第十八話 クエスト再開
「ふぁ~」
眠い目を擦りながら、窓とドアを開けて掃除をする。
昨日の夜は、妖精さんがボスを倒しに行ったからあんまり寝てない。
でも、昼間冒険に行って、夜妖精さんについていって、また今日冒険に行くサーリャのことを思えばなんでもなかった。
わたしとは体力が違いすぎるんだけども。
「コットン久しぶり」
男の人がドアからギルドに入ってくる。
わたしに声をかけてきたのは、冒険者組合のゼンネル兄ちゃんだった。
「ゼンネル兄ちゃん!」
「今日のクエストだよ」
ゼンネル兄ちゃんは、朝クエストを持ってきて、夜に成果を確認に来る人だ。
クエスト報酬の実際のお金とかは、また別の人が昼間に持ってくる。
武装した人じゃないと危ないからね。
「またよろしくね!」
「おう、クエストが復活して良かったな」
クエストがあった時代は、冒険者組合のゼンネル兄ちゃんが、毎朝クエストを持ってきてくれていた。
ほんのちょっと前のことだけど、なんだか長かった気がする。
「どんなクエストがあるかな?」
「今あるクエストは全部で五種類だな」
「どんなどんな?」
ゼンネル兄ちゃんは、テーブルにクエスト依頼書を並べてくれた。
これは、依頼とかと同じで、掲示板に張り出すものだ。
「まずはこれだな、悪夢の古城の新エリアだ」
「ふーん」
「悪夢の古城で新エリアが発見された、安全確認を願う」
これは、ママとサーリャとルルーナが見つけた場所だ。
というか、わたしが教えたんだけど。
三人では、安全確認に何日もかかってしまうので、赤い風にも手伝ってもらおうということで、おばあちゃんに相談していたものだ。
冒険者組合に届け出て、クエストにしてもらったんだね。
「他には、新月の沼地でディープトードが繁殖しているから数を減らすというクエストだ」
「もうそんな時期なんだねぇ」
この時期になると、ディープトードの卵の羽化が始まって、一気に数が増える。
あまり増えすぎると色々な問題を起こすから、一気に数を調整しなくてはならなかった。
新月の沼地は、いつも暗くてジメジメしている。
新月の夜みたいに暗いということで、こういう名前になったらしいけど、実際はそこまで暗くないだろう。
行ったこと無いからわからないけど。
ここのディープトードは食材にもなるし、皮が素材にもなった。
行く人がいるんじゃないだろうか。
一匹銀貨二十枚だから、報酬も破格だ。
冒険者応援と、食糧問題解決的な意味合いもあるのかも知れない。
「あと、新ダンジョンの安全調査だな」
「あ、これは知ってる」
これは、この前のゴブリンジェネラルがいたダンジョンだ。
ここの調査を募集しているんだ。
悪夢の古城の新エリアとかは、レベルが高いとわかっているけど、このダンジョンとかは全くわからないので、手探りだろう。
報酬もそんなに高くないから、中堅の人が行くのかも知れないけど、手つかずのダンジョンともなれば人気はありそうだった。
「あと、真祖の洞窟でレッサーヴァンパイアが増えているらしい、この討伐だ」
「わぁ、大変だ」
レッサーヴァンパイアが増えていると言うことは、新しくヴァンパイアになった何かがいるんだろう。
ゴブリンでもオークでも、見境無くレッサーヴァンパイアにするので、ねずみ算式に数が増えていく。
真祖は倒せないまでも、新しいヴァンパイアを倒せば、レッサーの急増は止められるだろう。
これは、割と緊急度が高くて、報酬も良い。
ヴァンパイアは弱点もあるから倒しやすいし、みんな行くんじゃないかな。
「ラストは、黄金都市に関する調査だ」
「黄金都市かぁ」
地下用水路からつづくダンジョンを下りていくと、黄金都市にたどり着く。
領主様はここがいたく気になっているようで、調査依頼が常時出ている感じだった。
黄金都市は、わたしはノータッチなダンジョンだ。
元々存在していた地下王国の廃墟なんだけど、天然のダンジョンと化している。
何があるのかわからないけど、ドラゴンは徘徊しているらしい。
ここはかなりの高レベル向けだ。
「ディープトードとレッサーヴァンパイアが人気かなぁ」
「そうだろうね、そこが緊急度も高いし、いいんじゃないか?」
ディープトードは解体するので、みんな狩ったものを持って帰る。
たくさん物が入れられる、マジックアイテムのマジックバックを持って行くだろう。
今から用意しておいた方が良さそうだ。
もちろん、無料で貸し出しをする。
マジックバックは、そんなに高くないけど、持って無い人も多いからギルドの出番だ。
レッサーヴァンパイアは弱点のホーリーシンボルと聖水が売れるだろう。
こっちもたくさん用意しておくのが良さそうだった。