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第四話 初めての冒険者作成


 それから、わたしの受付嬢人生が幕を開けた。


 朝起きたら掃除と戸の開け閉め。


 書類のあれこれは、おばあちゃんに教えてもらってすぐに覚えた。


「コットン、あんたは物覚えが良いね、将来有望さね」


 魔物の解体とかはパパがやっているけど、わたしにはまだ教えてくれないそうだ。


 でも、アイテムの販売とかは受付嬢の仕事だから、品質管理なんかもするようになった。


 期限切れのポーションなんて存在しないくらいに繁盛させてみせる。


 買い取りはおばあちゃんの目利きが必要だけど、わたしはダンジョンを支配していた元ダンジョンマスターだ。


 あらゆるアイテムに精通している。


 市場の相場さえ覚えてしまえば、すぐに任せてもらえるだろう。


「はぁ……」


 でも、わたしは誰もいないギルドの中でため息を吐いてしまう。


 ママとサーリャはすっかり打ち解けて、今日もダンジョンに行っていた。


 コミュ障のママでも、サーリャは付き合いやすいみたいだ。


 その成果は、クエストを受けられなくなった今でも、十分と言えるほどの収益をもたらしていた。


 この街にはダンジョンの入口がある、というか、ダンジョンの入口がある場所に街が出来たという成り立ちを持っているんだけど、その中でも一番難易度の高い『悪夢の古城』から入るルートをふたりパーティーで探索しているほどだ。


 昨日も、レア度Bランクの『悪魔の爪』という小剣を持ち帰った。


 その他にも、高級食材として使われるフライドバードを5匹も仕留めてきている。


 もちろん、パパが捌いてパパが売りに行った。


 わたしの出番はない。


 でも、最近は、パパがギルドの仕事をすることが多くなったのは嬉しかった。


 なのに……ため息の原因と言えば……。


「冒険者がいない……」


 初めの呼び水として、冒険者を十人くらいは作らないといけなかった。


 わたしの策とは、スキル<魔物作成>で冒険者を作ること。


 もちろん、魔物作成で人間も作れる。


 でも、昔と違って今はスキルも使い放題じゃなかった。


 慎重に作らないといけない。


「さて……<魔物作成>」


 種族は人間、性別は……女にしよう。


 冒険者は男が多い、一流ギルドから冒険者が流入しやすいように、ルックスの良い女性をたくさん用意するのが良いんじゃないか。


 能力はランダムだから試行回数が勝負になる。


 さて、スタート!


「…………」


 ボーナスポイントも振り分けられるけど……これは駄目だ、能力値が低すぎる、リトライ。


「むうっ」


「はっ」


「ていっ!」


 モンスター作成は根気の要る作業だ。


 いい魔物を作ろうと思ったら、一日から数日かかる。


 今のわたしの魔物作成ポイントが30000。


 これは上限だ。


 今まで使ってなかったから、上限に達している。


 一回リトライする度に1消費するから、丸一日やったら1000くらい消費するかも知れない。


 自然回復は微々たるもので、一日に10くらいしか回復しなかった。


 昔は事実上無限だったのに。


 そして、作成するときにもガツッとポイントが減る。


 そして日が暮れる頃、ようやく納得できる冒険者が出来た。




【名 前】 ルルーナ

【年 齢】 13

【職 業】 勇者の卵(S)

【レベル】 1

【体 力】 D/SSS

【魔 力】 E/SS

【信仰心】 E/S

【筋 力】 D/SSS

【生命力】 D/SSS

【素早さ】 D/SSS

【知 恵】 E/SS

【幸 運】 SS/SSS+

【成長率】 SSS/SSS+

【スキル】 剣技〈E〉、光魔法〈E〉

【因 果】 食事

【装備品】 ロングソード(E)

【気持ち】 強くなってお金を稼いでお腹いっぱい食べたい




 勇者の卵!


 やった、ようやく良い冒険者が作れたぞ。


 今のダンジョンマスターには借りを返さないといけない、どっちみち強い冒険者は必要だった。


 能力上限が全部S以上、職業もSだ。


 現状は弱いけど、育てればものすごく強くなる。


 魔法も一般的な真名魔法じゃなくて、光魔法という特殊魔法だ。


 でも、装備のロングソードが残念か。


 ここは、わたしの貯蔵している次元収納から良いアイテムを用意しよう。


 これかな、グランクレスト(SSS)。


 初めての冒険者だし、ここは奮発しよう。


 装備品のところを書き換える。


 因果が食事というのは、腹ペコキャラなのか。


 ちょっと不穏だけどまぁいいか。


 昔、サイクロプスに食事の因果が付いたときは、ものすごい食欲で困ったけど、13歳の人間の女の子なら大丈夫だろう。


 来歴なんかは適当にそのままにしておく。


 これは、作られたときの記憶がそうなっているということだ。


 でも、銀の月ギルドに来てもらわないといけないから、銀の月ギルドにて活躍すると付け加えておく。


 さあ、生成!


 ポイントがガッツリと減って、残りのポイントが27879になった。


「ふふふ……」


 今頃、この街のどこかに現れたルルーナは、銀の月ギルドを目指して歩き始めたところだろう。


「ただいま」


 パパが帰ってきた。


 パパは商人で、基本的に外で仕事をしているけど、ギルドが賑わったらそっちで大変になるだろう。


「お帰りなさい」


「ただいま」


「ただいま帰りました」


 そこに、ママとサーリャも帰ってくる。


「おやおや、夕食の支度が間に合わないかね」


 おばあちゃんは、夕食を作っていたみたいだ。


 シンとしていたギルドの中が明るくなる。


「冒険はどうだったかな?」


「うん……サーリャすごいよ、ママじゃ全然かなわない」


「恐縮です」


「そりゃあよかった、サーリャさんよろしく頼みますね」


「こちらの言葉です、よろしくお願いします」


「コットン、食事の支度を手伝っておくれ」


「うん!」


 そこに、また扉を開ける音が響いた。


 知っている人はもう全員帰ってきている。


 ということは……。


「あ、あのう、ここが銀の月冒険者ギルドで間違いないですか?」


「はい、間違いありません! 中にどうぞ!」


 この子が勇者の卵だろう!


 背は低いけど、全身バネって感じで躍動感がある。


 でも、見た目は可憐で男の冒険者を惹きつけそうだ。


「あ、あの、ギルドに登録したいんですけど……」


 そこでルルーナのお腹がクーと鳴った。


「おやおや、それじゃあ食事を先にしようかね」


 自己紹介なんかもしながら、みんなでご飯を食べる。


 その流れでルルーナを銀の月ギルドの冒険者に登録した。


 そして、ルルーナは予想通り滅茶苦茶食いしん坊だった。


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