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地位を奪われた元ダンジョンマスター、7歳のギルド受付嬢に転生して冒険者を作成し、自分の作ったダンジョンを攻略します  作者: 夕綺柳
第二章

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第五十七話 新たなパーティー


 翌日、セレシュちゃん……というかトレイシーがギルドに来る。


「お待たせしましたマスター、賢者の学院を卒業して参りました」


 本当に賢者の学院を卒業してきたんだ。


 しかも一日で。


「どうやったの?」


「賢者の学院ですからね、これを見せればイチコロだと思ってました」


 トレイシーが持っていたのはきれいな石……じゃなくて、賢者の石だった。


「よくそんなアイテム持ってたねぇ」


「ハッ、お褒めにあずかり恐縮です」


 トレイシーは喜んでいる。


 転位した後もアクセスできるような、わたしと同じ細工をしてあったんだろう。


 ちなみに、愚者の石と賢者の石を揃えると、モンスター作成が使えるようになる。


 そこまで高レベルなものではないけれども、一応そういう機能もあった。


 もちろん、それは副次的な効果で、単品でも滅茶苦茶すごいアイテムなんだけど。


「偶然の抹殺もしたの?」


「はい、術は掛けました。偶然を装うので、成功率は90%くらいだと思ってください」


 90%か……アインザックさん、さようなら。


 ママに手を出すみたいな脅しをしなければ、全力でトレイシーを止めたんだけど。


「じゃあ、今日からトレイシーが入るパーティーを紹介するから、こっちに来て」


「はい、サーリャなど、すぐに超える働きをしてみせましょう」


 わたしが向かった先のテーブルには、フラニールさんと魔法使いのお姉さんがいた。


 この2人は付き合っているのかな?


 フラニールさんは仲間が多いけど、このペアが崩れることはないみたいだ。


「フラニールさん、話していた新人冒険者です」


「ああ、ワケありらしいな」


 トレイシーにワケはない。


 なんのことを言っているかというと……。


「よろしくお願いします、デイジーといいます、こっちはデスタです」


「ワオン」


「私はオリーブですわ、よろしく」


 冒険はお預けとなった2人を、急遽フラニールさんに率いてもらおうと思ったのだ。


 理由は、トレイシーが来たこと。


 トレイシーがいれば、余程のことがない限り安全だ。


「さあ、セレシュちゃん」


「わ、私はセレシュです、きょう賢者の学院を卒業してきました、立派な冒険者になります。よろしくお願いします」


「お、おう……なんか、平均年齢の若いパーティーだな」


 フラニールさんがそう言いながら、魔法使いのお姉さんの方を見る。


「いてっ!」


 すると、机の下で足を踏まれていた。


 女性に年齢のことは禁句なんだなぁ。


「私はパーシア、こっちがフラニール、仲良くやりましょ?」


「はい、よろしくお願いします」


「大きなギルドの御曹司だったんですってね、頑張りましょう」


 オリーブの家も、お爺さんが凄かったらしいから親近感があるのか。


 お家再興を狙う2人なのかも知れなかった。


「じゃあ早速、広きダンジョンで冒険がしたいです」


 トレイシーがそんなことを言った。


 広きダンジョンとは、ガブリー達が探索していたダンジョンで、上層でも50レベル、しかもトラップなんかも多い、難しいダンジョンだ。


 フラニールさんが難しい顔をする。


「反対だ、いきなりそんなところに行けるはず無いだろう」


「私は賛成ですわ、早く一流の冒険者ならなくてはなりませんの」


「気持ちはわかるが焦りは禁物だ、死んだら一流も何もない」


 そこでデイジーがわたしを見る。


「デスタは、広きダンジョンに行けますか?」


 デスタなら行けるだろう、罠なんかも見つけてくれるはずだ。


「デスタなら大丈夫ですよ、この辺りのダンジョンで、デスタが行けないところは少ないです」


「そうなんですね……それなら、ボクは賛成です」


「おいおい……」


 フラニールさんが頭を抱える。


 先日、初めて引率無し(?)のダンジョンデビューした二人組みと、賢者の学院を卒業したての7歳の魔法使いを率いて、50レベルのダンジョンに向かうのはあり得ないだろう。


 常識人のフラニールさんなら、反対するはずだ。


「じゃあ、私ね、私は賛成」


「はぁ? パーシアまで何言ってるんだ!」


 どうも、パーシアさんはトレイシーの強さに気が付いているみたいだった。


 同じ魔法使いとして、トレイシーの魔力の高さを感じ取っているんだろう。


「いけばわかるわよ、もちろん油断は無しだけどね」


「お前がそう言うなら……わかったよ、信じることにする」


「それじゃあ決まりですね、冒険に不慣れな3人は、フラニールさんとパーシアさんの言うことを良く聞いて下さい」


 みんな頷く。


 そして、冒険の準備を終えると、新たな5人組のパーティは出かけて行った。



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