表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
奇妙な息子  作者: 六福亭 テレンス・ブレーク
5/12

第五章

 翌日、私が働いている会社に電話がかかってきた。ジャスパーの学校からだ。電話に出ると、なんと校長先生からだった。


 内容は、ほとんど予想通りだった。ジャスパーが、いざこざを起こしたのだ。私は妻と一緒に慌てて学校へ向かった。


 ジャスパーと、一人のクラスメイトが校長室にいた。ジャスパーはつまらなそうに椅子の端っこをいじっていた。クラスメイトは、頭にたんこぶを作り、青い顔でがたがた震えていた。


 私達が到着してまもなく、クラスメイトの両親が飛び込んできた。彼らは、怯える息子を見るなり激怒して、ジャスパーに掴みかかろうとした。先生が止めた。


 数十分前、教室で何が起こったのか。先生が教えてくれた。風変わりなジャスパーを、このクラスメイトがからかった。普段はどこ吹く風のジャスパーだが、この時は我慢ができなかったらしい。気がつくと、クラスメイトはふわふわと浮かび上がって、教室の天井に頭をぶつけていた。何人もの子供がそれを目撃した。


 私達夫婦は、クラスメイトと、その両親に何度も謝った。それから、先生達にも謝った。

 だが、ジャスパーはずっとそっぽを向いていた。

「はっきりいって、アップルトンさん……」

 クラスメイト達が出て行った後、担任の先生が、声を潜めて私達に言った。

「ジャスパーは異常な子です。お気の毒ですが」

 ソフィーが泣き出した。ジャスパーのことで、学校に呼び出されるのはこれがはじめてじゃない。ある時は二人で、ある時はソフィーが、またある時は私が、ジャスパーの代わりに謝りに行った。ジャスパーがクラスメイトを怖がらせた。ジャスパーが上級生の机にカエルやクモや虫を入れた。ジャスパーが授業中森へ遊びに行った。ジャスパーが……。

「もう、うんざりだ」

 私はソフィーに呟いた。ジャスパーはとっくに校長室を出て、勝手にどこかへ行ってしまった。だから、彼に聞かれる心配はなかった。

「本当の息子でもない奴に、これからも振り回されるのは、もうごめんだ」

 ソフィーはまだ泣いていた。私は、ポケットの中の名刺を取り出した。あの学者、エバンズの連絡先が書かれている名刺だ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ