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第三十七話 帰ってこないパーティー


「では、お疲れさまです」


「お疲れさまです」


 夜の忙しい時間が終わると、見習い商人のモルソー君が家に帰る。


 住み込みではないから、お互い楽だ。


 ギルドとしては、部屋を用意するのも大変だし、モルソー君も住み込みは心が安まらないだろう。


「…………」


 酒場は、食事と酒盛りで賑わっている。


 なのに……ママが、まだ帰ってきていなかった。


 こんなに夜遅くまで冒険をするというのは、珍しい。


 なにか、トラブルが起きていなければいいんだけど……。


「コットン、受付は替わるからご飯を食べな」


 いつの間に来たのか、おばあちゃんがわたしに声をかけた。


「でも、ママが……」


「今日は泊まりかも知れない、待ってても仕方ないさね」


「うん……」


 わたしは、酒場の方に行ってご飯を注文する。


 いつもは美味しい食事も、今日は心配であまり味がしなかった。


 ママが向かった先は黄金都市だ。


 領主様の気になっているダンジョンで、そこの調査をママのパーティーが請け負っている。


 サーリャが一緒なんだから、何が起きても大丈夫だと思うけど……。


 ちょっと様子を見てみよう。


 わたしは、ご飯を食べ終わるとルルーナに同調する。


「…………」


 ルルーナは、どこか家の中にいた。


 ベッドのある部屋で夜営をしているんだろうか。


 黄金都市のどこかの家の中なんだろう。


 ママとエリシャは寝ている。


 サーリャとルルーナが起きていた。


 交代で見張りだろうか。


 ベテランのママとサーリャを別の組にして交代するんだろう。


「ドラゴンすごかったね」


 ルルーナの声は弾んでいる。


 ワクワクというかウキウキしている声だ。


 2人寝ているから、小さな声だけど、感情は隠せなかった。


「仕留め損ないました、明日は必ず仕留めます」


 サーリャが倒せないドラゴンって、かなり上位のドラゴンだ。


 恐らく知性のないタイプだと思うけど、黄金都市のボスかな?


 わたしが配置したわけじゃないけど、黄金都市は黄金のリビングデッドとその家臣がボスだった。


 新しいダンジョンマスターが、弄った可能性はあるけど。


 でも、そんなことはしないか。


 ボスがふたりいてもいいわけだし。


 とにかく、そのドラゴンを仕留めるために、今日は泊まりになったみたいだ。


 大きなトラブルはないみたいで安心する。


 ドラゴンとの戦いは心配だけど、きっと大丈夫だろう。


 わたしが同調を切ろうとすると、ふたりが話し始める。


「あのドラゴンが黄金都市のボスなのかな?」


「わかりませんが、黄金のドラゴンなんて聞いたことがありません」


 黄金のドラゴン!


 間違いなく、わたしが作っていないモンスターだ!


 やっぱりボスが替わったのか、追加されたのか……。


 夜営をしてでも仕留めたいと思ったのは、そういうドラゴンがいたからなのか。


 なんか、鍵を握っていそうだし、仕留めたいところだと思う。


「でも、MAP埋められなくなっちゃったね」


「黄金都市が広がっているとは思いませんでした」


「ダンジョンが広がってるって変だよね?」


「そうですね、普通ではありません」


 黄金都市が広がっている……。


 黄金都市は、もう完全にわたしの知るところではなくなっているようだ。


 成長するダンジョンとでもいえばいいのか。


 無限に広がるということはないだろうけど、広げてどうするんだろうか?


 魔物の街でも作るんだろうか?


 領主様は、なにか情報を持っていて隠しているんだろう。


 よっぽどのお宝があるか、誰かに頼まれているか。


 王様とかに頼まれているんだったら、領主様は何も知らないだろう。


 でも、黄金都市の情報をどこで知ったのか?


 何か秘密があるとして、それはここ数年で出来た秘密のはずだ。


 だって、わたしが知らないし。


 そこで、わたしは誰かに揺すられた。


 ルルーナじゃなくて、わたしの方だ。


 同調を切って振り向く。


「おばあちゃん」


「コットン、もう寝な、心配なのはわかるが、一晩くらい冒険者なら当たり前さね」


「うん、そうだね、もう寝るよ」


 明日はドラゴンと決戦のようだ、早く寝よう。


 多分、決戦は早朝だ。


 まだギルドが忙しくなる前だから、同調して見ることが出来るだろう。


 黄金のドラゴンを見てみたい!


 サーリャの口調からしても、怪我人がいないことからしても、命の危険があるようなモンスターではないだろう。


 心配よりも、好奇心が勝った。


 わたしは部屋に戻ると、そのままベッドに入った。


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