ひとつめ
中々思うように文章を書くのは難しいですよね。
そう思いながら書いていました。
お暇であれば、読んでいただけると幸いです。
第一章
「流石に20台とチェイスは死んじゃうかと思ったよ。危なかった」
東京のとある高等学校の校舎内、1年16組の教室にて黒髪の少女は疲れた様子で呟いていた。赤いTシャツに黒のパーカー、紺のジーンズと制服を着ていないことは明らかだ。事実、他の生徒は全員制服を着用しているため彼女はかなり目立っている。尤もこの教室では誰も視線を向けることは無いのだが。視線どころか声すら聞こえない
「はーい、ホームルーム始めるよ!!」
そう大きな声で叫んで教室の扉を開けたのは白いスーツを着た女性教員、左腕に教材を抱えて慌ただしく教壇に立つ教員に今まで静かだった生徒たちは一斉に立ち上がって完璧な連携で教材をそれぞれ所定の位置に配置した。ただ一人、彼女を除いて。
「手伝うのは分かるけどそんな機械みたいに動くの…?」
他に誰も疑問を抱かなかった、それはある意味当然のことであった。
この状況では、寧ろイレギュラーは彼女なのだから。
すべての生徒が先程までと打って変わって彼女に視線を向けた。
「え?」
彼女が発した言葉は、もう言葉とすら形容しづらくただ少しの恐怖と疑問が入り混じっただけの掠れた声だった。だが、そんな彼女を無視して生徒は迫る。自然と恐怖から後退りするがそんなことお構いなしと迫られ、彼女の恐怖は徐々に大きくなりやがて震えだし、教室外に飛び出すに至った。慌てて、余裕もなく廊下を駆け抜ける。背後には大量の生徒が迫ってきている。もう肺がはち切れそうだ、でもまだ立ち止まることは許されない。
それも当然、立ち止まればたちまち生徒たちの人波に呑まれてその命が絶たれてしまうからだ。幸いにも彼女を追う生徒は機械的に一列に走っている、ならば回り込まれることはないだろう。階段を滑るように駆け下りて、一気に一階まで辿り着く。下駄箱を通り抜けてそのままグラウンドまで飛び出す。だが、そこに待ち受けていたのは今までの努力を全否定するかのような生徒の大群だった。後退しようとするが彼女を追う生徒が追いつき、囲まれてしまう。こうなってはもう逃げることは叶わないだろう、悟った彼女は膝から崩れ落ちる
「初めから詰んでたのか…ははっ私は何のために今まで頑張ってきたんだろう」
頬を涙が伝う、願望も希望も絶望も全てがここで途絶えてしまう。単純にして少女が背負うにはあまりにも重すぎるその事実が彼女の心を昏い深淵へと突き落とした。
そして、生徒の大群に呑みこまれるであろうその時に蒼い車体がその大半を弾き飛ばした。
「待たせたね、妹よ」
自動車の窓から顔をさらけ出したのは紅い目をした黒髪の青年だった。彼女はその青年を視界に認めれば驚愕を顔に浮かべて叫ぶ。
「お兄ちゃん!!助けて!!」
兄と呼ばれた彼は答える
「任せろ!!」
彼は強引に車体を彼女にまで近づけ、彼女はそのまま乗り込む。
急発進した自動車は大量の生徒を吹き飛ばしながら学校を走り去っていった。