卵 ひな 鳥
今日、高校の演劇祭の発表を見に行って来ました。高校生の演劇、筋が複雑ですね。
見ながら「童話なら、わかりやすいのになー。童話の続きとか」と考えた話です。
演劇見ながら、思いついて出来た話なので、それほどひねってないです。よろしくお願いします。
夫を「与平」妻を「お鶴」にします。
生まれた娘は「ヒナ」です。
鶴の恩返しの最終場面。
与平の家から走り出るお鶴。
「姿を見られたからには、もうここに居ることは出来ません。」
お鶴を追いかける与平。
「鶴でもいい!お鶴!行くな!行かないでくれ!」
飛んでいく、鶴になったお鶴。
「お鶴ー!!」
打ちひしがれ泣く与平。
「うっうっ、お鶴、、、。鶴だろうと化け物でも、お鶴がいてくれさえしたら、俺は良かったのに!お鶴がいてくれて、幸せだったのに!やせ衰えていくお鶴が心配で、扉を開けてしまったばかりに、お鶴を失うなんて!、、、俺はこれから、どうやって生きていけば良いんだ、、、。お鶴がいない毎日なんて、生きていく意味が無い。うっうっ、お鶴、、、。」
地べたに這いつくばり、嘆く与平。
戻ってこないかと、空を見上げて涙を流した。
ようやく戻らない妻を諦めて、ヨロヨロ立ち上がり、家に帰る与平。
お鶴の機織りの部屋に入り、また嘆く与平。
「ああ、ここにお鶴が居たのに、俺のために自分の羽根を抜いてまで、美しい布を織ってくれたのに!お鶴がいない家なんて、さみしいばかりだよ、お鶴、、、。ん?なんだ?これは?丸くて生暖かいぞ?」
機織りの椅子の側に、与平は布に包まれた白く丸い物を見つけた。
「こ、これは!卵、か?デカいな?こんなデカい卵は、ニワトリじゃないな?ん?お鶴か?お鶴が産んだ卵!
ならば、俺とお鶴の子が入った卵か!そうか、お鶴が俺に残していってくれたんだな。お鶴、俺とお前の子だ。大切に育てるよ。」
与平は卵を大事に包み、腹に入れて温めて過ごしました。
何日か経ったある日。
パリン。
「おお!ヒビが入った!生まれるのか?俺とお鶴の子供が!頑張れ、元気に生まれてこい!おお!ドンドンヒビが、よし、生まれた!」
喜ぶ与平。
「オギャー!オギャー!」
生まれました。
「おお!かわいいな!女の子だ。ん?、、、背中に羽がある。、、そうか、お鶴と俺の子だからな。鳥と人間に生まれた子には、羽が生えているのか。はは、元気がいいな。名前は、そうだな、ヒナにしよう。ヒナ、お母さんはきっといつか、帰って来る。それまでお父さんと一緒に暮らそうな。ヒナ、俺の大切なヒナ。」
与平はヒナを大切に育てました。
お母さんがいないので、米をすりつぶして上澄み液や果汁を飲ませて育てました。
「そうか、果物の汁が好きか、ご飯をすりつぶした汁もよく飲むな。元気に育てよ、ヒナ。」
ヒナはスクスク育っていきました。
「おお!立てるようになった。しかし、羽があるのがバレたら、ヒナは化け物扱いされてしまう。仕方がない。山奥で暮らそう。」
与平はヒナを連れて、山奥に暮らすことにしました。
不思議なことに、与平の家の前には毎日、山の幸(果実やキノコ、山菜)が置かれるのでした。
朝、家の前に置かれた食べ物を手に取り、与平は言いました。
「山で暮らし始めたら、毎日のように家の前に食い物が置いてある。、、これは、きっとお鶴だ。お鶴か俺とヒナに食い物を運んでくれているんだ。お鶴は今も、俺達を思ってくれている。」
与平は大きな声で叫びました。
「お鶴ー!!ヒナは元気に育っているよ。食い物をありがとう!お前も俺達と暮らそう、お鶴!!」
声は響くばかりで、お鶴は姿を現しませんでした。がっくりと肩を落とし、与平は食べ物を持って家に入りました。
ヒナはスクスク成長しました。
しかし、与平に村や町に出ることは禁止されていました。
「ヒナ、外は危険なんだよ。他の人には羽根は生えていないんだ。父さんみたいに背中には何もない。羽根のあるヒナを見つけたら捕まえて殺されるかもしれん。だから、山から出てはいけないよ。人を見たら隠れるんだ。わかったね。」与平。
「うん、でも父さん、遠くからそっと見るだけなら、見つからないよ。私も父さん以外の人を見てみたい。お話ばかりじゃつまんない。」ヒナ。
「ダメだ。危ない。お願いだから、ヒナは家で大人しくしていてくれ。」与平。
「うん、、、わかった、、。」ヒナ。
与平が家を出ていった。
「でも、私も外の世界を見てみたい。羽根を見られなきゃ、大丈夫だよね?」ヒナはつぶやいた。
大きくなったヒナは、ある日、町に物売りに出かけた与平の後をこっそり付いていきました。
「父さんの大きな上着を着て、羽根を隠せば、大丈夫っと。」
羽は閉じて隠していますが、不自然に背中は膨らんでいます。
ヒナはそんな自分の姿に気が付きません。
与平は山を下りて町に着きました。
ヒナは離れてついて来ていました。
人や町、建物を見るのは初めてです。
「凄い!人がいっぱいいる!うわー!父さんとおんなじ男の人に、髪が長いのが、女の人!なんか、しわくちゃで髪が白い人がいる!なんだー、人だって色んな人がいるじゃない。じゃ、私だって目立たないよね!大丈夫!おお!小さい人だ!私と同じ、ううん、私より小さい!これが、子供!かわいいなー!わあ!見たこと無いモノがいっぱい!何だろうこれ?あれも、見たこと無い!すごい!」
ヒナは初めて見る町に、ヒトに、店の品物に夢中になってしまいました。
しかも、背中が膨らんで、厚着をしているヒナは目立ちました。
「あっ!父さんは?、、、いない。どうしよう、父さん、どこ?」
ヒナは与平を見失いました。ここがどこかわかりません。帰る事も出来ません。
キョロキョロして歩き、人にぶつかりました。
「おい!どこ見て歩いてんだ!痛えじゃねえか!」
三人組の男達に絡まれました。
「ご、ごめんなさい。」ヒナ。
「許してやってもいいぜ、迷惑料払えばな。ほら、金出しな。」ならず者。
「え、お金?」ヒナ。
「そーだよ。人にぶつかって、何も無しかぁ?おお、イテテ。骨が折れた。ほら、金を出せば許してやる。」ならず者。
「そんな!ちょっとぶつかっただけですよ。」ヒナ。
「いいから金出しな!何だお前。背中が膨らんでるじゃねえか。大事な荷物なんだろ?金目のもんか?出して見せてみな!」
「やめて!何も無いから!」ヒナ。
「うるせぇ、見せてみろ!」
ヒナは上着を取られた。羽を見つけたならず者はあっけにとられた。
(着物の背中に穴を開けて、羽を出している。それを隠すために上着を着ていた)
「何だこりゃ?背中に羽なんかくっつけて、、、。違う、生えてる!背中に羽ご生えてやがる!!」
「ギャァァァ!化け物!化け物だ!ニンゲンじゃねぇ!」ならず者。
逃げ出すヒナ。
町の人がヒナに注目した。
「何だアレは!」
「背中に羽があるわ!」
「化け物だ!化け物が出た!」
恐れ叫ぶ人々。
「化け物じゃないよ!私は人だよ!何もしないし、皆と同じだよ。」
町の人はヒナの言葉など聞いていなかった。
「捕まえろ!仲間を呼ぶかもしれん!」
「キャー!」ヒナ。
「よし、捕まえたぞ。手首と腰に縄をかけろ!」
「痛い!!やめて!助けて!父さん!」ヒナ。
「親を呼んだぞ!どうする?」
「親や仲間が来るぞ!」
「化け物が町を襲うかもしれん!」
「こいつは町の様子を探りに来たにちがいないぞ!」
捕らえられたヒナは泣いている。
「仲間を呼ぶ前に殺せ!」
騒ぐ人々。震えるヒナ。
「お待ち下さい。見世物屋の主人です。おお!背中に羽がある。これは確かに化け物。珍しい。見世物にするので、お譲り下さい。」
「見世物にか。そうだな。金になるならそのほうが良いな。」
「絶対に逃がすなよ。仲間や親が仕返しに来たら厄介だ。」
「ハイ。そのように。お代はこれで。」見世物屋。
「ふん、まあいいだろう。」金を受け取る男。
売られたヒナ。
「さ、殺されるよりましだよ。大人しく付いて来い。化け物。」見世物屋。
「わ、私は化け物じゃないよ。人だよ。あなたと同じだよ。」ヒナ。
「私には羽はない。お前は人じゃない。化け物だ。誰が見てもね。さっきの騒ぎが嫌なら大人しく言うことを聞け、化け物。」
「うっうっ、化け物じゃないよ、、、。」ヒナ。
町から町へ巡業する見世物屋。
見世物にされるヒナ。
「さあさあ!寄って見てくんなさいまし!世にも珍しい羽の生えた化け物ですよ!でも、ご安心を、危なくはありません。羽があるだけ!さ、羽を動かしてお客様に見てもらいなさい。」
羽をパタパタさせるヒナ。
「ホントに羽が生えてる!」
「化け物!」「人間じゃない!」「怖いよう」
人々はヒナに酷い言葉を投げつけた。
シクシク泣くヒナ。
「私は人間だよ。化け物じゃないよ。」
ある日、異人の宣教師団が見世物屋に来ました。
「ココに、ハネ、あるヒト、いる、聞キマシタ。」
「ハイ。おりますよ。世にも珍しい羽の生えた化け物です。お代、確かにいただきました。さ、見ていって下さいませ。」
「オォ!エンジェル!」
ヒナを見て、宣教師の集団が涙を流してお祈りし始めました。
「エンジェル!オーマイガッ!天からの御使い!エンジェル!アーメン!」
宣教師達に拝まれて、びっくりするヒナ。
「本物のエンジェルをこの目で見れるとは!東洋の神秘!奇跡!ニホン素晴らしい国!あなたは神の国にいるべきです。さあ、ココを出て、私達の神の国へ行きましょう!」宣教師。
「ええっ!神の国?」ヒナ。
「困りますよ。お客様。こいつは見世物にしてるだけです。売り物じゃございません。」見世物屋。
「エンジェルを閉じ込めてはイケマセン。神の罰が下ります。」宣教師。
「こいつは苦労してやっと、捕まえたんですよ。珍しい化け物ですし。」見世物屋。
「エンジェル、神の御使い。神の国に連れて行かなくてはイケマセン。」宣教師。
「ちょいとお待ちを。」見世物屋。
見世物屋の主人や従業員がヒソヒソ相談し始めた。
「宣教師が領主を連れてきたらお咎めがあるかも知れませんぜ?」
「それはめんどくせぇな。うーん。最近物珍しさも薄れて人気も無くなってきた。売っちまうか。」
「タダ同然だったしな。」
「面倒事になる前に売っぱらってとんずらしようぜ。」
「お待たせしました。宣教師様。主人とも相談いたしまして、お売りしてもよろしゅうございます。」
「この子は苦労して捕まえ、大金を払って買った子です。ですから、小判百枚はいただきませんと。」
「高いですネ。でも、仕方がありません。エンジェルですから。お支払いします。」宣教師。
宣教師が金を払い、ヒナは見世物屋を出れた。
「ありがとう!センキョウシ様!」ヒナ。
「エンジェル、これから神の国に向かいます。私達と共に行きましょう。」宣教師。
「カミノクニ?どこそれ?」ヒナ。
「船に乗ります。」宣教師。
「あのう、私、お家に帰りたいです。父さんが心配してます。」ヒナ。
「ダメです。エンジェルは私達と共に神の国に行くのです。」宣教師。
「えっ、やだ。なんか、怖い。」
船に乗せられそうになるヒナ。
「ヒナ!ヒナ!」
与平と女の人が来ました。二人はヒナを探し、見世物屋までたどり着いたのです。見世物屋に聞いて船着き場に来たのでした。
宣教師達はエンジェルの親と聞いて、話をさせてくれました。
「父さん!」
「探したぞ。いなくなってから、ずっと。
捕まっていたのか。町に出ちゃだめだと言ったろう?怖い目にあったな。
さあ、この人が母さんだよ。」与平が隣りにいる女の人をヒナに紹介した。
「山で暮らす俺達に、いつも果物やキノコを、持って来てくれたのは、母さんだったよ。お鶴と言うんだ。ヒナをずっと空から見守っていたんだ。」
「母さん?この人が?」ヒナ。
「ヒナ、ずっと見てたよ。さみしい思いをさせてごめんなさい。会いたかった。山の家に帰らなくて心配したよ。」お鶴。
「なんで?今頃?」ヒナ。
「母さんは鶴だからな。鳥の国の長から俺等と会ってはいけないと禁じられていたんだそうだよ。」
「そうなの。ごめんなさいね、ヒナ。お母さんは鶴なの。だからヒナには羽があるの。つらい目にあったわね。
母さんは鳥族の長から認められた鳥人間だから、羽を隠せるの。ほら、出し入れ自由よ。(パタパタと羽を見せる)
私達は本当は人と関わってはいけないの。鳥族にとって、人は敵だから。人は鳥を食べるでしょう?野蛮なの。
てもね、与平さんは違うの!罠にかかって苦しんでいた私を助けてくれたんだもの!大好き!」
「ははは。お鶴、俺も好きだよ!」
ラブラブ夫婦の様子。イチャイチャ。
「ヒナが攫われて見世物になってるから、鳥族の長が助けてこいって。さあ、帰りましょう。」お鶴。
「私、船に乗せられて、神の国に行くらしいの。」ヒナ。
「だめよ。鳥の国へ行きましょう。迎えてくれるから。鳥人間になりましょう。」母さん。
「鳥の国?ダメでーす。神の国へ行くのでーす。エンジェルは大切に崇められるのです。」宣教師。
「知らない国はイヤ!父さんと家に帰る!」ヒナ。
「しかしな、また捕まるかもしれん。」与平。
「私には安心して暮らせる場所は無いの?」泣くヒナ。
「鳥の国で暮らそう?そのままのヒナでいいのよ?」お鶴。
「本当?」ヒナ。
「鳥の長に認められれば、変身できるの。空も飛べるようになるわ。」お鶴。
「空を?素敵!私、鳥の国に、、、」ヒナが言おうとした言葉を与平が遮った。
「待て。お鶴。不思議に思っていた事がある。
お前が鶴んなって飛んでってから、もしやと思っていた。
お前、、何食ってた?飯に行くと言って、畑や田んぼに行ってたろ?」与平。
「もちろん新鮮な自然の恵みを食べに行っていたのよ。」お鶴。
「自然の恵みって、何を食ってた?」与平。
「虫や昆虫、爬虫類よ。イモムシアオムシ、カエルにトカゲ、ハエとかバッタ。、、、ムカデ、ゴキブリ。」お鶴。
「ギャー」ヒナ。
「おええ。」宣教師。
「やっぱり!
田んぼや畑に虫が居なくなって助かってたんだ!あと、お前が居た間、家にも虫がいなかったが、それも食ってたのか?」与平。
「ええ。鳥ですもの。果実や虫、昆虫、爬虫類が毎日のご飯よ!」お鶴。
「ギャァァァ!!無理!鳥のご飯、無理!」ヒナ。
「慣れれば大丈夫。美味しいわよ。」お鶴。
「無理!無理!無理!私は人間!人です!」ヒナ。
「そんな、これからはお母さんと暮らしましょう?空を飛んで自由に生きるの。素敵でしょ?」お鶴。
「食べ物、大事!私は人間です!虫ご飯は嫌ー!!鳥にはなれません!なりません!絶対に無理です!」ヒナ。
「おお!エンジェル!神の国へ行きましょう!神の国のご飯はパンです。美味しいでーす。虫は食べませーん。」宣教師。
「神の国も鳥の国もイヤー!!米がいいー!!」ヒナ。
「そうなの。、、、わかったわ。絶対に嫌なのね。えい!」
お鶴が、ヒナの背中の羽を取った。
「エエエェ!!!」ヒナ、与平。
「エンジェルのハネが!オーマイガー!!アンビリバボー!」膝をついて嘆く宣教師。
しーん。
「羽って、とれたんだ。」ヒナ。
「ヒトになりたい鳥族は、鳥族が羽がとるの。とったら、もう鳥族には戻れないの。でも、ヒナは人として生きるんでしょう?」寂しそうなお鶴。
「エンジェルは、人になったのですね。とてもザンネンです。ニホン、不思議の国。
それでは、さよなら、さよなら、さよなら」
宣教師達は船に乗って国へ帰ることになりました。
船に乗る宣教師達。船が岸壁から離れ、沖へ、行ってから、ヒナは叫んだ。
「見世物屋から助けてくれてありがとうー!!お金払ってくれてありがとうー!」
見送るヒナ。大きく手を振る。
「アア!!忘れてました!お金、返してくださーい!」思い出して叫ぶ宣教師。
「むーりー!」笑顔のヒナ。
船は見えなくなって行く。
「やったー!お金払わなくてすんだ!」喜ぶヒナと与平。
「そうだな。早く山に帰ろう。追っかけてきたら払えないからな。」与平。
「父さん!また一緒に暮らせるね!」ヒナと与平は抱き合う。
「母さんも一緒に暮らそうよ!」ヒナ。
「でも、虫を食べるわよ?トカゲもカエルも青虫も。」お鶴。
「いいよ!好きなだけ食え!だから、一緒に暮らそう。」与平。
「羽はとれるのよね?羽があったら、化け物って言われるよ。母さん、私、母さんと暮らしたいの。」ヒナ。
「わかったわ。私、人間になるわ。」お鶴は羽を取ると決めた。
「うおお!お鶴!これからは夫婦、親子で仲良く、人として暮らそう!」与平。
3人は山へ帰り、仲良く、幸せに暮らしました。
与平の家で虫は全くおらず、畑の野菜も虫食いがなくなりました。
おしまい
お読み頂きありがとうございます。
演劇に出来ない?お芝居にならない?と見せたけど、イランと言われてしまいました。
せっかく書いたから、出しちゃいます。
執筆中の欄にあると、間違えそうなので。