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第一話 ギルド組合追放

さくさくっと、ゆるゆる進めていきます!


お楽しみ下さい!


「こんな役立たずの零細ギルドは、冒険者組合から追放するざます!」


 突然やってきた冒険者組合のえらい人は、おばあちゃんにそう言った。


 ママとパパとわたしも一緒にいる。


「ちゃんと組合費は払っているじゃないですか、横暴です!」


 パパがすかさずそう言い返す。


 パパは商人だから、難しい話が得意だった。


 でも、組合のインテリっぽい眼鏡の人はフンと鼻を鳴らして無視する。


「冒険者の数はたったの一名、それもあなたの娘、家族ざます」


「…………」


 引っ込み思案のママは、もじもじと成り行きを見守っていた。


 たった一名の冒険者はママ。


 昔、すごい活躍したパーティーのひとりで、それが解散した今でもソロで冒険者をやっている魔法戦士だ。


「一名でも冒険者がいれば問題ないはずです!」


 無視されてもパパが食らい付いていく。


 ギルドマスターのおばあちゃんは、キセルを吹かしながら黙ってそれを聞いていた。


 眉一つ動かさないで、平然としている。


「もう時代は変わったんざますよ、この街に冒険者ギルドはひとつでいいざます」


 わたしが生まれる前、7年以上前には街に冒険者ギルドがたくさんあったらしい。


 でも、時代の流れで冒険者が廃れていって、ギルドもどんどん潰れていった。


 今街に残っている冒険者ギルドは、一流ギルドの赤い風とれいさいのわたしの家、銀の月だけだ。


 このインテリ眼鏡さんは、赤い風のギルドマスターもしてたと思う。


「組合から脱退するのですから、国から受注するクエストは禁止させて頂くざます」


「そんな! クエスト無しで、どうやってギルドをつづけていけばいいんですか!」


 冒険者は、ダンジョン管理のために、モンスターを一定に保つ役割がある。


 増えすぎた特定のモンスターを駆除したり、浅い階に強いモンスターが現れたときなんかにクエストが出されて、冒険者がそれをこなすと国からお金が出た。


 基本的には、ドロップ品や沸き出すお宝を求めて冒険者はダンジョンに行くんだけど、クエストもこなせば一挙両得になる。


「クエストがないのなら、昔ながらに、冒険者からドロップ品を買い取って生計を立てればいいんざます」


「ぐっ……」


「おっと、その冒険者がひとりしかいないんでしたっけ? んほほほっ!」


 インテリ眼鏡さんがおかしそうに笑う。


 ぱんちしてやりたい。


「それじゃあ、ごきげんよう、書面はまた後で、んほほほほっ!」


 高笑いを残して扉が閉まる。


 部屋は、シーンと静まりかえっていた。


「コットン、少し外で遊んでおいで」


 おばあちゃんが厳しい口調でそう言う。


 7歳のわたしには、あまり聞かせたくない話なのかも知れない。


 おばあちゃんは、守銭奴だとか鬼だとか色々言われているけれども、パパもママもすごく信頼している人だ。


「うん、わかった」


 ママがわたしをぎゅってする。


 優しくてきれいなママ。


 わたしは大丈夫だよって合図するみたいにママを抱き返した。


「じゃあ、行ってきます」


 わたしに難しい話はわからない。


 特に遊ぶでもなく、わたしは外に出た。




「あーあ……」


 何もする気にはなれずに、路地をとぼとぼと歩いて行く。


 暗い顔をした孤児院の子達とすれ違うけど、わたしも似たような顔だろう。


 いつもの街の中だけど、今日は少し暗く見えた。


 ちょっと人通りの少ない裏路地に入る。


 この辺はそんなに危なくないので、友達と遊ぶときとかもよく歩いた道だった。


「あれ……?」


 道の暗がりで、壁にもたれかかって座り込んでいる人が見える。


 フードを目深に被って、どんな人かもわからないけど、この辺りの人じゃ無さそうだ。


 どうしよう……大人の人を呼んでくる?


 でも、病気とか怪我だったら間に合わないかも知れない。


「あの……大丈夫ですか?」


 わたしは近くで声をかけた。


 若い女の人だ。


「み、水……」


 苦しそうに、その人がそう声を漏らす。


 本当に、喉が渇いていそうだった。


 お金がないのかも知れない。


 知らない人が井戸を使っていたら怒られるし。


「ちょっと待ってください」


 怪我をしたら使うように、消費期限の切れたポーションを持たされている。


 ちょっとくらいなら、消費期限は切れても大丈夫だ。


 でも、売り物にはならないから家族で使う。


 わたしはポーションの口を開けると、女の人の口元に持って行った。


 フードの隙間から長い耳が見える、この人エルフだ。


「んん、んくっ、んくっ……」


 赤いポーションをグッと飲んでいく。


 元気が無さそうだから、赤いポーションは丁度いいはずだ。


「はぁ、はぁ……ありがとう、おかげで生き返っ……」


 そこで、エルフの女の人が驚いた顔をした。


「ま、マスター! ダンジョンマスター!」


 肩を掴まれて、必死にわたしを見てくる。


「えっ? ダンジョンマスター……うっ!!」


 そこで、わたしは雷に打たれたような衝撃を受けていた。


 マスター……それは……サーリャ?


 目の前のエルフの女の人の名前が思い浮かぶ。


 どうして、でも……。


 わたしは、記憶の奥深くに眠っていた何かが起き上がるのを感じていた。


本日は三話投稿します。


よろしくお願いします。

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