1話:新しい学校と物語の始まり
初投稿初日でブックマークを2つつけていただきました。
ありがとうございます。
土古花乃高校。
ここは一昨年まで女子校だったが近年の少子化に伴い女子生徒だけでは生徒数が少なくなる一方であった。
それを打開するために女子校を辞め共学となった。
だが、女子校としての歴史の長さによる世間のイメージからか昨年は男子生徒の集まりは悪く全体の2%にも満たない人数しかいないこともあり、世間の人々からは実質女子校として扱われていた。
そんな土古花乃高校も春になれば当然新入生がくる。
女子校時代から受け継がれる上品さと可愛いらしさを両立したセーラー服を着た者、共学になったことから新たに取り入れられたブレザーを着た者、制服の真新しさもあり初々しさで通学路が埋め尽くされていた。
だが、やはり新入生の殆どが女子であった。男子の人数は昨年より増えてはいるが、それでも女子生徒との人数差は天と地の差であった。
そんな生徒達の中に一際目立つ新入生がいた。
「ふっふっふ、遂にこの日が来ましたよ。
男をあげて僕は身も心も男らしく成長してみせるぞ!!」
その生徒は校門前に仁王立ちし高らかにそう宣言した。
「ねぇ見てよあの子」
校門を通ろうとした二人組の生徒がその生徒を指差してヒソヒソと話始めた。
「ふっふっ、いきなり注目されちゃった。あの子たち僕の男らしい魅力に魅入っちゃったのかな?」
「うわぁ可愛い〜」
「髪の毛も肌も真っ白で天使みたい」
「目なんて綺麗な赤色だよ。あれは兎だよ」
「でもあの子、なんで高校にいるのかな?小学生くらいに見えるけど」
「ここの制服着てるしそうでしょう。てか、なんでブレザーなんだろう」
「女の子はブレザーとセーラー服選択自由だけど、あの子はブレザーってタイプじゃないよね」
「ねぇ。絶対セーラー服の方が似合うのに」
「……」
女子生徒二人の会話を聞いてその生徒はその場で項垂れてしまった。
「あっははは。相変わらず男として見られてないね、葵」
そんな生徒・米谷葵に対して声をかける女子生徒がいた。
彼女は「久我 美乃」。
明るめの茶色い髪を背中まで伸ばしており、整った顔立ち、同い年の女子の平均を優に超える身長と思わず二度以上見てしまいそうな発育の良い体型をしたモデルのような美少女である。
「くっ、僕だって男として見られにくいことくらいわかっているよ!!だから高校生活の3年間で男を磨いて男らしくなって彼女を作るんだ!!」
葵は項垂れた体を起こし、先程のように決意を固めたような表情と口調で言った。
そう。今まで可愛いらしいと評価されていたが葵は男である。
以前好きな女子に告白したことがあったが、背中を覆う長い髪、パッチリとした大きく丸い眼の幼さを感じさせる顔立ち、小学生と見間違えてしまいそうなほどの身長、抱き締めたら折れてしまいそうなボディライン、そして白い髪と白い肌、赤い目の先天性白皮症により女性のような可愛らしい容姿をしているため男して見られず失恋してしまったのである。
この苦い経験から葵は、女性に囲まれることで自分の中にある男らしさを前面に出し男として見られるようになる、という(よく分からない)考えにより、元々入学する予定だった別の高校を諦め、急遽滑り止めとして合格していたこの女子率の高い土古花乃高校へ入学したのである。
「はいはい。そうだね。頑張っていこうね」
そう言って美乃はまるで幼子を褒めるように葵の頭を撫でる。すると
「えへへ」
と今までの表情を大きく崩したなんとも愛らしい顔を浮かべた。
葵は頭を優しく撫でられるとこのような顔を浮かべるのである。
その小さな身体と可愛いらしい顔もあり見る者の母性本能や萌えを大きく刺激するのである。
「キュンッ」×∞
その証拠に美乃を含めたその顔を見た生徒達は次々とその可愛らしさに心をときめかせてしまった。
「と、とにかく、こんな所にいつまでもいないで早く学校入ろう。入学式始まっちゃうよ」
美乃はなんとか冷静さを取り戻し校舎に入るよう促す。
「おぉそうだった。よーし男らしくなる為に頑張るぞー」
そう言って葵と美乃は校門をくぐった。
新たな物語の始まりである。
「ねぇ」
「何よ」
「さっきの顔めっちゃ可愛くなかった?」
「可愛いかったに決まってんじゃん」
「そうだよね」
「……」
「……」
「「同盟を組もう」」
……何やら違う新しい何かも始まったようである。
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