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最弱勇者は叛逆す  作者: 水無月 黒


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帰路

 その日の夕方、俺は魔族の村を後にした。

 お祭り騒ぎは酒が無くなるまで終わりそうもないし、カルロスや魔王と話すことも特にない。

 カルロスと魔王、それと村長に軽く挨拶して、俺は魔界を去った。

 帰還方法は、もちろん転送石だ。対となる転送石はジョージに持って行ってもらった。

 ジョージには宿を取ったら部屋に転送石を置いておくように頼んだのだが、転移した先はボーガス大公邸の豪華な客室だったので驚いた。

 ネズ占領地の攻略を終えた各国の軍や冒険者達は、そこから直に自国に帰ったのではなく、一度ダラムに戻って祝勝会を開いたのだった。

 祝勝会は三日三晩続いた。お祭り好きは人間も魔族も変わらないらしい。


 祝勝会が終わると、各国の軍と冒険者達はそれぞれの国に帰っていった。

 俺達もミストレイク王国に帰還することになる。

 往路は一度中央の大国に入ってから東に進んだのだが、帰路は基本テルミヌス川を北上すればよい。ミストレイク王国も魔界と接する国なのだ、川沿いに進むのが一番早い。

 往路で川沿いに南下するルートを使用しなかったのには幾つかの理由がある。

 第一に、勇者に対する最大のスポンサーである中央三大国に勇者をお披露目するためだ。勇者召喚に必要な物資や資金を多く提供しているため、緊急性がない限り、ミストレイク王国としてはちゃんと勇者を召還したことを示しに行く必要がある。

 まあ、一番南のブレア王国まで行くと遠回りになりすぎるので、歴代勇者もそこまでは足を延ばさないことが多いらしい。俺も立ち寄ったのはガレリア王国、ダリウス王国の二国だけだった。

 第二に、勇者のレベルを上げるためだ。テルミヌス川の近くには魔の森がない。しばしば氾濫して何もかも押し流してしまう暴れ川だ。魔物だって定住できない。レベル上げのために魔物を狩るには、リセルのような魔の森に近いところが向いている。

 先代勇者もリセルで魔物を狩りまくってレベルを上げていたらしい。乱獲しすぎて他の冒険者の迷惑になったのではないかと、ちょっと心配になるが、当時のギルドマスターがうまく誘導して危険だったり儲けにならなかったりして冒険者がやりたがらない依頼をやらせていたらしい。

 第三に、魔族に勇者の動向を知られないためだ。人類が、川を超えて魔族がやってこないか監視しているのと同様に、魔族も川の向こうから人類を監視している。川沿いに歩いて移動していたら、勇者の位置がリアルタイムに把握されかねない。

 まあ、俺達の場合、往路で魔族に見られても勇者とは思われなかったかもしれないが。

 魔族との戦争が一段落し、緊張が緩んだ今ならば、俺の動向が魔族に知られても問題ない。むしろ勇者がおとなしく帰還すると知られた方が余計な軋轢はないだろう。


 川沿いに行く旅は順調に進んだ。

 川沿いに進む場合、注意しなければならないことがある。

 まず、雨で増水したら、すぐに高台に避難しなければならない。平坦な川原は、そこまで浸水する場所であることを意味する。

 幸い、ここ数日は晴天が続いているが、上流に降った雨で鉄砲水が発生することもあるから、油断はできない。

 一応、いつでも高台に避難できるように、川から離れた場所を歩いているのだが、場所によってはその高台に魔の森があったりするから要注意だ。

 次に、川原に宿はないので、野宿したくなければ日が暮れる前に町や村を探す必要がある。天気予報など存在しないこの世界では、川原で野宿はお勧めできない。

 大きめの町ならば、大きめの道ができていたり、標識が立っていたりして分かりやすいのだが、川から離れている場合も多い。余裕をもって行動する必要がある。

 それから、川沿いには魔族の監視を行っている軍の拠点が点在している。基本は対岸の様子を監視しているだけだが、たまに検問を行うこともある。

 魔族の中には服装でうまく隠せば人間と大差ない外見の者もいるので、念のため調べているらしい。今まで人間に化けた魔族が見つかったことはなそうだが、人間の犯罪者が引っかかることはある、ということなので彼らは割と真面目に仕事をしている。

 そういう訳で、迂闊に不審な態度を取ると職務質問を受けることもあるのだが、犯罪者でも魔族のスパイでもなければ、身分証明書を見せればだいたい問題なく通れる。

 身分証明書としては、冒険者ギルドの発行する冒険者カードが有効で、下手な国の発行する身分証より信頼があるらしい。

 俺も、ミストレイク王国でステータスの確認も兼ねて冒険者カードを発行してもらったが、国からの身分証の類はもらっていない。ミストレイク王国より、冒険者ギルドの方が信頼があるのだろう。

 さて、軍による警備や検問が厳しく行われる場所と言えば、国境近辺なのだが、川沿いに進むと何度も国境を越えることになる。

 テルミヌス川、つまり魔界に接した領地を積極的に治めたがる者は少ないため、大きな功績を上げた家臣や冒険者に与える領地として、川沿いの土地が良く使用されるのだそうだ。そしてボーガス公国のようにそのまま独立することも多々あるという。

 また、魔界に接している国は他国からの支援が受けられるため、川に近い小国では少しでも魔界に接した領土がないと逆に困るといった事情もあり、川沿いは特に細かく小国に領土が分割取れているのだ。

 そうした国境の警備の中でも、特に厳重な監視体制を敷いているのが、今いる場所だ。

 「この近辺から、川幅が狭くなるんです。だから、魔族が渡ってこないか、厳重に監視しているんです。」

 警備の兵士が割と気さくに教えてくれた。

 上流に進むにつれて川幅が狭くなるのは普通のことだが、このあたりでは大きめの支流が複数合流している。東の魔界から流れ込む川もあれば、西から流れ込む川もある。

 「まあ、一番危ないのはお隣のレイア王国ですが。アイル川と合流する前後でだいぶ川幅が違うでしょう。」

 確かに見てわかるほどに川幅が変わっている。レイア王国との国境になっているアイル川もかなり大きな川だ。

 「レイア王国から魔族が入って来るのを防ぐため、アイル川には橋が架かっていません。」

 にこやかに言い切る兵士。一見、隣国に厄介ごとを押し付けているように見えるが、実はレイア王国側にもメリットはある。下流側への移動を制限することで、魔族がレイア王国に侵入しずらくしているのだ。

 辺境の北方は山岳地帯もあり、入り組んでいる。大軍が動くには向いていないし、土地勘のないよそ者には目的地に到達するのも一苦労だ。魔族にとっても魅力がないらしく、上流で川を越えた魔族はまず南へ向かうそうだ。

 レイア王国まで入り込んでも、アイル川で迎撃されるとなると、魔族も躊躇するらしい。

 まあ、それはともかく、問題は俺達もアイル川を渡ることができないということだ。魔族対策で通行止めになっている川を勇者が勝手にわたるわけにもいかない。

 川沿いに進む旅もここまでのようだ。


魔界との行き来に使用した『転送石』ですが、実はもっと前から使っていました。

リセルのスタンピードでゴブリンキングに向かっていった時。

ネズ占領地に単身潜入した時。

いずれも緊急脱出用に仲間に転送石の片割れを持たせていました。緊急脱出しなかったので描写がなかっただけです。

直行は生きて帰ることが目的なので、結構慎重な面があります。

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