第五十四話 対人戦闘
「デスタ!」
「ワオーン!」
囲んでくる4人の男に、デスタが飛びかかる。
男たちは武器を抜き、身構えるが、デスタはブレスを吐いた。
「ワオーン!」
「くっ! アイスブレスか!」
デスタのブレスが賊の2人を襲う。
結構ダメージを貰ったようで、1人が片膝を着いた。
「ちっ、子犬の割には意外にやるな」
「グルルルルルルッ!」
デスタは2人をかばうように立ちふさがり、威嚇する。
子供とは言え、フェンリルを倒せる程の実力はあるんだろうか?
「おっと、やるからにはこっちも忘れてもらっちゃ困るッスよ!」
アイヴォリーは、腕をまくって機械の腕を晒す。
そして、それを蛇のような軌道で伸ばし、賊の1人の喉を掴んだ。
「ぐえっ、こいつ」
「は、早く攫え! 俺たちのことはいい!」
「オリーブちゃん!」
デスタが2人を相手にして、アイヴォリーが1人と戦っていると、残った1人がオリーブのところに駆けていった。
3対4だから、必然的にこうなる。
「逃げるッス!」
でも、オリーブは逃げるどころか不敵な笑みを浮かべていた。
意味不明な自信か?
「どうして、名家の娘が冒険者に推薦されたかわかりますか?」
実際、こうやって誘拐されようとしている。
神殿だって、何も考えずに冒険者に推薦はしないだろう。
「わたくしには、守護天使様が付いているからです!」
オリーブが胸に付いていたオーブを握ると、背後に光が立ち上る。
「何っ!?」
眩しさに、男が立ち止まって目を覆う。
そして、光が収まると、そこには、天使の形をした光のオーラが立っていた。
「くっ、なんだこれは」
しかし、賊は諦めない。
余程の報酬なのか、何か算段があるのか。
「シッ!」
男がオーブ目がけてナイフを放つ。
オーブを手放させれば、状況を打開できる可能性にかけたのか。
しかし、光の天使はそのナイフを光の剣で弾き飛ばした。
神々しさを感じる剣捌き、いや所作と言った方がいいか。
そして、数歩、間合い詰めたオリーブが、ナイフを投げた男を悪夢で強打した。
「ぐふっ」
男が地面にうずくまる。
そこへ、守護天使様が追い打ちを掛けて男を倒す。
こんなとっておきがあるとは思わなかった。
オリーブの自信の源は、これだったんだ。
「んぐぶっ」
アイヴォリーが掴んでいた賊が気絶する。
デスタが賊の1人を仕留める。
そして、残りは1人となった。
「さて、お楽しみの時間ッスよ」
「最早これまで」
賊は短刀を抜くと、それを喉に突き立て自害しようとする。
「甘いッス!」
でも、それを、アイヴォリーが機械の腕を伸ばしてはね除け、気絶させた。
勝利だ。
一瞬、沈黙が流れる。
そして、デイジーがぺたんこ座りをした。
「はぁー、勝ったよぉ、デスタありがとうねぇ~」
「アオォン!」
「まぁ、わたくしにかかれば、こんなものですわね」
アイヴォリーは勝利の余韻に浸ることなく賊を縛り上げていく。
武器を取り上げ、隠し武器も探して地面に転がした。
「これは賊じゃないッスね」
「え、人さらいなんじゃ……」
「人さらいが仕事に失敗したって、自害なんかしないッスよ」
確かにそうだ。
どちらかと言えば、騎士や聖職者に近いのか?
「まぁ、また死のうとしても困るッスから、猿ぐつわを噛ますッスよ」
賊の持っていた物も含めて、タオルを結ぶと猿ぐつわにしていく。
「でも、どうするんですか? 気絶した大人4人は運べないですよ」
「応援が来ないッスかね~」
うん? なんか声がわざとらしかった。
わたしが見てるの知ってる?
サーリャだけかと思ったら、アイヴォリーも知ってたとは。
仕方が無いなぁ。
今日は出かけていなかった、ガブリーとメアリーとフランセスに果樹園の森に行ってもらった。




