表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/52

第十九話 レベル制限


「おっ、クエストが始まったか」


「はい、ディープトードとレッサーヴァンパイアがオススメです」


 朝食が終わると、みんな依頼やクエストを確認に来る。


 出し抜きたいのか、パンをかじりながら依頼書を眺めるなんて人もいた。


 まぁ、まだ人が少ないから、そんなに競争はないんだけれども、人が増えてきたら依頼も増えてくれないと困る感じだ。


「新月の沼に行く方はマジックバックをお貸ししまーす!」


「それはいいな」


 狩ったディープトードを持って帰るための収納バッグだ。


 見た目の10倍以上収納できるマジックアイテムで、そんなに珍しい物ではない。


「真祖の洞窟は、ホーリーシンボルと聖水のセットがオススメですよ!」


 ヴァンパイアの眷属はホーリーシンボルを掲げると怯む。


 聖水は、とどめを刺すのに必要だった。


 とどめを刺さないと、いつ生き返るかわからない怖いモンスターだ。


 弱点が多い代わりに、ヴァンパイアはすごく強い。


 ゴブリンがヴァンパイア化したとしても、元の倍は強くなる。


 レッサーでそれだから、本物のヴァンパイアなんて滅茶苦茶大変なモンスターだった。


 ましてや真祖なんて、とてもじゃないけど相手に出来ない強さだ。


「新月の沼に行かせてもらおう」


「はい、マジックバックはいくつ必要ですか?」


 新しく入ったパーティーの人達だ。


 確か、リーダーの名前はハリスさん。


 ちょっとベテランに片足入れているような人達だ。


 賢くて慎重で強い。


 こういう冒険者が痺れるんだよな~。


「ふたつでいいかな、もっといけそうならまた明日、増やすことにするよ」


「わかりました、それでは、マジックバックをふたつお貸ししますね」


「ああ、ありがとう」


 ざっと鑑定を使う。


 パーティーは6人。


 戦士がふたり、神官、魔法使い、スカウト、弓使いだ。


 平均レベルは36かな。


 新月の沼地なら大丈夫だろう。


 レベルは、20を超えたら一人前で、どこのダンジョンでも第一層は問題なく歩けるようになる。


 ただ、真祖の洞窟はレッサーヴァンパイアが恐らく大量に出るので、30は欲しいところだった。


 ハリスさんのパーティーは、ちょっと慎重に行くみたいで、36平均でも新月の沼地でディープトード狩りをするみたいだ。


 うーん、渋い。


 安全のマージンを取っているみたいで、冒険者っぽくていいよねぇ。


 わたしはダンジョンマスターの地位を取り戻したいけど、冒険者の良さもわかってきた気がした。


「真祖の洞窟に行って来るから、アイテムを売ってくれ」


「あ、はい、えーと……」


 次のパーティーを鑑定すると、平均レベルが18だった。


 まだ無理だ。


 丁度初心者を卒業しそうなくらいで、慢心する時期とも言える。


 確かこの人は……レールさんだったかな?


「レールさん、真祖の洞窟は危険です、もう少しレベルを上げてからにしませんか?」


「なんだと、俺を馬鹿にするのか!?」


 バンと受付の机を叩くけれども、冒険者はそれくらいで動じない。


 誰も気にも止めていなかった。


「レッサーヴァンパイアを狩るのは、平均レベルが30からでオススメしてるんです」


「君は、オレ達の平均レベルがわかるのか?」


 後ろの人がそう尋ねてくる。


「まぁ、おおよそですがわかります」


「これはおどろいた、オマエら値踏みされているぞ?」


 その言葉に、レールさんが睨み付けるが無視されていた。


 こんな子供を恫喝するのが格好悪く感じたのか、レールさんは声を落ち着かせる。


「俺達は大丈夫だよ、今、かなり調子が良いんだ」


「うーん……」


 どうしよう、このまま行かせたら最悪全滅しちゃう。


「どれ、ワシがついて行ってやろう」


「予言者様!」


 レールさんのパーティーの神官さんがそういう。


 妖精さんが、こんな朝から起きてくるなんて珍しい。


 昨日は大変だったから、今日はずっと寝てるかと思ったのに。


「これが噂の予言者か、丁度いい、予言してくれよ」


「そう簡単に予言なんかせぬ、いいから連れて行け」


 窓から入ってくる朝の光を眩しそうにしながら、妖精さんは神官さんの肩に座った。


「妖精さんの腕は保証しますが、どうしますか?」


「この妖精を連れて行くなら、ギルドはOKするんだな」


 どうしよう、妖精さんがいれば平均レベルは上がるけど、30には到底届かない。


 でも、多分大丈夫かな?


 おそらく妖精さんがひとりで倒してしまうだろう。


 この人達も、良い勉強になるんじゃないだろうか?


「はい、問題ありません」


 わたしがそう言うと、レールさんのパーティーはみんなで頷いた。


「よし、いいだろう」


「じゃあ、ホーリーシンボルと聖水を買って下さい」


 少し相談するけど、ここでケチるのは損だと思ったみたいだ。


「人数分くれ」


「では、五セットですね」


 わたしは、手元に用意した聖水とホーリーシンボルを出す。


「妖精さんはいる?」


「いらないのじゃ」


「昼間に出かけられるの?」


「神官のバックの中に入っておる、洞窟に着いたら出してくれ」


 そう言って、妖精さんは神官さんの荷物の中に入ってしまった。


「俺達が余裕だって、見せてやるからな」


「お気を付けて」


 そんな感じで、レールさんたちは出かけて行った。


 他のパーティーも思い思いに出かけて行く。


 さて、それなら妖精さんに同調しようかな。


 出かけない人は、酒場でぐだぐだしている。


 毎日は出かけないパーティーも、割といた。


 しっかり身体を休めないといけないからね。


 ギルド内のことも意識しつつ、妖精さんに同調した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ