魔の森探索
「前方からゴブリン十! ジョージは右側、俺は左側のに当たる。リリアはその場で詠唱の準備!」
魔の森を探索していたら、ゴブリン十匹と遭遇した。五匹ずつ二グループに分かれていたので、こちらも俺とジョージで分かれて対応する。
最近はジョージの腕も上がってきているし、リリアも魔法で防御することもできるようになった。ゴブリンの五匹や十匹問題はない。だが、……
『チャージスラッシュ』で一気に間合いを詰めると、一番前にいた奴を斬り伏せる。これで、一匹。残りのゴブリンは慌てて距離を取り、俺の前方を半円形に囲むように対峙する。
隣ではジョージが同じようにしてゴブリン五匹と対峙している。このまま前衛二人で抑えておけば、フリーになったリリアが魔法で攻撃し放題。負ける要素はない。ただし、こいつらだけならばの話だ。
そもそも、ゴブリン十匹はハグレにしては多すぎる。また、こいつらは装備が良い。粗末とは言え革の鎧を着けて、鉄の剣も持っている。そして、妙に統制が取れている。速攻で一匹倒されても逃げるでもなく、がむしゃらに攻め立てるでもなく、連携を取っている。
それに、先ほどからギャーギャーと大声で威嚇してくるだけで、積極的に攻めてこない。何かを待っているのか?
少し揺さぶりをかけてみるか。
俺は向かって右端のゴブリンに一歩詰め寄る。すると、左端のゴブリンが俺の横を抜けてリリアの方へ走ったので、振り向きざまに手にした剣を投げつけて仕留める。これで二匹目。ついでに後方全体を一瞬見渡し、新しい剣を取り出しながら振り返る。予想通り突っ込んできたゴブリンを切り捨てる。これで三匹目。
残った二匹は再び距離を取り、さらにジョージと対峙していた方から二匹が追加でこちらへ来る。やはり連携が取れている。
「リリア! こっちはいいから、後ろからくる敵に備えろ!」
さっき振り返った時に、後ろに回り込もうとしているゴブリンの一団を見つけた。目の前にいるのは斥候兼足止め役といったところだろう。獲物を見つけたら、大声で威嚇しつつ仲間を呼び寄せているのだ。
「ジョージはリリアの援護。ここは俺が抑える。」
「承知!」
ジョージは短く答えると、目の前のゴブリンを強引に切り捨て、そのまま反転してリリアの方へ走り去る。その後を残る二匹が覆うとするが、俺がアイテムボックスから取り出した石を投げつけて倒す。投擲用のナイフもあるが、ゴブリン相手なら石で十分だ。
ジョージの側のゴブリンを仕留めている間に、俺の方にもゴブリンが近寄ってきたが、左手に持ち替えた剣で突き殺す。
残る二匹は距離を取って威嚇してくるが、そちらには石を投げつけて、結果も見ずに俺も反転してリリア達の方へ向かう。途中で先ほど投げた剣を刺さっているゴブリンごとアイテムボックスに回収しておく。
「二人とも走れ! 完全に包囲される前に撤退する。」
ジョージを先頭に走り出す。背後に回り込んだゴブリンとの距離は離れている。大きく囲んで、徐々に包囲を狭めていくのだろう。左手にまだゴブリンのいない隙間があるが……
「右へ! 強行突破して森を抜ける。」
右手の、二十匹くらいの集団の先は、俺たちがやってきたルート、つまり魔の森の出口がある。数が多いのはそちらに行ってほしくないから。逆に技と数の少ない場所を選んで進めば罠に嵌って包囲のど真ん中に追い込まれるのだろう。
「ウォーターバレット!」
リリアが走りながら魔法を放つ。水弾を飛ばすだけの初級の魔法で殺傷能力は低い。かわりに数を多く打ち出して、ゴブリン集団に満遍なく、それも顔面を狙って打ち込まれている。これは敵を倒すのですはなく、撹乱するための攻撃だ。よく考えている。
ゴブリン達が混乱しているうちにジョージが斬り込む。足を止めることなく、邪魔になる奴だけ斬り伏せ、道を作る。ついでに斬ったやつを他のゴブリンの方へ突き飛ばすことでこちらに近寄らないように妨害している。うん、ちゃんと修行の成果は出ているようだ。
なおも追いすがるゴブリンは俺が斬り捨てて包囲を突破。そのままゴブリンの追撃を振り切って、俺たちは魔の森を脱出した。
「ウーン、確かにハグレじゃあねえな。ゴブリン本体の食糧調達部隊だろう。しかし、こんなに浅いところで狩りをしているとなると……」
ギルドに戻った俺の報告を聞き、回収したゴブリンの死骸を確認すると、ギルバートは難しい顔で唸った。
「まずいのか?」
「あぁ、他の奴に頼んだ調査結果も確認する必要があるが、スタンピードの前兆の可能性がある。」
スタンピードとは、普段なら魔の森など決まった場所で暮らしている魔物が、一斉に住処から溢れ出してくる現象だ。これに巻き込まれると小さな町くらい簡単に滅びる。
「しばらくは、北の森は立ち入り禁止にするしかないか。悪いが明日の訓練は中止だ。しばらくは忙しくなるから、練習相手が欲しかったら、暇な冒険者に声をかけてくれ。」
結構大変なことになっているようだ。




