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前世は聖女の悪役令嬢

作者: 下菊みこと

前世は聖女の悪役令嬢

私は、前世は聖女でしたの。


初めまして、ご機嫌よう。私、エレナ・オービニェと申します。公爵令嬢です。ぜひレナとお呼びくださいませ。突然ですが、今世は私、悪役令嬢なようなのです。


順を追って説明しますと、まず、私は所謂異世界転生というものをしたようなのです。前世で老人ホームなどへの寄付などの良い行いをしてきた結果、好きな世界に転生する権利を得られたのです。そして前の世界で目が覚めました。大好きな乙女ゲームの世界。私はヒロインで聖女のリリアンヌ・カロリングとして生きていました。それはそれは豪華絢爛で贅を尽くした幸せな人生でしたわ。聖女として、王妃として、時には元平民としてわがままも貫き通して、とっても楽しかったんですの。しかし、前世で悪役令嬢達全員をざまぁして、私のためを思って忠告してくれた彼女達の善意を踏みにじったためか、逆ハーレムルートを突き進んだためか、聖女としての使命を果たさなかったためか、わがまま放題だったためか、今世では私は乙女ゲームのヒロインではなく、悪役令嬢に転生していたのです。しかもよりにもよって、フレッド…フレデリック・フィリップ王太子殿下の生まれついての婚約者、所謂ラスボス悪役令嬢に!悪役令嬢の中でも一番酷い目にあう悪役令嬢ですわ!


正直戸惑ってしまいました。私は前世ではみんなに愛されるヒロインですもの。悪役令嬢なんてどうすればいいんですの?まあ幸いにして、両親や兄、使用人など皆から愛されてすくすくと健やかに成長できそうですけれど。…ああ、もしかして前世でざまぁした悪役令嬢達もこんな風に皆に愛されていたのかしら。私、とことん屑でしたのね…。とにかく、この後私は十六歳で学園に入学し、十八歳になると転入生のヒロインさんにざまぁされ、良くて身分剥奪の上国外追放。悪くて死刑。家族にも友人にも迷惑をかけて、ヒロインさんに全てを奪われる。


だから、私考えましたの。


ー今世でもまだ使える聖女の力を使って、前世での悪行の贖罪をしようと!


もしこの悪役令嬢転生が天罰なら、贖罪をすれば情状酌量の可能性もありますわ。少なくとも家族や友人へ迷惑がかかることはないかも。後、ヒロインさんを虐めるのもやめておきましょう。というかなるべく距離を置いて関わらないようにしましょう。ええ、これで今後の方針は決まりましたわ。では早速行動に移すのみ!ということで早速、五歳の時から贖罪は始まりましたわ。暇を見つけては必要最低限の護衛と使用人を連れて、スラム街や手遅れの患者を収容する苦痛緩和用の病院、戦地などに足を運んで聖女の力を解き放ちましたわ。そうするとたちまち皆の怪我や病気は治りましたわ。その代わり私は大量の体力と魔力を消費し、その度に疲れ果てて寝てしまうんですけれど。そのおかけか、領内での私の評価は上々。聖女として崇められましたわ。まぁ実際聖女の力を行使しているんですけれど。家族の見る目も変わりましたわ。ただ可愛いだけの娘から聖女のような清らかな乙女として、更に過保護に、でも慈善活動は自由にさせてくれるようになりましたわ。そして、何より変わったのはフレッド殿下。生まれついての婚約者。煩わしい、自分に媚びを売るしかない忌まわしい女、と私のことをそう思い込んでいた殿下は、私の慈善活動と領内での評価を知り、こいつ一人でも生きていけるのでは?俺は何か酷い思い違いをしていたのでは?と気付き、私に少しずつ歩み寄ってくださいましたの。そしてある日、頬を染め恥ずかしそうに、目に涙を溜めながら、すまない、俺はお前のことを誤解していた。今まで邪険に扱ってしまってすまなかった、やり直せるのなら、ここからやり直したい。どうだろうか。と言ってくださいましたの。もちろん私の返事は、はい、嬉しいです!でしたわ。そうすると、乙女ゲームのスチルでも見たことのない綺麗で花の咲くような笑顔で、初めて私をレナと呼んでくださいましたわ。きっと、幸せってこういうことですのね。


ー…


フレッド様と歩み寄ってから早数年。もう十八歳になってしまいましたわ。ヒロインさんも学園に入学してくる頃ですし、そろそろ潮時なのかしら…。


「レナ、何を考えている?俺の話はつまらないか…?」


「フレッド様!すみません、少し考え事をしておりましたの」


「そうか。…なにか悩みがあるならすぐに俺に言え、なんだって解決してやる」


かっ…かっこいい!さすがフレッド様…!俺様王子系!素敵!


「わかりましたわ」


「遠慮なんて要らないからな。お前は聖女に祭り上げられてから弱音の一つも吐かない。少しは周りに頼っても良いんだ」


にこり、と微笑むフレッド様。まるで花が咲くようなその笑顔は、私だけに向けられるもの。


「…ふ、レナは本当に俺の顔が好きだな?」


「はい!当然ですわ!だってかっこいいんですもの!その微笑みを独占することが出来るなんて感激ですわ!幸せですわ!」


「ふ。そこまで褒められると嬉しいものだな。以前は顔を褒められるのは好きではなかったんだが。レナと一緒にいると本当に色々な面で変わっていける。俺と一緒いてくれてありがとう、レナ」


ああ、嬉しい。嬉しいと同時に虚しい。この相思相愛に思えるほどの優しい日々ももう終わり。だけれど、例え振られる運命だとしても、私に歩み寄ってくださった貴方様を、私は最後まで愛し続けますわ!


「あ、そうだ、今のうちに渡しておきたいものがありますの」


「なんだ?」


「この十年、私の魔力を込め続けた指輪ですわ。魔法を弾いてくれますの。護身用に持っていてくださいませ」


「ん。王族はいつ何時狙われるかわかったものじゃないからな。助かる。ありがとう。左手の薬指に嵌めてもいいか?今度俺からも指輪を贈ろう」


「…嬉しいですわ、ありがとうございます」


…そしてヒロインさんが入学してきましたわ。物語の幕は開きました。ですが彼女の皆様からの評価は愛らしいご令嬢ではなく変わったご令嬢でしたわ。なぜなら、折にふれ攻略対象の皆様に言い寄っているからですの。婚約者がいる方ばかりなのにね。その上多数の殿方に言い寄るなんて、逆ハーレムでも築くつもりだったのかしら。フレッド様に対して一途ならともかく、他の殿方とも関係を持つつもりなら許せませんわ。ただ、フレッド様は他の攻略対象者の方々と違って、ヒロインさんに見向きもされなかったようですわ。何故なら、私の渡した指輪がヒロインさんの魅了魔法を弾いたから。そしてそれに気づいたフレッド様は、他の攻略対象者にも指輪を一度だけ貸しましたの。そうすると魅了魔法は解け、皆様は正気に戻りましたわ。もちろん、ヒロインさんのその浅ましさはすぐに噂になりましたわ。そして、王族を魅了魔法によって誑かそうとしたとして両親とともに打ち首が決定しましたわ。


フレッド様以外の攻略対象者の方々とその婚約者様方はちょっといざこざはありましたが、最終的に魅了魔法のせいだとわかって丸く収まって、今はらぶらぶいちゃいちゃのご様子ですわ。


まあ、色々ありますけれど、逆ハーレムなんて最悪なものを築こうとされたヒロインさんはざまぁな結末になりましたし、攻略対象者の方々もその婚約者様方も幸せになれましたしハッピーエンドではないでしょうか?


私?私も、フレッド様からの寵愛を受けられ、フレッド様と相思相愛ですのでとても幸せですわ。ええ、とっても。


悪いことをしたら反省し贖罪する。それも一つの選択肢ですわ。

悔い改めることそのものにきっと、意味はある

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― 新着の感想 ―
[良い点] 魅了された攻略者達がチャンと婚約者達と元鞘に戻れたこと [一言] まぁ王族に魅了魔法をかけて操るなんて、国家転覆罪だよね
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