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まぁ、さっきはカレナちゃんに先に教えようとしたけど、ちゃんと学ぶには必要な物があるからセーフということで。と、その時ラウル君が開けていたドアからもう一人の男の子が入ってきた。
「先生こんちわー!」
先に来た二人より一回り大きい身長で茶髪の男の子、≪シュウ君≫。十五才の男の子でちょっと魔術は苦手だけれど剣術の腕は凄くて同学年では敵無しなんだとか。腰に木で出来た剣をいつも差している。
「先生、今日は道に迷わなかったぜ?」
「一年になるからそろそろ覚えようね、シュウ君」
この家には私の先生の貴重な魔術書や資料があるから、普通の人にはこの家、というか森自体に簡単に家まで辿り着けないように結界魔術を張っている。
だから決められた道順で来ないと森の外に出ちゃう仕組みなんだけど、シュウ君はまだここに来ようとして森から出ることがあるらしい。
「シュウ君、聞いてよ! またカレナちゃんが先に魔術を教えてもらおうとしたんだよ!」
「なに!? 俺らより早く学校終わるからってそれは無しだって前言ったじゃんか!」
「まだちゃんと教わってないもーん!」
また始まったか! いや私がカレナちゃんを贔屓したのが悪いん だけどまた始まったか!
「今日から本格的に教えるからその話は終わりー!!」
この可愛い子達が私の生徒。私が先生から教わった大事な事を引き継ぐ子達。
この世界で私は変えなくてはいけない。
きっと大変なことだと思う。長い年月がかかると思う。でも、私はやると決めた。
この世界の魔術の常識を変える。
それが私の夢であり目標であり、そして天国にいる先生への恩返し。