第十二話 鑑定の時間
「これは、ゴブリンジェネラルの勲章ですね、☆みっつですから、結構な大物だったと思いますよ」
「へー、そんなものがあるんだ」
ルルーナが串焼き肉を食べながら感心している。
街で買って来たんだろう。
わたしが作成したモンスターということは、7年以上生きていたわけだから、ランクも上がってたはずだ。
希に、わたしが作成したモンスターの子孫ということもあるが、その場合は半分だけポイントが入る。
「コットンちゃんすごいですねぇ、私では鑑定できなかったのにぃ」
「一応、プロですから!」
みんな微笑ましい顔で見ているけれども、ゴブリンジェネラルの勲章は国が高値で買い取ってくれる。
後で金額を聞いて驚くだろう。
「こっちの宝物は、重い武器を持てるパワーハンドが高そうです」
「コットン、良く覚えたわね」
ママもびっくりしている。
「本をたくさん読んだんだよ!」
それから細々とアイテムを鑑定していき、お値段となった。
「合計の査定は……おばあちゃんじゃないと出せません!」
「そうなのー?」
「何となくはわかるんですけど、市場の価値は毎日変わるので、わたしはまだ出しちゃいけないことになってるんです」
「コットンちゃんもかー、僕も早く一人前になりたいなー」
「アイテムはお預かりしますので、ゆっくり休んでください」
みんな酒場の方に向かう。
これはまとめて、おばあちゃんに査定してもらおう。
「どれ、コットン、見せてみな」
「おばあちゃん!」
奥から出て来たおばあちゃんは、アイテムを鑑定していく。
普段は付けていない眼鏡だけど、鑑定の時だけは付けていた。
マジックアイテムかな?
鑑定が出来る眼鏡なんて聞いたことがないけれども。
「コットン、全部でいくらだい?」
「金貨21枚と銀貨30枚くらい!」
「くらいってなんだい、ハッキリおし」
「じゃあ金貨21枚と銀貨34枚!」
おばあちゃんが眼鏡を外す。
「ま、今日のところは合格にしてやろうかね」
「やったー!」
「本当にオマエは物覚えが良いね」
ギルドの取り分は二割だ。
その代わり、売る手間とか省けるし詐欺にも引っかからない。
自分達で使いたい物や売りたい物なんかは、ギルドに渡さなくても良かった。
「さあ、晩ご飯にしよう」
「うん!」
おばあちゃんとみんなのところに行く。
今日の仕事はこれで終わりみたいだった。
ご飯を食べて、みんなが部屋に戻ったりお酒を飲んだりしていると、わたしに話し掛けてくる人がいた。
「コットン様は、女神様とどういう関係なのですか?」
ミックスさんのパーティーの神官さんだ。
というか、この神官さんがリーダーなんだよね。
コールゴッドで女神様がわたしと話をしたから、気になっているのかな?
「わたしが生まれる前に会ったような気がするんです」
「生まれる前?」
「はい、まだ生まれてないときにです」
本当のことを話すのは気が引けたので、曖昧に答えておく。
元ダンジョンマスターがいるなんて知られたら、何が起こるかわからない。
「それはすごい、コットン様はきっと何事かを為す方なのでしょう」
「そんなことはないと思いますよ、きっと神様の気まぐれです」
「そんなことないのよぉ」
ちょっと酔っぱらったママがやってきて、わたしを後ろから抱きしめた。
お酒臭い。
「コットンが生まれる前にね、女神様の使いだという人がやってきたのぉ」
ほう。
そんなことがあったんだ。
「その人が、生まれてくる子供を大切にしなさいって言ってたのよぉ」
「それは、どこの方ですか? 女神様の使いとは……」
「王宮の顧問をしている人で、ベガラヤさんという人よぉ」
王宮の顧問って、知恵袋みたいな人なのかな?
役職にはないけれど、王様から助言を求められるとか。
「おお、ベガラヤ様は神殿の最高司祭様とも縁のある方。きっと女神様のお告げがあったのでしょう」
「だからねぇ、組合から追い出されたときに、コットンを表に出そうっておばあちゃんが言ったのよぉ」
そうだったのか。
わたしは、早く働けて嬉しいけど。
「わたしのことはいいです、今は何か困っていることはありませんか?」
「困っていることですか……そうですね、赤い風は今日の村の件で大分怒られたみたいですよ」
「怒られる? 国からですか?」
「ここの領主様から怒られたようです」
酷いことをしようとしていたみたいだけど、事実だったんだね。
「クエストを独り占めしているからこんなことになるということで、今度こちらにもクエストが回って来るようです」
お、クエスト再開だ。
「そうなんですね、ちょっと楽しみです」
「あと、コックさんたちは、親方が欲しいみたいねぇ、みんな若いから」
「うん、やっぱりそれだよね」
お客さんも、もっと欲しいだろう。
ウエイトレスさんも暇そうにしていることが多いし。
「赤い風から、冒険者を引き抜くにはどうすればいいですかね?」
「お酒と料理が美味しいとなれば、来る人間もいるでしょう」
それもあるか。
やっぱり料理長は探すか作るかした方が良さそうだ。
「あとは、赤い風は依頼を断る傾向にありますね」
「そうなんですか?」
「だから、薬草の採取や護衛など、幅広く依頼を募集すれば、ダンジョンに行きたくない冒険者にはアピールになるかと」
ちょっと疑問があるんだけど……。
「ダンジョンに行きたくない冒険者がいるんですか?」
なんと不届きな。
冒険者とダンジョンは切っても切れない関係だというのに。
「ダンジョンは危険ですからね、依頼がたくさんあればそちらを優先したいパーティーはいると思いますよ」
「むぅ」
なるほど、やってみようか。
取りあえず眠くなってきたので、わたしは部屋に戻った。