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最弱勇者は叛逆す  作者: 水無月 黒


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18/35

スタンピード1

 その日、リセルで活動している冒険者のほとんどがギルドに集められた。

 「みんな、よく来てくれた。薄々気付いている者もいるだろうが、数日中に北の森でスタンピードが発生する。ゴブリンが千以上だ。」

 ギルバートの説明に対して、予想していたようで、特に驚きの声は上がらない。まあ、北の森の立ち入りを制限して、調査依頼を繰り返し出していたのだ。予想できて当然だろう。

 スタンピードが発生する理由は二種類あるといわれている。一つは強い個体が現れたことで住処を追われた魔物が玉突き現象を起こして森から出てくる場合。もう一つは、数が増えすぎた魔物の群れが餌を求めて森から出てくる場合。

 今回のスタンピードは後者になる。

 通常、北の森の奥には二百~三百匹のゴブリンの集落があるらしい。それ以上増えると餌不足になり、弱い個体から集落を追い出されてハグレになる。

 しかし、一時的に大量の餌を確保できたなどで、集落のゴブリンの数が増えることがある。すると、増えた数を活かしてより広範囲で狩りを行い、得られる餌を増やしてさらに個体数を増加させるというスパイラルが発生する。

 加速度的に数を増やしたゴブリンは、やがて周囲の獲物を捕りつくして決定的な餌不足に陥る。その結果、餌を求めて大移動を開始し、スタンピードが発生するのだ。

 「ゴブリンどもが出てくるのはこのあたりだ。過去の例を見てもまず間違いない。そこで我々は、この場所で迎え討つ。」

 地図上でギルバートが指したのはリセルのほぼ真北だ。そして、森から少し南下したところに防衛線が記されている。

 「リセルに籠るんじゃなくて、わざわざ迎撃に出るのか?」

 リセルを囲む防壁は高くて頑丈だ。また、防壁の上や途中の小部屋から弓や魔法で攻撃することもできる。リセルの防壁を利用すれば安全かつ一方的に撃退できるはずだ。

 「ああ、ナオユキはリセルに来てから日が浅いから、説明する必要があるな。お前らも、分かっていない奴は今のうちに聞いておけ。」

 なんだか、結構な人数の冒険者が姿勢を正して真面目に拝聴する。分かっていなかったらしい。

 「まず第一に、リセルの防壁の外には農地が広がっている。リセルに籠って迎撃すると畑が荒らされてしまう。ここで食い止められないと、しばらくうまい飯は食えないと思え。」

 ああ、確かに防壁の外に畑が広がっていた。リセルに籠れば人的被害は防げるが、農業に対する被害は甚大なものになる。避けられるものなら避けたいだろう。

 「第二に、確かにリセルの防壁ならばゴブリンごときに破られることはない。だがその場合、連中はリセルを無視して西か南の森へ向かう。奴等の目的はエサの確保だからな。」

 つまり、リセルで籠城すれば、戦う必要もないということ。代わりに被害を受けるのは、別の魔の森ということになる。一見するとこれだけならば問題なさそうに思えるが……。

 「この場合、ゴブリンに侵入された森では何が起こるか予想もつかない。最悪、再びスタンピードが発生する。当然、事態が落ち着くまでは立ち入り禁止になる。」

 これは冒険者にとっては死活問題だろう。他にも仕事はあるとはいえ、冒険者の本業は魔物を倒すことだ。魔の森が立ち入り禁止になると、かなり仕事が減ることになる。

 「他に質問はないな。じゃあ、次行くぞ。今回、迎撃に出るのはCランク以上に限定させてもらう。D、Eランクのものはリセルでバックアップだ。それから、今回特別に勇者サマも参戦してくれることになった。期待してくれ。」

 まさか、そのために俺たちのランクを上げたんじゃないだろうな。

 「懸念事項として、未確認だがゴブリンキングが生まれた可能性がある。その場合、出てくるゴブリンは五千を超える恐れがある。」

 ゴブリンキングはゴブリンの上位種で、統率個体だ。従えることのできるゴブリンの数は万を超えるといわれている。五千というのは、現在北の森に生息すると予想されるゴブリンの上限なのだろう。

 「キングが出てきた場合、可能ならば討伐するが、無理ならば撤退してリセルに籠ることになる。撤退の合図は見逃すなよ、置いていくぞ。」

 ゴブリンキングの厄介な点は、数が増えるだけでなく、ただいるだけでゴブリン全体の攻撃力と士気が上昇することにある。言ってみればゴブリンの狂戦士化であり、どれだけ倒しても撤退せず、死をも厭わず突っ込んでくるようになるのだそうだ。

 逆に言うと、ゴブリンキングさえ倒してしまえば一気に烏合の衆になるので倒せるならば倒してしまいたいということらしい。


 その後、迎撃チームとバックアップチームに分かれて詳しい作戦の説明が行われた。

 それが終わると、そのまま迎撃地点へと向かう。ゴブリンが出てくる前に拠点を作って防衛線を構築する必要があるからだ。

 そして、勇者の大活躍が始まった。まあ、物資の運搬を請け負っただけだが。本来は、馬車で何度もピストン輸送する予定だった物資を一度に運んでしまったのだから、勇者のアイテムボックスはつくづく規格外だ。

 迎撃予定地点につくと、持ってきた資材で簡易的な前線基地を構築。また、ゴブリンを足止めするための柵やトラップを設置する。バックアップチームはここまで作業してリセルに戻った。

 迎撃チームはそのまま拠点で待機し、ゴブリンが出てくるのを待ち受ける。そのために十分な量の食料と水も持ってきている。


 そして、万全の態勢で待ち構えてから二日後の朝、ゴブリンの集団が姿を現した。


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