多くの者達が此処に住んでおったのじゃろう形跡が残されており、今はもう誰もいない光景に自然と涙が溢れ出てきた。



『今後、この箱庭を受け継いだハヤトがこの場所を守り、育てていくのです。育て方については貴方にお任せしましょう』

「うむ、とは言っても、まずは自分に出来る事を調べて行かねば」

『それならば、自分のスキルを見た方が早いでしょう。ステータスオープンと口にすれば確認できます。貴方に分かりやすいようにステータスやスキルはあちらの世界に合わせておきましたよ』

「それはかたじけない。んん、では……ステータスオープンじゃ!」



 そう口にすると目の前に、大きな運転免許証ようなものが現れた。

 スキルと呼ばれるものが表と裏にビッシリと書き込まれており、ワシはそれを見ながら「ほ――……」と呟く。

 殆どの空欄は埋まっており、ワシのすべき事はほぼ無さそうに見える。

 その中でも特に気になったものは、【付与魔法】と【ロストテクノロジー】の二つじゃ。

 ナースリス曰く、リディアがよく使っていたスキルの様で、現代日本にある物に関してはこの二つを組み合わせる事で殆どが再現できると言って過言ではなかった。

 無論、作れない物も幾つかあるようじゃが。



「大体は理解出来たかのう……さて、まずは腹ごしらえと住む場所を調べておかねばな」

『畑から食料を持ってきて、キッチンで料理をすれば問題ないでしょう。ハヤト1人なら数十年は籠って生活できるだけの魔石も蓄えられていますし』

「それだけ大勢の者達が此処に住んでおったのじゃなぁ……」



 そんな場所に、今では人間はワシ1人。

 毒親がいないだけで天国のようなものじゃが、少しも寂しさを感じないと言えば嘘になる……いやいや、1人で生きてきたワシにとっては、音楽や雑音が無いから寂しいと思うだけじゃ。

 やはり、何か作る時は宝石を投げ入れてラジオ代わりに池から外の世界を見た方が良さそうじゃのう。



「さて、腹ごしらえをしたら早速この世界を見て回るとするか!」



 異世界テレビ、異世界ラジオ、そんな感じで使える池は今後も大活躍しそうじゃの。どんな世界が視えるのか、今から楽しみじゃわい!

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