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魔法使いじゃないから!

魔法使いじゃないから!『レベル10―嘘は魔法使いの始まり ―』

作者: すみ 小桜

これは、七生の災難のお話第十弾!

基、『魔法使いじゃないから!』の十作目です。

このお話だけでも、わかるようにはなっています。

  ―1―


 うわぁ! とうとう稲葉(いなば)先輩まで巻き込んじゃったよ!!

 何でいつも事を大きくしてくれちゃうかな!


 僕の少し前には、一つ上の先輩で、生徒会長の稲葉先輩が杖を持ち立っていた。そして、彼はこちらを向きどや顔だ!

 その先輩の向こう側には、かわいらしい青いスライムがいる。いやかわいいは、今回語弊があるかもしれない。何せこのスライムは、僕と同じぐらいの背丈がありますから!!


 「どうだ!」

 「どうだじゃないわ! 私の杖~~!!」


 稲葉先輩がそう言うと、安達(あだち)先輩は半泣きだ。

 どういう事だと、稲葉先輩が僕を見た。

 だから、違うと言ったのに――!!




 僕は、(あきら)七生(なお)。今年高校生になったばかりだ。登校初日の帰り道に、銀色に光る水色の髪に瞳の少女ミーラさんと出会った。

 僕はミーラさんが持参した『杖』で、彼女の世界から召喚したモンスター倒しを押し付けられた! その『杖』はよりによってレア物だったらしく、僕にしか使えないものだった!


 向こうの世界では、その杖を造れば名が轟く程の逸品らしい。でも地球じゃ使わないものだし、杖なんて持って歩けない! と言ったらミーラさんの師匠のパスカルさんは、ペン型にしてくれた――大きなお世話だ!!


 パスカルさんは、その杖をレベルアップさせたいが為に、ミーラさんを送り込んで来た。彼女は、杖野(つえの)ミラとして、僕の学校に来た! お蔭で僕は、この世界で杖のレベルを上げるために、モンスター狩りをするはめになったのだった!!


 そして、とうとうその杖がレベルアップして、形成を変えたのだ!

 だが、僕はだまし討ちをされた(ダブルの意味で)!

 本当は、杖の形が変われば解放されるはずだった。けど何故か、卒業式でその杖の試し打ちを披露する事になり、見事その杖は認められた!

 なのに、至高の杖だと言って、もっとレベルアップさせられる羽目になった!


 だから、ミーラさんはまだこの世界にいる。

 そして、またやらかしてくれたんだ!!



  ―2―


 卒業式が終わった次の週の月曜日。この日が修了式だった。授業はなく、午前で終わり。でも部活はあった。ただ、しゃべくるだけなんだけどね!

 僕が所属している部は、かそう部。そして何故かお飾り部長をさせられている!!

 『かそう部』――この部は、趣味全開! 魔女っ子大好きの大場(おおば)幸映(ゆきはる)と同じクラスの二色(にしき)愛音(あまね)さんがエンジョイする為に作った部だ!


 ミーラさんも部員になった。

 そして何故か三学期も終わると言うのに、生徒会副会長の安達先輩も部員になってしまった!!


 「おい、審」


 部室のドアを開けようとした時、後ろから声がかかった。聞き覚えがある声だ。生徒会長の稲葉先輩だ!


 「あ、お疲れ様です。安達先輩ですか? たぶん中に……」

 「いや、君に用事がある」

 「え!?」


 彼からの用事は、あまり聞きたくないなぁ。

 稲葉先輩は、安達先輩が好きなようで、その安達先輩が僕に気があると思っているので、何かされそうで怖い……。


 「生徒会室に来てほしい」

 「……あの、部室では?」

 「生徒会室で話がしたい」

 「……わかりました」


 あぁもう! 僕が何をしたって言うんだ!

 仕方がないので、生徒会室についていった。


 生徒会室は、僕にとっていい思い出が無い。いや、生徒会の人じゃなきゃ、思いですらないだろうけど。

 僕はここで、安達先輩に平謝りをしたのだ。けど、その事件のせいで安達先輩は、僕達(・・)に興味を持ってしまった。

 これもすべて、ミーラさんのせいだ!


 「いやぁ、君の卒業式の催しは功を奏したようだ」


 そう言って、テーブルをバンと叩いた。

 何だ? どういう意味?

 僕を睨み付けていた稲葉先輩が、叩いたテーブルに目線を移したので、僕も移した。そこには、何やら大量の紙が置いてある。


 「これは、かそう部の入部届だ! もう三学期も終わるので保留になっている!」

 「え!? なんで?」


 いやそりゃ、手品だとしたらすごいかもしれないけど、普通それで入部が殺到するとは思えないんだけど?

 でも紙は、30枚はありそうだ。


 「かそう部に、安達さんが入部したと知った連中が出して来たものだ。君の責任なんだから何とかしてほしい!」

 「え? それって入部させろって事ですか?」

 「バカか! 逆だ! 何とかして断れと言っているんだ! 変な奴を近づけさせるな!」

 「………」


 そんな事を言われてもなぁ。無理だと思う。――僕は、お飾り部長なんですけど!

 だいたい三学期の終わりのあのタイミングで、安達先輩の入部を許可したの教頭先生でしょう?


 「そうだ。教頭先生にお願いしませんか? 新三年生は、ダメだって。そう……」

 「大半は、君と同じ学年だ!」

 「いや、そう言われても……僕にそんな権限ないですけど」

 「ないなら作れ!」


 そんな無茶な!

 手品部だと思われているから、試験に合格したらと言う事ぐらいしか思いつかないけど。ただ、どんな試験にしたらいいか……。


 「いいか! 安達さんを無事卒業させるんだ!」

 「部員を入れても無事卒業出来ると思いますけど?」


 そう返すと睨まれた!


 「わかりました! 試験を行って受かった人だけにします!」

 「なるほど! それで全員落とすんだな? あ、この話は、安達さんには言うなよ!」

 「……はい」


 あぁ、面倒な事になった!




  ―3―


 「教頭先生」

 「おや、どうしました?」


 僕が来たので他の人はと確認をする教頭先生。わかりますその気持ち。


 「あ、今日は一人です」

 「そうか」


 あからさまに、教頭先生はホッとする。

 僕達、問題児扱いになってるかも……。


 「で、どうした?」

 「あ、はい。あの、入部希望者が多い様なので、選抜したいのですが……」

 「選抜?」

 「えっと、入部試験です。それをやる予定です。……許可を頂きたく……」

 「あぁ。構わないよ。しかし、凄い効果だな。マジシャンって人気だったんだな」

 「………」


 人気なのは、安達先輩ですけどね!


 「ありがとうございます」


 僕は、安堵して部室に向かう。

 悪いけど、全員落とします! ――じゃないと、稲葉先輩に何されるかわかりません!


 「あ、きたきた!」

 「遅くなってごめん」

 「別に構わないわ。楽しい時間だった。じゃ、一日(ついたち)にね」


 僕が部室に行くと、入れ替わりに安達先輩が出て行った。


 「生徒会の仕事だってよ」


 大場がそう教えてくれた。

 彼女も忙しいなら、この部に入らなくてもよかったのに……。


 「って、一日にって?」

 「次の部活を4月の初めにしようかってなったの」


 僕の質問に嬉しそうにミーラさんが答えた。


 「その日に、ミラさんが杖を作って持って来てくれるって事になったのよ。やっと私達にも専用の杖があたるのよ!」


 二色さんも嬉しそうに僕に話してくれた。

 ――って、何だって!!!


 「ちょっと待って! その杖って、モンスターが出る杖なんじゃないの?」

 「そうだよ。たぶん……」


 たぶんって何だよ。

 いやそれより、まずいだろうそれ。倒せるの僕だけだし。


 ミーラさんは、まだ見習いらしくちゃんと杖を作れない。前にこっそり作ったのが、本来の杖と逆でモンスターを出す杖だった!

 それが、師匠のパスカルさんに認められて、この世界でモンスターを出す杖として使用される事になった。その杖で出したモンスターを僕が持っている杖で倒すのだ。

 だから、そういう杖が増えるのはまずい!

 って、彼らに渡したらところかまわずモンスターを出すだろう!!

 これは何とかしないと!!


 「あのさ、ミーラさん。ちょっと!」


 僕は、彼女を手招きする。


 「あのさ。杖じゃなくて服にしない?」

 「服?」

 「ほら、水色のワンピースみたいの」

 「なんで?」

 「何でって……」


 それは、杖を作らせたくないからです!


 「って、私には服は作れないよ?」

 「………」


 そうだった!

 ミーラさんは、杖職人の見習いだった!!

 さて、どうしよう……。


 「せこいことすんなよな!」

 「そうよ! 自分だけだなんて!」


 聞き耳を立てていたらしく、大場と二色さんに抗議されてしまった。

 あぁ、もう!


 「じゃ、受け取っても勝手に出しまくらないでよ! 僕にしか倒せないんだから!」

 「へいへい」

 「でもこれで、その杖のレベルアップに貢献できるわね!」


 いや、それはしなくていいんです!

 僕は、ため息しかでなかった。

 ミーラさんが、失敗してくれる事を願うしかない。




 とうとう4月になった。学校に行きたくない!

 今日は、モンスター退治させられまくるだろう。

 絶対、一回ずつじゃ終わらない。


 「遅いぞ!」

 「もう、待ちくたびれたわ!」


 部室のドアを開けた途端、大場と二色さんがそう文句を言ってきた。

 見ればもう、ミーラさんも安達先輩もいた。

 集合時間の10分前に到着したというのに、何で文句を言われなきゃいけないんだ!!


 「ふふふ。じゃ~ん!」


 ミーラさんは、得意げに杖を出し皆に見せた!

 うん。変哲もない普通の杖。前にミーラさんが作った杖と同じ形。


 「おぉ!!」


 大場が興奮した声を上げた。


 「ごめんね。実はね、一つしか出来なかったの……。だから、この杖を使って最初にモンスターを出した人に差し上げます!!」

 「何!?」


 大場は、今度はミーラさんの言葉に、驚きの声を上げた。

 っは! このままだと取り合いが始まり、それこそところかまわずモンスターを出そうとするかも!


 「言って置くけど、建物内でモンスター出すの禁止! 無効だからな!」


 バシ!

 僕が言い終わるのが早いかぐらいで、杖をミーラさんの手から安達先輩が奪った!


 「え? ちょっと待てよ!」

 「年上なのだから、最初は下に譲るものでしょう!」


 驚いた大場達は言うも、安達先輩は部室を駆けだし出て行った!

 二人は、それを追いかける!

 僕も追いかけようとすると、「ダメ」とミーラさんが僕の前に立ちはだかった!


 「うふふ。大丈夫!」

 「何が大丈夫なの! 喧嘩になるかもよ!」


 もしかしたら最悪、血の争いになるかもしれない!

 って、誰かがモンスターを出すかもしれないから追いかけないと!


 「実は、全員分作ったの! あの杖は、私が前に作った杖だよ」

 「うん? 何でそんな嘘を?!」

 「だって、今日って嘘を言っていい日なんでしょう?」


 エイプリルフールを知っていたの!?

 誰が教えたんだー!!


 「嘘は考えて言わないと!! 言っていい嘘と悪い嘘があるだろうが!」

 「えぇ!? 本当は全員分あるよって言えば喜ぶって!」


 喜ぶかもしれないけど……それ、すぐに教えないと大変な事になる!

 僕も部室から出た。


 「審さん。一体何があったのだね? 追いかけられていたが……」

 「え!?」


 そう聞いてきたのは、教頭先生だ!

 職員室のすぐ隣に部室がある。騒げば直ぐにわかってしまうんだった。

 あぁ、もう、急いでいるのに!


 「えっと、あれです! 試験!」

 「え? それ、今日なのか?」


 取りあえず頷いて、僕は駆けだした。

 どこに行ったんだぁ!!




  ―4―


 どこに行ったんだろう?

 僕は、体育館に行って見たけどいなかった。

 もしかして、屋上か?

 階段を上がっていると、ガシッと腕を掴まれた! 危うく転ぶとこだった!


 「うわ。びっくりした……」

 「一体何をしてるんだ!?」


 掴んだのは、稲葉先輩だ。

 なんて、間が悪い!


 「何か杖を安達さんが持っていたけど……」

 「うふふ。知りたい?」


 ギョッとして僕達は振り向いた。

 ミーラさんが、嬉しそうにしている。


 「ちょっと待て! 変な事は言わなくていいから!!」

 「いや、言え!」


 モンスター云々って言ったって、信じて貰えないから!!


 「あのね。あの杖を使ってモンスターを出した人が、一番の権利を貰えちゃうの!」

 「一番?」

 「うんうん」

 「そうか! 安達さんと何か一番に出来るんだな! 俺も参加する!」


 うん!? 何だその一番は!

 稲葉先輩は、変な勘違いをして階段を駆け上がって行く!


 「ちょっと待って!」

 「待てるか! 君もずるいぞ!」

 「いや、だから違うから!」


 もう! なんでいつもミーラさんは、話をややこしくするんだー!!

 屋上まで行くと、ドアが開けっ放しになっている。そして、争う声がきこえる! ここで間違いない!


 屋上では、三人で杖を引っ張っていた!

 よかった! まだ、モンスターは出していなかった!


 「「「あ!!」」」


 げ! 三人に近づいていた稲葉先輩の足元に、奪い合っていた杖が転がった!

 それを稲葉先輩は、拾い上げた。


 「ありがとう。稲葉くん」


 そう言って、安達先輩は稲葉先輩に近づいて行く。

 渡してくれるもんだと思っているみたい。

 残念だけど彼は、参加する気満々です……。


 「確か、こうだっけ? スライム召喚!」


 そう言って、三人の目の前で稲葉先輩は、杖を振ってしまった!


 「えぇ!! そんなぁ……」

 「嘘だろう? 横入りなんて!」


 愕然とする大場と二色さん。

 スライムは無事召喚された! それはそれは、立派で倒し甲斐がある大きさだ!


 「どうだ!」

 「どうだじゃないわ! 私の杖~~!!」


 どういう事だと稲葉先輩は僕を見た。

 あぁ、もう、面倒だ!


 「るすになにする!」


 胸ポケットの杖を元に戻す言葉(じゅもん)で、杖は元の大きさに戻った。


 「すげー」


 稲葉先輩は、素直に驚いている。

 手品として凄いと思っていると思うけどね!

 この前レベルアップして、杖の形が変わった。

 最初は、先がくるっと丸まった何の変哲もない杖だったが、今はとぐろを巻いた様にねじれ、先はコウモリの様な羽の形になっていた!

 そして、羽の間には、小さなオレンジっぽい宝石がついている。


 「消滅!!」

 「おぉ!! もう始まってねぇ?」


 僕がスライムに杖を振ったと同時に、ドアの方から声が聞こえた。振り向けば、十数人の生徒が!? なんで?


 「君達かぁ。残念だったな。俺が権利を頂いた!」


 うわぁ!! 稲葉先輩! 変な事を広めないでほしい!

 後で言い訳を考えないと……。


 「何それ!! 酷くねぇ? 一人だけなのかよ!」

 「生徒会長って、かそう部に入部届出したのか!」

 「って、抜き打ちみたいの酷くねぇ?」


 うん? 何かよくわかんないけど、向こうは向こうで何か勘違いしているような!?


 「ぐわぁ!! なんだこれ!」


 げ!!

 稲葉先輩の悲鳴で振り返れば、赤くなったスライムが稲葉先輩の上に乗っている!

 今回のスライムって動けたんだ!!

 青から赤に変わったのは、ゲームでいうならある程度HPが削れると、狂暴化する状況と同じ現象らしい。本当は、赤くなるのは目なんだけどね!


 「何ぼさっとしている! 重い! どけろ!!」

 「消滅!!」


 杖を振ってスライムに攻撃するも消滅しない!!

 さすがデカいだけある!


 「消滅!! 消滅!! 消滅!!」


 やっと消えた!

 パチパチパチ!

 文句を言っていた生徒が、僕がスライムを消したのをショーだと思ったようで、拍手を頂きました。――嬉しくない!


 「まあ、生徒会長じゃ仕方ないか。元から勝てないだろう?」

 「あのさ。ここの場所誰から聞いたの?」

 「場所は聞いてないけど、今日が入部テストの日のようだって言っていたからさ!」

 「新学期の前に行うなんてなぁ……」


 あぁ! 入部試験だと思ったのか!

 これなら丸め込める!


 「そうそう。素質のある人って思ってね」

 「え? そうなの?」


 僕が、勘違いした生徒に合わせているのに、ミーラさんは不思議そうに首を傾げる。


 「そうなの!」

 「用事を思い出した!!」


 がばっと稲葉先輩は、起き上がったと思ったら杖を握りしめ走って行ってしまった!!


 「え! ちょっと杖!」


 僕の声は届かなかったようだ。

 まずい! 無意識にモンスター出されたらどうしよう。


 「俺達も帰ろうぜ」


 ぞろぞろと見学していた生徒も帰って行った。

 何か、どっと疲れた。稲葉先輩どこ行ったんだぁ。


 「あぁ……杖が……」


 ずーんとして、安達先輩が呟いた。

 そんなに欲しかったんだ杖。


 「えへへ。じゃーん!!」

 「え? 杖だわ!」

 「おぉ! 杖じゃん!」

 「ミラちゃん。最高!」

 「今日はエイプリルフールだからちょっとだけ嘘ついちゃいました! ちゃんと三人分作ったんだ。さっきの杖は、前作ったやつだよ」


 得意げにミーラさんは、三人に言った。

 三人共大喜びだ!

 はぁ。これからまた、モンスター退治かよ。


 「おぉ。これで俺も魔法使いだ!」

 「では、スライム召喚!」

 「じゃ、私もいでよスライム!」

 「俺も!」


 だぁ!! いっぺんに出すなよ!

 うん? あれ? 召喚されてない?


 「でないけど?」


 三人は、ミーラさんを見た。

 大場の言葉に、ミーラさんはえへっと笑った。


 「失敗作みたい!」

 「「「えーー!!」」」

 「いいんじゃないか? 杖は杖だろう?」


 不満そうな三人だけど、僕は助かった!

 で、稲葉先輩はどこ行った!




  ―エピローグ―


 稲葉先輩は、何故か部室にいた。

 機嫌がよさそうで、得意げに杖を掲げている。

 どうやら入部試験だと思い込んだ稲葉先輩は、入部届を出しに走ったらしい。で、めでたく新入部員になった!

 まじかー!!

 魔女っ子大好きじゃないけど、安達先輩大好きでそれもまた大変なんだけど!


 「しかし、俺にも出来ちゃうなんてな! どういう仕組み?」

 「種も仕掛けもないよ。それ本物の杖だから」

 「は?!」


 稲葉先輩の質問に、僕はそう答えた。

 どうせ、すぐに変だと気づくだろう。マジックだと思って、ポンポンモンスターを出されても困る!


 「そうだよ! それね、私の傑作なの!」

 「俺達は、レプリカだもんなぁ。でもまあ、魔法使いって感じでいいか」


 大場は、それなりに満足しているみたいだ。


 「あぁ。そう言えば、魔法使いって審だけだっけ?」

 「うんうん。そうなの!」

 「そうなのじゃない! 魔法使いじゃないからって言っているだろう! だいたいそれなら全員魔法使いだろう!」


 意味がわからないと稲葉先輩は、首を傾げた。


 「自分で言っていなかったっけ?」

 「だから、それは設定!」

 「だろう? で、他の奴はどういう設定なの?」


 そこは、突っ込まないでほしい。


 「なんだよ、お前。いつも否定する癖に、先輩には自慢していたのかよ」

 「私は、杖職人の見習いだよー」

 「私は、勇者!」

 「安達先輩が勇者なら、私は賢者にしようかな」

 「勇者に賢者? じゃ俺、何にしよう」

 「何だ。魔法使い以外決まってなかったのか? よし、じゃ設定からだな!」


 はぁ。何で稲葉先輩が仕切ってるの?

 魔法使いじゃないからって言っているのに……。

 って、設定なら全員魔法使いでよくない?

 何で、勇者や賢者なの?! それ魔法使いより上じゃない?


 「あ、俺、魔王な!」


 ノリノリで稲葉先輩は言った!

 ぴったりですね!

 って、この部は何の部になったんだー!!

シリーズをまだお読みでない方で、興味を持たれた方は是非レベル1からどうぞ☆

今回もお読みいただき、ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 遅ればせながら今回、くすっどころではなく、何度も声出して笑わせていただきました! 稲葉先輩が何をしてももう笑えて笑えて…… 勘違いからのダッシュといい、スライム出してドヤ顔? してるところ…
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