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こんな1日も素敵かしら

作者: ラムネ

 電車に乗っていると面白いものがあったりする。私はスマホが大好きだ。だから電車に乗ってもついつい眺めてしまう。そんな中でも、ふと周りを見渡すと面白いなと思う。

 結構楽しいのです。でも理解されません。私は別段、電車の車体が好きだとかそういう類の者とは違うのですが、電車の空気感というかのんびりしたとことか嬉しくなって止まらないのです。

 電車の景色は移り変わります。写りも変わります。光の角度や色の反射はその日にしかないものです。蒼く澄み渡る空その下に広がるのはこれまた涼しい色の川、これらは全て私の好きなものです。そんな所を好きな人と行きたいのです。私はたった1人、親友がいます。色々な話のできる人です。例えるなら、段々畑と山の緑色のような人でしょうか。気を使わなくていいというか、適当に話していてもお互いに同じリズムで会話ができます。沈黙があっても、それすら愛おしく思えて、嬉しくて楽しくって堪りません。こんなことを言うと変ですね。そんな人物と私の好きなものである電車に乗れたらどれだけ良いでしょうか。そう想像してしまいます。でも、それが実現できていないのは、夏休みだというのに私に予定があって合わないのです。運動会の装飾係です。パネルを作ります。正直、気持ちはいつも紺色に近いブルーです。自分で立候補して決めたとはいえ、少し悲しい気持ちになります。どの中で親友は、それでも私の作業を手伝ってくれるので、ありがたいです。あと私は、進学を考えています。そのため補習があるのです。予定が合わないのは以上の事からなのです。

 私はここからお盆休みに入ります。学校も閉まって全員休みです。寂しいなという気持ちは、ずっとあります。親友に会えないでいると別に胸が苦しくなったりはしないのですが、心が満たされずに何処か乱れます。連絡を取ることは出来ます。何でもないことを親友に送り合う仲だからです。でもこの気持ちは恋ではありません。恋ならば、もっとキューっと、夜苦しくて激しい深紅の薔薇のように燃えたぎるものを感じさせるからです。きっとこれは、友情なのです。ゆっくり身体を暖めてくれる暖炉のあのオレンジ色のようなそんな感じです。居なければいないで、動くことはできるのです。でもやっぱり、傍に居てくれると安心してたまりません。そういう気持ちの時にリストの「愛の夢」を聴くと何だかそれでもいいっかとなって親友に依存しなくて済みます。ある程度落ち着くと、眠くなって「Je te veux」を愉しむのです。このことを、親友に知られたら少し恥ずかしいです。何でも伝えられる仲なのにどうしてでしょうか。私は自分のことを理解できてないのでしょうね。

 今日、図書館に出かけました。蝉の声や朝の日差しはとても夏でした。この時期の温度は苦手ですが、色がとてもはっきり出るのでとても好きです。あぁなんて素敵なんのだろう。きっと幸せなことがあるに違いないと確信できて、ルンルンです。歩いて図書館まで向かいました。着くとここの図書館はやっぱり木が多く使われていました。私の地域の図書館は2つあります。1つは昔からある、重く沈んだグレーな空気が流れている専門書がメインの初夢図書館。そしてもうひとつは、小説や絵本などがあり、木がふんだんに使われていて暖かい雰囲気があるけど季節によって変化する、山の森図書館です。私は基本、山の森図書館を使います。天井も高いし、オシャレなカフェもあってゆっくり身体を休めることができます。実際、仮眠室なるものもあるので寝ることも出来てリラックスでできるのです。今であれば、初夏の風と共に爽やかなソーダの弾けるような心地良いものをここでは感じることが出来ます。ここも親友と来れたら良いのですが、無理でしょうね。

「会いたいです。貴方に。」

 思わずここの文章で読みのをやめてしまいました。分かりません。ただ、読めなかったのです。嫌だなと思いました。私は、2時間半ほど図書館に居りましたがこの一文で帰ることにしました。

 あの小説のように、私も愛されたいと思ってしまったのです。ダメなことでしょうか。いけないことでしょうか。涙が出てきそうなのを必死に繋ぎ止めました。

 歩きながら帰ります。暑くて蒸し蒸しです。きっとこんな天気、好きな人いないんです。私は嫌いです。ただ、何となく帰ります。1人で泣いていました。寂しいのです。私は幸せな人である事はとうの昔に知っています。何で、どうして涙が止まらないのでしょう。皆に愛されていて不自由のない暮らしをしているはずなのに、心が満たされないのです。ただの我儘なのは分かっています。自分の言う通りに人が動く訳ではないことも。お願いです、助けて欲しいのです。


 ある日、僕は図書館で泣きそうになっている彼女を見掛けた。僕の立場はただのクラスメイトだ。だから彼女に何か出来るわけでもなければ、今ここで話しかける勇気すら持たないのである。それでいいと思っていた。

 でも何故か僕は特に理由もなく、彼女を追いかけることにした。気になったのだ。学校では見せない、あの一面が脳裏に焼き付いて堪らなかったから。寂しそうな、あの朧気な表情が気になってしょうがなかった。

 彼女は夏の暑さに狼狽えていた。独り言で「暑い暑い」と呟いている。この道をずっと進むと矢倉神社に向かうことになる。彼女はそこに行くのだろうか。その神社の美しさと涼やかな風景は彼女が好むものなのだろう。木橋の下に川が流れていて、神社はその橋を通らないと行けないところだ。


「久しぶり澄田さん。今から僕は神社に行くところなんだけど、着いてくるのはどう。良ければでいいんだけど。」

 僕は後ろにいて、彼女の後をついてついて行くのはもう嫌だった。ストーカーみたいだから。それに話しかけたくなったのだ。


「えっ、えっと谷口君。ひ、久しぶりー。びっくりしたよ。神社に行くんだね。私もそのつもりだったの。」

 私は驚きました。まさか、クラスで一番女子からの人気の高い、谷口君に話しかけられると思わなかったからです。そして目の腫れた顔を見せることになってしまったのが何よりも辛いのです。逃げ出したいです。


「良かった。改めて澄田さんじゃあ一緒に行ってくれないか。」

 僕は、こんなに胸が高鳴るのは初めてだ。澄田さんに、こんなことをお願いするなんてきっと夏の暑さでおかしくなっているんだ。彼女は目が腫れている。泣いたのか。


「私で良ければ。」

 こう言うしかないじゃないですか。私としては、何で私を誘っているのかを知りたいものです。でもきっと彼は聞いても答えてくれないでしょう。嫌です。怖いです。変なドキドキです。でも、それを超えるドキドキがあって思わずうっとりしてしまう私がいるのです。


 彼女は、頬を林檎の紅のように染め上げている。素直に愛らしいと思った。ぎゅうっと抱きしめたいのを我慢して彼女が紡ぐ言葉の1文字1文字を聞き逃さまいと耳を傾けた。


「あっ、あの暑いね。谷口くん取り敢えず矢倉神社に行こう。あそこ結構閉まるの早いんだよ。」


 僕は思わずハッとして、そうだねと彼女に告げ、一緒に歩いた。彼女と神社に行くために川沿いの道を歩く。さらさらと水は流れて綺麗だ。僕は川が好きなのだ。川は光の反射で一瞬蒼だったり、だったり、はたまた澄み切った緑色だったり、美しい色の重なり合いを感じられて僕にはなんだか勿体ないくらいの自然の力を感じられて。


「とっても綺麗だね。私、川好きなんだ。音とか色とか冷たさとか全部、自分の汚いものを落としてくれる気がして。」

 私は何を言っているのでしょうか。遂に気が狂ったと思われるじゃありませんか。私はこんなことを言うつもりはなかったのです。ただ、谷口くんならいいかなと思ってしまったのです。


「うん、僕も好きだよ。美しい景色だしね。」

 にこやかに微笑んでみた。僕はきっとこれでいいのだ。夏のレモンのような爽やかさにただ混乱するばかりで。


橋を通り、本殿へと向かう。ジージーと蝉が鳴く。


「うーん結構鳴いているね。寂しいね。」

彼女は怖いほど美しい横顔を太陽に当てながらそんなことを言った。


「どうして、僕にはそんなふうに思わないけど。寧ろ夏って感じがして良くないかな。」

「気にしないでください。ただの独り言です……。」

「あっごめん。あっち見て見て牛が空飛んでる!」

少し彼女に嘘をついた。

「えっ本当ですか。まさかそんな訳ない......はず。」

「もちろん飛んでるさ。ほらっ牛みたいに見える雲があるじゃないか。」

「どっどれですか。」


「あっ!」

「きゃっ!」

ぶつかってしまった。

谷口くんが指を指すからそれをずっと追いかけて身体が谷口くんに当たった。しっかりと温かみを感じてしまった。


「ははっ澄田さんってば大胆ですね!僕びっくりしちゃいまいしたよー。」

「そっそんなことないよ!勘違いです!」

少し気持ちが明るくなったかな。そうだといいな澄田さん。


空はとても快晴だった。



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