表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/52

第四十五話 やって来る天上の歌


 黄金都市の開通式から一週間が経った。


 今のところ道は封鎖されていて、その後の音沙汰もない。


 街の人はガッカリしているか、やっぱりという諦めか。


 開通式に集まっていた若い人達はどうしているだろう。


 地道に仕事をしているか、冒険者になる決心でもしたか。


 黄金都市は、ダンジョンマスターが造ったダンジョンではなく、元からあるダンジョンだった。


 だから、領主様はコントロールする装置を黄金都市にだけ使ったんだろうけど、結局邪魔されてしまった。


 まぁ、ダンジョンマスターが邪魔したって決まったわけじゃないけど、その可能性が高そうだ。


 それとも、領主様の装置が誤作動したとか?


 いやいや、それなら今頃再開通してるだろう。


 街のえらい人は、頭を悩ませている頃なんじゃないだろうか。


 ハダン君とモルソー君と三人で朝の支度を終えると、冒険者を迎える準備をする。


 朝ご飯とかは、厨房の人がやってくれるから、わたし達はクエストの張り出しや確認、備品の補充とか諸々だ。


「おはようございまーす」


「おはようございます」


 そして、朝の忙しい時間が終わる頃、孤児院の子がやってきた。


 みんな眼がキラキラしている。


 働いてお金を稼ぐことに充実感を覚えている眼だ。


 薬草を採取して半年になるけれど、ちゃんと食事を採って大きくなった子は、冒険者として訓練を受けているところだった。


 もうそろそろ、訓練を卒業という子も出て来るだろう。


「よーし、ガキども集まったな、準備の出来てない奴はいるか?」


 エレンが孤児院の子をまとめてくれる。


 その知識と経験を子供たちに教えてくれるので、孤児院の子達は、もう立派な採取者になっていた。


「大丈夫でーす」


「じゃあ、サナは薬草採取のほう頼んだぞ」


「任せて下さい」


 ダンジョンマスターに雇われていたサナさんは、もうすっかり薬草採取の人になっていた。


 剣聖で、滅茶苦茶強いのに冒険には興味がないらしい。


 たまに、訓練に駆り出されて裏庭で剣術を教えているけれども、収入は薬草採取とそれくらいだ。


 でも、浪費癖がないのか、それで十分なようだった。


 まぁ、家出してたくらいだから家には帰りたくないだろうし、これはこれで充実しているんだろう。


「もし、銀の月ギルドの責任者を出して欲しい」


 孤児院の子が出かける前に、2人組みの冒険者がやってきた。


 高価な剣士装備のイケメンとスキンヘッドの2人組みだ。


 装備だけじゃなく、レベルも高いだろう。


 物腰も柔らかくて好感が持てる。


「どんな御用事でしょうか?」


 剣士装備の方がわたしを見て感心したような顔をする。


 これは、幼いと見られているパターンかな。


 荒くれ者の冒険者だと大人を出せとか言われるけど、心が大人の人だと、こういう反応になる。


「君がコットンさんですか、7歳で受付嬢になって、もう少しで8歳とか」


「え?」


 なんでそんなことを知ってるんだろう?


 銀の月のことを調査済みなの?


 ちょっと警戒してしまう。


「怪しい者ではないんです、責任者の方、クロースさんと話をさせてくれませんか?」


「ですから、どんな御用事かと……」


「なんだい、あたしにゃ用はないよ」


「おばあちゃん」


 話が聞こえていたのか、おばあちゃんが奥から出て来る。


「貴女がクロースさんですか? 私は、王都の冒険者ギルド、天上の歌に在籍しているアインザックという者です」


「同じく、ラドクリフと申します」


 天上の歌!


 このザカール国の周囲では最大の規模を誇る冒険者ギルドだ。


 王都はもちろん、色々な街や隣国の街にまでその勢力を伸ばしているらしい。


 特徴は、ギルド員がみんな着ている白いマント。


 装備はそれぞれなんだけど、みんな白いマントを着ていた。


 でも、このマントが優秀で、防寒、防刃、防魔法みたいに、様々な耐性を持つマジックアイテムだという。


「はん、話ってのは?」


 おばあちゃんがキセルを吹かす。


 あまり歓迎していない感じだ。


「この街、アンデマンドの黄金都市に関して国王陛下から依頼がありました」


「国王様から? 一体なんだい」


 天上の歌くらいになると、国王様から依頼が来るらしい。


 うちに、領主様から依頼があるような感じか。


「黄金都市が安定的に収入を得られるようになるまで、この街に天上の歌の支店を出すというものです」


 え? 天上の歌がこの街に来るの!?


「はん、国王様のお墨付きかい、商売あがったりだね」


 銀の月と赤い風で、この街の冒険者は収まっている。


 そこに天上の歌が加わったら……。


 大手の介入で、街の冒険者達の暮らしがどうなってしまうのか心配しながら、話を聞いていった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ