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第五十一話 半年ぶりの真祖


その日の夜、わたしが夜ご飯を食べていると隣に座る人がいた。


「え? ラファエル?」


「お久しぶりね、半年ぶりかしら?」


 ラファエルはわたしが作ったヴァンパイアの真祖で、ダンジョンのボスをしている。


 こうやって、街中をふらふら出歩いていい存在ではないんだけど……。


「どうしたの?」


 きっと、何か情報があるんだろう。


 もしくは、情報が欲しいか。


「最近、冒険者が洞窟にたくさん入って来るから変だと思って調べさせたのよ」


「あー、多分、天上の歌の冒険者だよそれ」


「そうね、最近この街に出来たギルドらしいわね」


 天上の歌の冒険者は、総じてレベルが高い傾向がある。


 もちろん、初心者もいるしベテランもいるんだろうけど、支給されるマントのおかげと圧倒的なサポート情報によって、生存率が増していた。


「目的は、ダンジョンマスターを倒して、自分がダンジョンマスターになりたいんだって」


「は? 人間がダンジョンマスター?」


「表向きの理由は違うのが色々あると思うけど、本当はそれだよ」


 ラファエルは驚いているようだった。


 まぁ、普通ダンジョンマスターになりたいなんて思わないからね。


 変わった人だとは思う。


「何者なの?」


「この国の王様の子だって、公式には認められてないけど、権力は色々あるみたい」


「そう、やっかいね」


 ラファエルに厄介と言わせるとは、思った以上に天上の歌の冒険者は強いんだろうか?


「冒険者は強いの?」


 天上の歌の冒険者と言っても、全てが強いわけではないはずだけど……。


「部下のエルダーヴァンパイアが1人やられたわ、一年もすれば蘇ると思うけど、借りは返さないとね」


「おおおぉ……ご愁傷様です」


 生き返るからいいけど、復活に一年かかるとは、余程念入りに殺されたみたいだ。


 しかも、エルダーヴァンパイアを倒すなんて、中々の腕前じゃないか。


 他の支部から冒険者を呼んでいると言っていたけど、質もこだわりがありそうだ。


「あとね、どうも、奥の手があるみたいなんだよ」


「奥の手?」


「情報を集めることで個人を特定して、呪い殺すことが出来るんだって」


 ラファエルは変な顔を顔をする。


 まぁ、気持ちはわかるけど一応伝えておかないとね。


「ヴァンパイアを呪い殺すって、相当よ?」


「ダンジョンマスターを、それで倒す予定みたいだから、かなり自信あると思うよ」


「そう、そうなのね」


「うん」


 ラファエルは合点がいったようだ。


 天上の歌がどうして真祖の洞窟を攻めているのかを。


「私にたどり着いて、ダンジョンマスターの情報を得ようとしているわけね」


「ゴブリンジェネラルを倒しても、あまり情報は得られないだろうから、真祖を狙うのは有りなのかもね」


 インテリジェンスが最も高そうなボスは、やっぱりラファエルだろう。


 黄金都市そっちのけで、真祖の洞窟を攻めているということは、アインザックさん本気なんだな。


「他の街でも、ダンジョンマスター捜しはやっているのかしら?」


「その自称王子様は、この街のギルドの責任者みたいだから、他では出来てないんじゃないかな」


 他の街の支部長には、また違う目的があるだろう。


 その街に根ざした問題のようなものが。


「なるほどね、そいつの名前を教えて」


「アインザックさん、お付きの人がラドクリフさん。こんな顔だよ」


 わたしは、ペンと紙を持ってきて、ささっと絵を描く。


「ふーん、上手ね」


「色んなスキル持ってるから」


「強いの?」


「冒険者じゃないよ、詐欺師」


「詐欺師?」


 ラファエルがまた変な顔をする。


「レベルは14だから、出会えば倒せると思うよ」


「混乱してくるわね……」


 弱いとは思わなかったのか、ちょっと頭を抱えている。


 詐欺師というのも、ラファエルの意欲を削いだかも知れない。


「ラドクリフさんは神官戦士。こっちは強いよ。信仰している神様も謎だし」


「そう、でも、貴女の言う通り会ってしまいさえすれば簡単に倒せそうね」


「誘われてる可能性もあるから、気をつけてね?」


 情報を得たいんだろうから、ラファエルを呪い殺すということはないだろう。


 まぁ、出来る出来ないはともかくとして。


「私が直接乗り込むワケじゃないわ、ちょっと様子見で仕掛けてみるつもり」


 ラファエルに強い部下はたくさんいるから、お手の物だろう。


 夜に奇襲を行うというのも、得意そうだ。


「それにしても、詐欺師に呪いもどうなんだろうね」


「それもそうね、何かアイテムでも持っているのかしら?」


 だとしたら相当に強力なアイテムだ。


「もし、ダンジョンマスターを呪い殺せるアイテムだったとしたら、あなたにあげるわ」


 あの呪詛師の女の子、気になるけどまだわからない。


 アインザックさんの自信はそこから来るのか。


「多分だけど、条件がすごくキツいんじゃないかなぁ」


「でしょうね、代償無しに使えるものではないでしょう」


「手に入れられたら貰うけど、本当に気をつけてね?」


「わかったわ、色々ありがとう、それじゃあね」


 ラファエルは待たせている執事と合流すると、ギルドを出て行った。



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