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地位を奪われた元ダンジョンマスター、7歳のギルド受付嬢に転生して冒険者を作成し、自分の作ったダンジョンを攻略します  作者: 夕綺柳
第二章

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第五十九話 アイヴォリーの情報収集


「じゃあ、あっしの報告も聞いてくださいッス」


「アイヴォリー?」


 サーリャの報告を聞いていたら、アイヴォリーもやってきた。


 情報収集は得意だろうから期待できる。


「どうも、天上の歌に集まってきたギルド員は、銀の月の食事や魔法の触媒に興味があるみたいっすよ」


「そうなの!?」


 それは意外なことだった。


「天上の歌は支部によって方針がまちまちで、基本的には普通の冒険者ッス」


 割と普通の人達ってことはわかったけど、潰すつもりのギルドで食事がしたいとか、それってどうなんだろう……。


「思ったよりも普通? なんだね」


「基本的にレベルが高い傾向はあるッスけど、新人の育成も行っているし、他支部へ移るのも自由らしいッス」


 それで、100人ものギルド員をこんなに早く集めることが出来たのか。


 支部から支部へ移るのは、当たり前のことなんだね。


 建前としては、国王陛下が黄金都市の安定のために支部を作ったということだから、その触れ込みでやってきたギルド員は美味しいお店にも行きたいだろう。


「黄金都市から発掘されたマジックアイテムにも興味があるみたいッス」


「そうなんだ……」


 うーん、アインザックさんの目論見通りにはいかないんじゃないかな?


 なんか、普通に天上の歌のギルド員と仲良くなってしまいそう。


 潰すとか、邪魔するとか、そういう空気を感じないんだけど……。


「なんか、天上の歌がブレブレで対策が立てにくいね」


「しかし、クエストが出なくなっている今、黄金都市で稼げなくなれば、銀の月の冒険者たちは逃げ出すでしょう」


「もしくは、天上の歌に入る者も出て来る可能性があるってことッスね」


 天上の歌に入れば、クエストも出て、黄金都市へも行きやすい。


 でも最大の難点は、天上の歌が冒険者達に嫌われているということ。


 だから、勧誘よりも嫌がらせをする方向に舵を切っているんだろうか?


「黄金都市の封鎖が痛いなぁ」


 アインザックさんのやりたいことは、この街から冒険者を追い出して、ダンジョンマスターの痕跡を独占するってことだと思う。


 なにせ、一度姿を露わしているのがこの街なんだから。


「あと、裏家業の方にもちょっかいを掛けているみたいッス」


「そうなんだ? 盗賊ギルドと利権争いする感じ?」


「盗賊ギルドは警戒しているッスね、娼館を取りつぶすとか何とか、揉めているみたいッス」


「そんな権限もあるの?」


「良くわからないッスけど、天上の歌の支部長が娼館を嫌っているみたいッスね」


 アインザックさんの好み? そうじゃない気もするけど……。


「いまのところ、そんな感じッス」


「引き続き、調べられるところは調べます」


「うん、ふたりともありがとう、引き続きよろしくね」


「任せるッス」


「お任せを」


 わたしは、サーリャが出かけようとするところを呼び止める。


「あっ、サーリャ、セレシュ……わかる?」


 サーリャは無表情のままわたしの目を見た。


 無表情だけど、ちょっと嫌がっている気がする。


「わかります、話もしました」


「そうなんだ、喧嘩しないでね」


 サーリャとトレイシーは仲が良くない。


 というか、トレイシーが一方的に突っかかってる感じなんだけど。


「え? サーリャの姉さんと、新人の女の子が喧嘩ッスか?」


「しないって言ってるの」


 アイヴォリーは詮索好きだ。


 情報を集めたいのは仕事でも趣味でもなく性分かな。


「そうなんすかー?」


「はい、この話はここまで」


 さて、黄金都市に行きにくくなったら、みんなはどうするのか、とりあえずその反応待ちだ。


 今日明日にでも封鎖されるのか。


 もうちょっと先なのか……。


 サーリャの情報だけだとわからないけど、あらかじめギルド員には説明しておいた方がいいだろう。


 突然封鎖されるよりも、心証は良いはずだ。


「おい、黄金都市への道が封鎖されてるぞ!?」


 そこに、スカウトの男が飛び込んできた。


 え? もう?


 サーリャを見ると、力なく首を振る。


 ああ、こっちから話そうと思ってたのに、後手に回ってしまった。


「なんだ封鎖って?」


「兵士と天上の歌の奴らが、入口を塞いでやがるんだ!」


「マジかよ! 兵士もか!?」


「てことは、領主様も絡んでるってことじゃねえか!」


 ギルド内が一気に騒がしくなる。


「みなさん、落ち着いて下さい、黄金都市には行けます」


 騒いでいたみんなが、わたしの方を見る。


「新しくできた入口を封鎖しているだけなので、通常通りに向かえば黄金都市に行けます」


「マジかよ、面倒だな」


「地下水路を普通に下りていくのかよ、あそこ遠回りが多いんだよな」


 行き難いから領主様も新しい出入り口を作ったんだ。


 結構みんな不満みたいだ。


 騒ぎを聞きつけたんだろう、おばあちゃんが奥から出て来る。


「仕方が無いねぇ、コットン、あの鍵で繋げちまいな」


 あの鍵? 悪魔のボスが落としたあれ?


「あっ、そうか」


 ああ、そうだよ。


 あの貴族階級の悪魔が落としたディーンエヴェンダーは、空間と空間を繋げるアイテムだ。


 黄金都市と街を繋げてしまえば、新しい入口が作れるじゃないか。


「でも待って、どこと繋げるの?」


 迂闊なところと繋げて、中の悪魔が出てきたら大変だ。


「そりゃあお前、せっかく警備している連中がいるんだ、その目の前にでも繋げてやればいいさ」


「あー、今ある出入り口の近くと繋げるんだ」


 おばあちゃんは笑っているけど、酷い話だ。


 折角塞いだ入口のすぐ近くに、また入口を作るんだから。


 わたしは、農村部から出て来た大工仕事の得意な冒険者に、小さな建物を造ってもらった。


 ドアとトイレくらいの小さな部屋しかない建物だ。


 二時間くらいで建物を造り終えると、その中でディーンエヴェンダーを使う。


 この手のアイテムのよくある制約で、行ったことがある場所じゃないと繋げられないパターンだ。


 だから、黄金都市はサーリャに繋げて貰った。


「繋げました、領主の作った入口からは少し遠くに設置しましたので」


「うん、ありがとう」


 ドアを開けて外に出る。


 そこには、不満を漏らしていた冒険者達が待っていた。


「じゃあ、新しい入口を作ったので、中にどうぞ」


「どうぞったって、オメエ……」


「このドアを開けて入ると黄金都市と繋がっていますから」


 でも、冒険者達はちょっと怖がっているようだった。


 そうか、そういう事態も考えておくべきだったか。


「大丈夫なのかよ?」


「もちろん大丈夫です、心配なら様子見をされても良いですよ?」


「では、私が入って見せます」


 冒険者達が見ている側で、サーリャが入っていく。


 扉の先に、黄金都市の景色が見えていた。


 それを見ていた冒険者達が、頷き合って入っていく。


「おお、本当に黄金都市だ」


「こりゃいいや、階段を下りるよりも楽だぜ」


 ふぅ、なんとか問題をやり過ごすことができた。


 アインザックさんとしては、こちらの泣き所を的確に見抜いて攻撃したんだろうけど。


 それを防がれて、今度はどうするのか。


 面倒なことが起きなければいいと、わたしは思っていた。



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