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第四十一話 捕虜の剣聖


「どれ、大変だったらしいね」


 ギルドに帰ると、おばあちゃんが出迎えてくれた。


 お客様は……いない。


 昔なじみの人達は、帰ったようだ。


「情報が早いですねぇ、そうなんですよ、ダンジョンマスターが出たんですよぉ」


「お祭りはもう終わりでいいのかい?」


「街の人は、これから盛り上がるみたいだけど……」


 ママは、そんな気分じゃないみたいだった。


 わたしも、同じ気持ちだ。


「それよりも、捕虜だよ、剣聖だって」


 ルルーナが、サナと呼ばれた少女をおばあちゃんに突き出す。


「捕虜? 穏やかじゃないね」


「ダンジョンマスターが呼び出した仲間で、剣聖らしいの」


「ほぅ、剣聖ね」


 サナさんは情けない顔をしている。


 腕は立つけど、精神の方が鍛えられていない感じだ。


「ほ、捕虜に何をするんですか? 条約で捕虜に対する扱いは決まってますよ!」


「別に取って食いやしないさ、あんたがダンジョンマスターの部下で間違いないのかい?」


「部下じゃないですけど、雇われたみたいな感じです」


「そうかい、それなら自由にしな」


 自由にと言われて、ルルーナが突きつけていた剣を収める。


 でも、サナさんは更に情けない顔になった。


「自由にって……行くところなんて無いですよー」


「それなら働きな、ここは冒険者ギルドだから剣の腕があれば、食うには困らないよ」


「私、冒険者ってしたこと無いんですけど……」


「困った奴だね、コットン、適当なパーティーに押しつけちまいな」


「うん、わかった、こっちにきて」


 サナさんを連れて、受付のテーブルに着く。


 ママは、おばあちゃんと話があるみたいだった。


 サーリャは、わたしについてきている。


 ルルーナ達は、またお祭りに出かけたみたいだった。


「さて、ここで冒険者をするなら登録をしてもらいます」


「登録……ですか? なんの?」


「サナさんが、ここの冒険者ギルドの一員で、活動しているという身分証明書です」


「あ、身分証明書ですか、なるほどなるほど」


 それにしても、サナさんは変わった格好だ。


 持っている剣も、片刃で薄く、堅い物を切ったら折れてしまいそうに見える。


「字は書けますか?」


「こっちの文字はわかりません」


「こっちの文字?」


 変な言い方をする。


 でも、服装からしてこの辺の土地の人では無さそうだった。


「じゃあわたしが代筆しますね、お名前をフルネームでお願いします」


「サクラサナです、サクラ・サナ」


「わかりました、次にこの水晶に手を当てて下さい」


「はい……」


 水晶に手を当てると、犯罪歴とかわかることがある。


 一度捕まって、牢屋に入れられたりしないとわからないけど。


「こう、ですか?」


「はい、そのままにしてください」


 すると……水晶に変な文字が現れた。


「あれ? 壊れちゃった?」


「どうしましたか?」


「見たこと無い文字が出て来ちゃって……」


 そして、その一番最後に、わたしがわかる文字で異世界人と出て来た。


「…………」


「このことは、内密にしましょうか」


「その方がいい?」


 サーリャは無言で頷く。


「どうやら、ダンジョンマスターの秘密の一端が見えてきたようですね」


「異世界人ってこと?」


「おそらくは。サナ、貴女はどこで剣聖となりましたか?」


 サナさんは少し困った後、話し始めた。


「実家が剣術道場をしていて、今年の春に免許皆伝しました。そのときに、剣聖の称号ももらったんですけど……」


「それはおかしいよ、剣聖は、今の剣聖であるゴワービ様から認められた人が剣聖になるんだから」


 そうして、剣聖が代々つづいていく。


 ときには、ふたり、3人と剣聖が出る時代もあった。


「そ、そうなんですか? でも、私は剣聖を売りにしたくはないので……」


「ダンジョンマスターとはどこで知り合いましたか?」


「それが、家出をしていたら、突然あの人のところに迷い込んでしまって」


 家出してたのか。


 嫌な剣聖だな。


「そこで契約をしたと?」


「契約とかしてません、仕事を手伝うということだったので……瞬間移動とかするとは思ってなかったです」


「ダンジョンマスターの名前はわかる?」


「ハタノさんという人でした」


「同郷ですか?」


「え? 多分ですけど……」


 ハタノか、変わった名前だけど……。


「名前がわかったのは幸いですね」


「そうだね、色々捗るかも」


 領主様のことは、おばあちゃんとかママが考えるだろう。


 これから、ダンジョンがどうなってしまうのかもわからない。


 でも、わたしは自分の目的である、今のダンジョンマスターを倒すことの手がかりを得ていた。


 ダンジョンマスターは異世界人で、ハタノという名前。


 真祖から情報ももらえるし、ギルドを経営していく上で、これからもなにかと接点はあるだろう。


 転移者がいると動乱が起きるか治まるって、真祖は言っていたけど……この子が、何か関係あるんだろうか?


 そんなことを考えながら、サナさんには、孤児院の子達の護衛兼採取をしてもらおうとか、予定を立てていた。


ここまで読んでくださって、ありがとうございました!


今回で第一章が終了しました。


第二章の予定は、今のところ未定ですが、コットンが10歳になったところから始めようとか考えています。


このままスローライフ気味に受付嬢の日常を綴るのもいいと思うので、どうなるかはわかりません!


登場ヒロインズの年齢が低めなのは、一応、年齢スキップしても耐えられるようにという意味合いがありました。


つづくかどうかわかりませんが、またお会いできる日を楽しみにして!

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