6話:泥酔と悪戯
「「お邪魔しまーす」」
久我親子が米谷家を訪れる。
「はーい!いらっしゃい美乃、美乃のお母さん!!」
葵が2人を出迎える。
今の葵は制服ではなく白地にピンクのフードが付いたパーカーに紺色のハーフパンツだ。
長くて白い髪もポニーテールにしているためパッと見では男と思われる要素は全くない。
「さっきぶり」
「葵ちゃん今日も可愛いわね」
「美乃のお母さん!僕は男なんだよ!!そんな事言われても嬉しくないよ!!!」
「あらあらごめんなさい」
自分の失言に怒る葵に対し、天乃は謝罪の意味を込めて頭を撫でる。別に撫でたいからやった訳ではない……はずだ。
「えへへ〜」
「キュン」×2
頭を撫でた事で葵は満面の笑みを浮かべる。そしてそれを見ていた久我親子が胸をときめかせる。
(……こいつ本当に16歳男子なのか?庇護欲満載の小動物なんじゃないか?)
(産まれた時からの付き合いだから息子の様に思っていたけど……この笑顔はいつ見てもキュンとくるわね)
「サンニントモ、ナニタチバナシシテイルノ?」
家の奥からそんな声が聞こえる。
「あ、葵のお母さん。こんにちは」
「お久しぶり、エリゼさん」
声の主は葵の母親・米谷エリゼである。
長い銀髪と身長を除けば葵とよく似た外見の美女だ。
20年以上前故郷のイタリアから日本に留学して葵の父親の信介と出会い、大恋愛の末結婚した。
ここまで言えば分かると思うが、葵は日本人とイタリア人のハーフである。
「オヒサジブリ。モウゴハンノシタクガデキテルカラアガッテ」
「「お邪魔します」」
エリゼに促され久我親子が家の中に入る。
「いらっしゃい天乃、美乃ちゃん」
「おじさんお招きありがとうございます」
「先輩、お邪魔します」
大きな食卓に料理を並べる信介に2人が挨拶をする。
ちなみに信介と天乃は高校時代からの先輩・後輩である。
「お〜美乃ちゃん、元気にしていたか〜?」
「晴美姉さん、今朝会ったばっかりでしょう」
「お〜そうだったそうだった」
晴美はお酒を飲んだのか呂律が回っていなかった。
「ほらほら、立ち話もなんだから皆んな席に着いて。
葵と美乃ちゃんの入学祝いを始めようじゃないか」
そう信介に促され皆んなが席に着く。
「それでは葵、美乃ちゃん、入学おめでとう!かんぱーい!!」
『かんぱーい』
こうして楽しい食事会が始まった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「あははは、いや〜それにしても見事なおっぱいしてるわ〜」もみもみ
「ちょっと晴美姉さん、揉まないでよ!!」
「ホントウニスゴイムネシテルワヨ」もみもみ
「エリゼさんまで!!」
「葵ちゃ〜ん、可愛いまんまだけど、本当に大きくなったのかな〜?叔母さんに確認させて〜」
「美乃のお母さん!ズボン脱がせようとしないで!!」
「ZZZ」
「お父さん寝てないで助けて!!」
食事会が始まって数時間。大人達はお酒を大量に飲み酔っ払っていた。
晴美とエリゼは美乃に、天乃は葵にそれぞれセクハラを働いており、お酒に弱い信介は寝ていた。
「あははは」
「エヘヘへ」
「あっはっはっは」
「ZZZZ」
『大人達しっかりしてー』
米谷家のリビングはしばらく地獄絵図と化していた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「……ん、んん」
あれから数時間後。
いつの間にか眠っていた美乃が目を覚ました。
辺りを見回すと他の皆んなも寝ていた。
女性陣は何故か服をまともに着ておらず、晴美に至っては下着すら脱いでおり、上半身裸の状態で美乃に劣らぬ大きな胸が曝け出されていた。
「……皆んな、かなりお酒飲んだみたいね……」
テーブルを見ると、周りにお酒の空き缶が大量に転がっていた。
普段は頼りになる大人達だが、久しぶりの宴会で盛り上がってしまった様だ。
「んん、美乃、立派に……なってくれて……ありがとう」
不意に天乃がそんな事を言う。
「母さん」
不意の母親の本音に少し胸を打たれる。
「……ふにゅう」
横から葵の声がする。セクハラ女達から逃げてこんな所で寝てしまったのだろうか?
とにかく風邪を引いてはいけないので、近くにあった布(誰かの服)を体にかけてやる。
「ふふ、可愛いな」
無垢な寝顔を見ながらそう呟く。自分では男だと騒いでいるがどう見ても女の子に見えてしまう。
「葵、明日からあたしの魅力を分かってもらう様に努力するから覚悟しなさいよ」
そんな事を言いながら頭を撫でる。寝ているので反応はない。
「……さてと、もうひと眠りしよう。……ちょっと悪戯してやろう」
そう思い美乃は服を全て脱ぎ、葵に腕枕をしながら眠りに付いた。
朝、葵がどんな反応をするのか楽しみにしながら。
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