表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/52

第三十五話 新人研修(1)


 今日は、討伐に行っていた冒険者からグレイトボアが持ち込まれていた。


 グレイトボアは、食用になるモンスターの代表格で、持ち込まれることも多い。


 4頭が持ち込まれていて、冒険者に代金は払い済みだった。


 つまり、うちで買い取ったということだ。


 パパはエプロンをして、大きな包丁でグレイトボアを捌いていく。


 それを手伝っているのが、この前見習い商人になったハダン君だった。


 初めての解体に目を白黒させながら、それでも必死に食らい付いている。


 血が苦手なのかな?


 まぁ、慣れだと思うけど。


 一頭目は、パパが捌いているのを教えて貰いながら見ている。


 二頭目からは、手伝ったりするのかな。


 そして、もうひとり見習い商人になったモルソー君は、おばあちゃんに書類仕事を教えてもらってから、わたしのところに付けられた。


 ハダン君の方が年上で、身体付きも良いから、まず解体ということになったんだろう。


「モルソー君は、書類仕事覚えられましたか?」


「はい、なんとか覚えられたと思います」


 おばあちゃんが、筋がいいと言っていたので商人向きなんだろう。


 冒険者になるばかりが稼ぐ道じゃない。


「お家は何をしていますか? 書類関係あります?」


「父は賢者の学院で講師をしています」


 おお、この街にある魔法を教える学校だ。


 賢者の学院は、街ごとにひとつある感じで、世界に魔法を普及させている。


「お父さんは魔法使いなんですか?」


「はい、冒険はしたことがないそうですが」


 それなら、商人が適正とは言い難くなってきた。


「じゃあ、魔法使いにならなくていいんですか?」


「父に、素質がないとハッキリ言われました」


 割と明るい顔で、モルソー君は言った。


 もう過去の話なんだろう。


「でも、妹が素質があるということで、賢者の学院に通っています」


「そうなんですね」


 でも、読み書きも計算も出来るし、地頭も良さそうだ。


 この時代、賢者の学院で働くのも大変だろう。


 モルソー君は、別の道を歩むんだ。


「すみません」


 そこに、商人風の人が受け付け窓口にきた。


 きっと依頼だ。


「見ていてください」


「わかりました」


「どうされましたか?」


「冒険者の方に依頼を出したいのですが」


「では、おかけください」


 商人さんが、受付に座る。


「失礼ですが、貴女が受付嬢ですか?」


「はい、未熟者ですが、お客様にご迷惑をかけたことはないと自負しております」


「それはすごい、私なんて、未だに迷惑をかけっぱなしですよ」


「そんな、ご謙遜を」


 依頼が来ると、まずわたしが若いことに驚かれる。


 それはそうだろう。


 仕方なし。


「では、護衛を頼みたいのですが」


「いつから、どちらまでですか?」


「明後日の朝、出発をしようと思っています」


 わたしは、依頼書に商人の護衛、出発の日付を明後日の日付で書き込む。


「どちらまで行かれますか?」


「隣町のリンガーまで行きます」


 まぁ、良くある護衛の依頼だ。


「失礼ですが、商人ギルドの身分証をお持ちですか?」


「はい、こちらになります」


 わたしは、身分証に反応する水晶を机の上に出す。


 商人さんは、それに身分証をくっつけた。


「お名前は、テリシュ様ですね、確認が取れました、ありがとうございます」


 支払いで揉めたときなど、商人ギルドに入会しているか否かで、結構違う。


 商人ギルドに入っているなら、少しお安くするのが定番だった。


「馬車ですか?」


「そうです、使用人が全部で3人と私になります」


 4人で行商ということはないだろう。


 それなら、結構ちゃんとしたお店の主さんだ。


「リンガーまではおよそ、馬車で三日です」


「はい」


「途中で峠越えがあるので、そこで野盗が出るかもしれません」


「はい」


「パーティーの人数にも寄りますが、一日ひとり銀貨50枚が相場になります」


「そうですね、それくらいだと助かります」


「五人パーティーだとして三日で銀貨750枚ですが、峠がありますので、危険が予想される分、少し手厚く頂きたいです」


「ほう」


「危険手当として、銀貨100枚をプラスでいかがでしょうか?」


「ふむ」


 商人さんが考えている。


 でも、すぐに答えは出た。


「今は兵士崩れが野盗になって危険です、そのくらいでしたらお支払いします」


「ありがとうございます」


「いえいえ、最近は冒険者ギルドも少なくなってきましたからな、商人としては有りがたい限りですよ」


「そこなのですが、募集をかけますが、人が集まらない可能性もあります」


「わかりました、そのときはまたご相談させてもらいます」


「いえいえ、食事などに関しては、任務に当たる冒険者とお話しください」


「小さいのにしっかりしておられる」


「とんでもないです、でも、しっかりやりますからお任せ下さい」


 商人さんとの話はつづいていった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ