8話:勧誘と救出
「葵、部活どうする?」
土古花乃高校に入学して2日目。
今日は部活発表を兼ねた新入生歓迎会があった。
土古花乃高校は生徒の自主性を重視しているので部活動への参加は自由となっている。だが、長い歴史がある学校のため部活動はかなり充実しており好成績を残している部活動も多く、そう言った部に入部するためにこの学校を選んだ生徒もいる。
なので生徒の7割が部活動に参加しているのである。
「そうだなぁ〜。色々見て決めようかな」
「まぁそうだよね。とりあえず帰るか」
「うん」
葵と美乃はそう言って、今回の発表会で部活を決めて早速入部届を書いている生徒達を尻目に会場を立ち去ろうとする。
新入生歓迎会が終わったら確実で自由に帰宅できるようになっているのである。
すると、
「そこのキミ!」
と、後ろから声がする。
いきなりの事に驚いて声のした方を見ると、背の高いまさにスポーツマンといった感じの女子生徒が立っていた。
「そこの背の高いキミ!バスケ部に入らないか?」
「……美乃、声かけられているよ」
「ん?あたしが?」
「背の高いキミ」と言う言葉だけで自分に用事はないなと理解した葵は、自分が呼ばれた事に気がついていない美乃に声をかける。
案の定、美乃は本当に自分が話しかけられた事に気がついていなかった。
「あぁキミだ。なかなか背が高いじゃないか」
「まぁ、170ありますよ」
「ほぉ、それは凄い。その長身を活かせるバスケ部に入部しないかい?」
「え、あたしがバスケですか?」
「あぁ。もしよかったらこれから体育館で活動するから試しにやっていかないかい?それで気にいったら入部しないかい?」
「いや……あたしは……」
美乃は正直面倒くさいと思っていたが、女子生徒の無言の圧力のようなものを感じて断れずにいた。
「美乃」
「ん?」
葵が小声で呼んできたので耳を近づける。
身長差があるのでこういう時大きく腰を落とさないといけないのがちょっと大変である。
「なんか断りにくそうだから、ここは参加だけでもしてみたら?」
「えぇ、でもさぁ」
「大丈夫だよ。美乃がやっているところ見たら諦めるよ」
「……諦めるかな?」
「多分大丈夫だよ」
「……じゃあ、参加だけするか」
話が決まり、美乃は女子生徒と共に会場を出て行く。
「美乃、頑張って。それからバスケ部さん、ドンマイ」
1人になった葵は2人を見送りながらそう呟いたのだった。
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「なんだよ。俺らの誘いを断るのか?」
「いや、だから僕は……」
美乃と別れて数時間後。葵は1人で下校していたら道で怖そうな男の人達に絡まれてしまっていた。
「嬢ちゃん可愛い顔してんじゃん。俺らと遊んでくれよ」
「い、いや、遊びませんよ」
「いいじゃんいいじゃん」
「ひっ!!」
怖くて震えている乙女な葵に男の1人の手が迫ってくる。
と、
「何やってんだあんた達」
後ろから突然そんな声が聞こえてくる。
今日はよく後ろから声をかけられる日である。
「あぁん?」
恐る恐る声のした方を見ると、スラリと背が高く、肩に付くくらいの濃い茶色の髪をした凛々しい顔つきの女の人が立っていた。
「なんだお前?この嬢ちゃんの知り合いか?」
「違うけど。その娘嫌がっているじゃん。離してやりなよ」
「なんだよ。関係ないなら引っ込んでろよ!!」
女の人の態度に苛立ったのか、声を荒げて喚き出す。
助けてくれたのは嬉しいが、このままでは女の人も巻き添えになってしまう……。
そう思った葵はそろりそろりとその場を離れようとする。
「なにどさくさに紛れて逃げようとしてんだよ!」
男の1人にバレてしまう。そしてそいつが葵を掴もうと手を伸ばしてくる。
「ひっ!!」
「もう!!こっちに来な」
男に掴まれそうになった時、女の人に言われて咄嗟に走り出す。
「あ、こら待て!!」
それを見た男の1人が葵達に向かって走り出す。
が、追いつかれる前に女の人が男に近付き、勢いよく掌底を喰らわせる。
「ぐぉ!?」
「「うわっ!!」」
前に出ていた男がいきなり突き飛ばされたため後ろの男達が驚きの声を上げる。
「ほら、逃げるよ」
「は、はい」
そう言って女の人は葵の手握り、2人はその場を走り去った。
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男にナンパされて、女の人に助けられる。
葵が男らしくなる日は来るのでしょうか?