第四十二話 ダンジョン開放の日
つづきをちょっと書きました。
前回から半年後という流れです。
では、ゆるゆると投稿します~。
「う~ん、あんまり集まらなかったね」
「仕方がないでしょぅ、誰だって命は惜しいですしぃ」
ルルーナとフランセスが、のんびりそんなことを話している。
領主様が、ダンジョンに誰でも入れるようにすると演説してから半年が経った。
そして、領主様のコントロール下にある黄金都市への入口は、すぐ目の前にある。
本当は、地下用水路を下りて、崩落した洞窟を進まなくちゃたどり着けない場所にあるんだけど……領主様は力業をやった。
土木工事で、街の広場から黄金都市までを繋げてしまったんだ。
およそ半年掛けてその工事は終わり、今日はその開通式だ。
もちろん街の人も集まっていて、期待が窺えるんだけど……100人程が集まっているだけだった。
もっと、ドバッと街の人みんなが集まるみたいなのを想像していたんだけど、甘くはないようだ。
「お前達! 今日はこの街にとって歴史的な日になる!」
領主様の演説が始まった。
一応、街の人の護衛のために冒険者も集まっている。
「大分待たせちまったが、ダンジョンの解放! 今日がその一歩目だ!」
「まぁ、とは言っても解放されるのは黄金都市だけ、その他のところにはまだ行けねえ」
「だが、それでも十分なくらいのお宝が! 食糧が! うなるほど眠っている!」
おおおおおおおぉぉぉ。
街の人100人と、護衛の冒険者がざわつき始める。
気分が乗ってきたんだろうか。
「念のために、冒険者の護衛も用意した! 後はお宝を持って帰る鞄があれば良い!」
おおおおおおおおおおぉぉぉおぉぉ。
「やってやる! 俺は黄金都市で稼いでやるぞ!」
「俺もだ! もうシケた話は無しだ! 一日100往復してやる!」
集まった街の人は、若者中心だ。
大人達は、様子見というところだろうか。
「今日は、王国の特使としてベガラヤ様も来られている、儲けて、稼いで、笑ってる姿を見せつけてくれ!」
おおおおおおおおおおおおおおおっ!
「よし! 黄金都市を解放する! 一歩を踏み出せ!」
「いくぞーっ!」
「俺が先だー!」
街の人が広場に作られた階段を下りていく。
大きな穴が空いていて、そこに人が吸い込まれていった。
「じゃあ、コットンはギルドをお願いね」
「ママ、気をつけてね」
「マスター、行って参ります」
「サーリャも気をつけて」
領主様は、その光景を見届けるとどこかに下がっていった。
さあ、どうなるのか、ギルドでお留守番だな。
「おお、君がコットン嬢か」
「はい?」
30半ばくらいだろうか。
身なりの良さそうなおじさんが、わたしに話し掛けてきた。
誰だろう? 鑑定してみる。
「え?」
「麗しのお姫様、今日もお美しい、王宮顧問のベガラヤと申します」
「こ、子供ですので、そういうお世辞はいらないです」
「何を仰る、あと十年もすれば四海の国々から、婚姻を求める王子達がやってくる美しさだ」
ベガラヤさん。
王宮顧問をしていて、わたしが生まれる前にギルドまで来て、助言をした人だ。
わたしを大切に育てるようにって。
どこでそんな情報を得たのか、ちょっと気になる。
「わかりました、ご用件はなんですか?」
「あああっ、つれない、美女は皆つれない。世界の七不思議です」
どんな人かと思ったら、ちょっとエッチなおじさんじゃないか。
顧問なんてしているから真面目な人かと思ったら、とんだ女性好きだった。
でも、歳は30半ばで、能力は高い。
鑑定をしたから間違いない。
「あっ!」
そこに、階段の奥から爆発音が聞こえてきた。
この爆発は……魔法!? 何と戦ってるの!?
「おや? 穏やかじゃありませんね」
こっちが本当の顔だろう、一瞬、何かを計算するような表情を見せた。
「ベガラヤ様、避難をお願いします!」
すぐに兵士がやってきて、ベガラヤ様を警備する。
「レディが先だろう君たち?」
「わたしは自分で逃げますので」
「あっ! つれないー!」
わたしは走って広場の端のベンチまで行く。
何があったのかわからないけど、わたしも避難した方がいい。
街中なので、逃げるのは簡単だ。
遠目に、入っていった街の人100人が逃げてくるのが見える。
それを護衛するようにしていた冒険者も、何人か外に出て来た。
「悪魔だ! 悪魔が来たぞー!」
悪魔!? 悪魔型のモンスターじゃなくて、悪魔なら大変だ。
普通、ダンジョンをウロウロしているような存在じゃない。
階段から、翼の生えた何かが飛び出してくる。
それは……確かに悪魔だった。
戦う人の邪魔にならないように、街の人が逃げていく。
街の中にまでは出て行かないように兵士が食い止めるだろうけど……。
わたしはベンチに腰掛けると、先導していたルルーナに同調した。
今日は三話投稿します。
明日から不定期で一話ずつ投稿します。
二十六話分書きましたので、読んで頂ければうれしいです!