葛藤 〜リアルタイムの殺人部屋へようこそ〜 第4章
第4章
「良かった、私、生きてるんだ……」
真綾は両手を閉じたり開いたりと繰り返す。そして昨日殺人のあった、あの部屋へ行った。するともう皆集まっていた。
「あ!ごめんなさい、私、遅くなって」
真綾は慌てて駆け寄る。
「良かった、真綾いた。 ねぇ、菜緒は?見た?」
真帆がホッとしたように言った。
「え?今日はみてないけど……」
「ねえ、菜緒。いるんでしょ?」
「早く出てきてよ」
「話し合いしないと」
何度呼んでも返事は返ってこなかった。
「もしかして、夜に死んだ……?」
悠が呟いた時
「なんで!?菜緒は客人って言ってたよね。殺人犯は客人よりも村人を殺すはずでしょ」
いつでも冷静だった誠人が悠に掴みかかる。
「殺人犯に殺されたとは限らないよね。同じ部屋を見て銃殺された可能性もある」
「ごめん、取り乱した」
真帆の言葉に誠人は再び冷静さを取り戻し、悠から手を離した。
「……で、昨日何か見た人いる?」
真帆は昨日誠人が見つけた紙を広げながら言った。
2本の手がスッと上がる。
「昨日この部屋の凶器を見たらロープがあった」
最初に口を開いたのは誠人だった。
「はぁ?嘘だ。昨日僕もこの部屋を見て、鉄パイプを見つけた」
慎也は立ち上がって大きい声で言った。
「まるっきり食い違ってる。どっちを信じればいいの?」
真綾は真帆に縋るようにして言った。
「そうだ。お互いに告発しよう。そうすれば誠人は死ぬ。よって僕が嘘ついていないっていう証拠になる。みんな目線、どっちを信じればいいか分からない状況でどっちかに告発させるよりはお互いに告発させた方がいいでしょ」
「お前、告発出来ないでしょ?村人じゃないんだから。」
「ふざけるな。それはお前だろ」
慎也と誠人は取っ組み合いの喧嘩を始めた。
「待って。相互の交換に利益ないよ。嘘ついているのが殺人犯だったら?不正解になって死ぬんじゃない?そしたらなんで死んだのか分からなくなる。どちらか片方に告発してもらうしかない」
「告発したら死ぬかもしれないってこと?なら僕は告発なんかしたくない。お願いだから、僕のこと信じてよ。ねぇ。」
真帆の言葉に慎也が駄々をこねるように言った。
「信じろって言うなら正直に話せよ」
しばらく黙っていた悠が口を開いた。
「え、何言ってるの」
「昨日、ドアノブ触って電流浴びた後、お前は『ゲームとか漫画を買ったら親に怒られるから買ったことなくて本ばかり読んでた』って言ったよな。なのに亮を運んだ時、俺はゲームにハマってたって言っただけなのにゲームの名前を当てた。しかも毎日ゲーム漬けだった俺もクリア出来なかったのにお前はクリアしたんだよな。だからお前はゲームの最後どうなるか知っていた。お前のこと、よく分からない」
「そんなこと、何の関係もない」
「確かに関係無いかもしれない。でも、隠し事してるような奴、信じられない。全てを話して欲しい」
「確かに、悠の言う通り違和感ある気がする」
「死にたくなかったら全部正直に話して」
皆、一斉にまくし立てた。
「わかった。言うよ。言えば良いんでしょ」
その言葉にシンッと静まり返った。
「小学生の頃、流行っていたゲームを持ってないっていう理由でハブられた。でも両親はそういったものを買ってはくれなかった。小学生でお金のない僕は万引きした。そうすればハブられないんじゃないかって思って。
僕がゲームを始めた頃にはみんな既に上達してて僕と対決してもつまらないって言ってハブられた。今度は攻略本を万引きした。それでみんながクリア出来ずにいた所も軽々とクリアして、だんだんと輪の中心になっていった。
流行りが変わる度、万引きする物も変わっていった。輪の中心にいる心地良さから抜け出せないで万引きを繰り返した
でも……本当にダメなことをしたと思ってる」
慎也は消え入りそうな声で言った。
「今はやってないんだよね?」
その問いに慎也は黙って頷いた。
「……今はしてない?だから何?だから許せってこと?ふざけるな!!」
真綾は顔を真っ赤にして言った。
「お前のせいだ!もう、なんでもいい。お前が村とか殺人犯とかどうでもいいから早く死んでよ!ねぇ!早く死んで!!」
真綾は髪がボサボサになるのも気にせず何度も何度も強く慎也を揺さぶった。
「真綾!?ちょっとどうしたの。落ち着いて」
真帆は真綾をおさえ、悠は慎也を守ろうとするかのように立ちはだかった。
「私の叔父は、コイツに殺された!!」