第六十七話 それぞれの旅立ち
天上の歌のアンデマンド支部は物理的にも無くなった。
オリーブのお爺さんの手配で、支部が無くなるように動いてくれたんだけど、あの戦いのせいでギルドが焼失し、もう建物そのものがない。
生き残ったギルド員は三々五々、周りの天上の歌の支部に散っていったようだ。
死んだギルド員がいたかはわからないけれども、負傷者はかなりの数いたはずだ。
ポーションや治癒術で治せる範囲は治しただろうけれども、かなりの痛手だったと思う。
そして、オリーブのお爺さんの成果なのか、銀の月にクエストも復活した。
「おはようコットン! クエスト復活だぞ」
「おはよう、ゼンネル兄ちゃん! 本当に良かったよ~」
きっと、赤い風でもクエストが復活しているだろう。
これからは、いいクエストがあればクエスト。
特になければ黄金都市という二段構えで、ギルドが賑わっていくはずだ。
天上の歌のギルド員がいなくなったため、黄金都市も開放された。
繋げた空間を使ってもいいし、階段を下りてもいい。
兵士の人が警備してくれているから、閉じる必要もないだろう。
でも、これから、ダンジョンがどうなってしまうのかわからない。
ダンジョンマスターは、黄金都市をこのままにはしておかないだろう。
領主様にも考えがあるだろうけど、さてどうするのか。
ダンジョンマスターと言えば、あの化け物をどうするつもりなんだろう。
神の創造は絶対に無理だ。
国王陛下がどんな秘策を持っているのかわからないけれど、もし出来たとしても、今いる神にすぐ殺されてしまうだろう。
そしてそれは、ダンジョンマスターがやっても同じ事だ。
しかも、そんな重罪を犯したら、ダンジョンマスターもただでは済まないはず。
神に目を付けられ、自らを滅ぼすだろう。
「コットンさん」
「アインザックさん?」
牙と角を隠すために仮面を付けたアインザックさんが来た。
呪詛返しで受けた呪いは、治らないままのようだ。
腕の隆起や羽根は服で上手く隠している。
「僕はこの力を生かすために、他の街に移ろうと思う」
「え、どうぞ……」
わたしに言いに来なくても良いのに……。
でも、アインザックさんはなにかに浸るように話し続けた。
「そこでだ、妹のアーレイを銀の月で受け入れてほしい」
「え? アーレイさんを?」
呪詛師としての腕はあるけど、冒険者になれるの?
いや、トレイシーはやってるけど……。
「銀の月で訓練をさせてもいいし、ただ歌を歌って暮らしても良い、生活費は渡してある」
「冒険者になるの?」
「それはアーレイが決めればいい」
レベルは2だから、冒険者になるなら訓練が必要だけど……。
「妹ってことは、一応王族なんでしょ?」
「そうだ、継承権はないが、僕達を担ごうとする派閥はある」
「そうなんだ」
そういうところから、お金とか権力とかを引き出しているワケか。
なんか、厄介ごとになりそうな気もするけど……。
「いいの?」
アーレイちゃんは、伏し目でわたしを見た。
お兄ちゃんに置いて行かれて、新しい場所で生活するのは不安だろう。
「いいよ、アーレイちゃん、セレシュと仲良くしてね」
「わ、我ですか? まぁ、いいですが……」
トレイシーは、迷惑そうな、でも満更でも無さそうな難しい反応をした。
「セレシュも技術を教えてもらえばいいでしょ?」
「我の方が上です! 教えて貰うことはありません!」
「私は。あの男を必ずやってみせるよ、お兄ちゃん」
「そうか、お兄ちゃんは楽しみにしているぞ」
どうやら、ふたりともダンジョンマスターを倒すことは諦めていないようだ。
でも、呪い殺せないところを見てしまったからなぁ。
訓練すれば、できるようになるものなの?
呪詛返しを研究すればいけるかな?
「セレシュちゃんとふたりなら、なにか出来るかも知れないしね」
アーレイがセレシュを撫でた。
「我は我で、ダンジョンマスターを倒さなければならないのです!」
「おっと、その子、いい声してますね」
「シールズ?」
その子とは、アーレイちゃんのことだ。
シールズがアーレイちゃんを値踏みするように見る。
「神の伝承に興味はありませんか? いい吟遊詩人になれそうだ」
アーレイちゃん、呪詛師にシールズの歌の力まで持ったらどうなっちゃうの!?
でも、まぁ、これが冒険者ギルドの日常だった。
そして、わたしの日常でもある。
やることは明確だ。
冒険者を強くし、ダンジョンマスターに挑む。
わたしは、その日を心待ちにしていた。
ここまで読んでくださりありがとうございました!
時間スキップしなかったですね。
これからもスキップしないかなと考えてしまいました。
日常回が少なかったので、冒険者作成もあんまりできなかったですね。
もし次があれば、街が他国に占領されたりなどを考えています。
日常回も意識的に入れて、冒険者作成したいです。
つづくかわかりませんが、またお会いできる日を楽しみにして!




