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それは私が幼い頃のお話。
その時確か五才ぐらいだった私は、二階の子供部屋で寝ていました。
窓から差し込む暖かい陽射しが体に当たっていて気持ちよかったのを覚えているから、きっとお昼寝だったのかな。
一回で大きな物音がして私は目が覚めました。
何故だか不安になったのを覚えています。
目をこすりながら物音を立てないようにゆっくりと起き上がり、部屋を出て階段を下りました。
するとある部屋のドアがほんの少しだけ空いていたのです。
きっといつもの私なら勢いよく開けて、お兄ちゃんやお姉ちゃん達に飛びかかり、沢山遊び、沢山学び、そして日が落ちれば先生が作ってくれたご飯を食べる。
笑顔で、きっとそうした筈。でも五才の私でも何故だかそうしてはいけないような、何か不穏な空気を感じ、やはり、ゆっくりと物音を立てないようにドアに近寄り部屋を覗き見ました。
「ふざけんな!!」
「ひっ!?」
突然の罵声に私は小さな悲鳴をあげました。
そこには、もう髪は真っ白になってしまった老婆、もとい先生が両膝を着き泣いていて、その前には三人のお兄ちゃんと三人のお姉ちゃんが難しい顔をしていました。
赤髪短髪でつり目の一番大きな お兄ちゃんが拳に力を 入れていて、いまにも先生に殴りかかりそうな形相で、私は何が起こってるのか理解できませんでした。
いつもは優しいお兄ちゃんが凄い怖かったから、私は急いで二階の子供部屋に戻り、布団に潜りました。
明日になったら先生もお兄ちゃん達も笑顔になっていることを祈りながら。