プロローグ:失恋と男になる誓い
「前からずっと好きでした!僕と付き合ってください!!」
とある中学校の体育館裏。夕日をバックに一人の男子生徒が女子生徒に自分の想いを告げ、利き手を突き出す。
所謂告白だ。
「……ごめんなさい。葵君とは付き合えないわ……」
「えっ……」
男子生徒の告白はバッサリと切り捨てられてしまった。
「……なんで?今まで仲良くしていたじゃん。……もしかして一緒にいても楽しくなかった?」
男子生徒もとい「米谷 葵」は今の状況を信じられないと言うように言った。
実際今告白した女子生徒とは入学してから3年間同じクラスで親友とも言えるほど深い友情を築いてきた。
そんな中で葵は女子生徒への気持ちがだんだん親友とは違うものになっていきこの気持ちが「恋」であると理解した。
そして今、勇気を出して自分の想いを打ち明けたのである。
だが、結果は玉砕だった。
信じられないのも納得かもしれない。
そんな葵の心情を察してか、女子生徒は話し出す。
「……そんなことはないよ。葵君と一緒にいて楽しかったよ。でもね、それでも君と付き合いたいという気持ちにはならなかったの」
「な、なんで?」
納得のいかない葵は更に質問をする。
「……だって葵君、私より可愛いんだもん」
「……ヘ?」
女子生徒の口から出た言葉に素っ頓狂な反応をする。
だが、それも無理のない事であろう。まさか「自分より可愛いから」と言う理由で女子に振られる男子はなかなかいないだろう。
「葵君、この学校の誰よりも背が低いし、髪の毛めっちゃサラサラだし、目もぱっちり二重だし、全体的にすらっとしてて抱きしめたら折れちゃそうな感じだし、それに優しけど甘えん坊なところも可愛いなって思うし、それでいて気遣い上手なところもあるし。
でもなんか女友達みたいで恋愛対象にはならないんだよね。少なくとも私はそう思うんだ。
あ、一緒にいて楽しかったのは事実だよーーーってどうしたの?地面に手をついて?」
「い、いや……情報量の多さと現実に頭がついていけてないだけです、はい」
「まぁ、そういうことだから悪いけど、私は君とは付き合えません。
米谷君にはもっと相応しい人がいると思うよ。
もうすぐでこの学校も卒業だから高校でいい人見つけなよ。
人生まだまだこれからよ。なんたってまだ若いんだから」
「う、うん。そうだね……」
「じゃあそういうことだから。心機一転して頑張ってね」
そう言って女子生徒はその場を去って行った。
「……つまり、僕は男らしくないってこと?」
米谷葵、14歳、人生初の告白で見事に玉砕。
理由:男らしくないから。
「う、うぅぅ……いつか男らしくなってやるーー!!」
夕日の空に葵の決意の叫びが響き渡る。
こうして彼は男らしくなる決意をしたのであった。
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