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妖怪道中甘味茶屋  作者: 梨本箔李
第三章 雨月
80/286

80 幕間劇 鞍馬山にて6 清覧のおしごと

74 逢いたいときにあなたは

の後話です



『鞍馬山』

《カフェまよい》から、山を三つほど超えた場所にある霊山である。

妖怪の棲む妖異界では特別な山で、その頂上には大妖怪『天狗』が居を構え、その弟子である『烏天狗』たちが暮らしている。

妖異界の自警団のような役割を担っており、『烏天狗』たちは、その機動力と神通力で各地を飛び回り、調査や巡回、トラブルの対処にあたっている。



奥の院。

鞍馬寺の奥にある、『天狗』の座するその部屋に、ひとりの烏天狗が足を運んでいた。


「天狗様ー。いらっしゃいますかー?ちょっとおはなしがあるんですけど。」


烏天狗の名前は清覧。

この寺に勤務する烏天狗のひとりである。

まだ若く、特別仕事ができるわけでも、特別神通力が強いわけでもなかったが、最近、彼にはある仕事が任されていた。


「おお。清覧か。なにかわかったか?」


天狗はおおきなからだを前のめりにし、清覧に詰め寄る。


「はい。前に報告したとおり、綾羽さまはお友達の妖怪のところにいらっしゃいます。」


清覧はさらりと言った。

清覧は以前、ひょんなことから天狗の家出娘綾羽と知り合う機会があり、時折、《カフェまよい》で一緒にお茶をする友人になっていた。

それを利用して、娘の情報をこっそり父親の天狗に流すという任務を請け負っていた。


「そうか。それで、他にはなにかわかったか? わしのことは何か言ってなかったか?」


「そうですねー。やっぱり、『千里眼』で綾羽さんの私生活を覗くのはやめたほうがいいと思いますねー。そのことに一番腹をたててるみたいですから。」


「しかし、わしは綾羽のことが心配でのう。」


「あの年頃の娘さんは複雑ですからねー。天狗様のことがキライってわけじゃなさそうなんですけどねー。」


「本当か?本当に綾羽はわしのことを嫌っておらぬのか?」


天狗がさらに詰め寄る。


「ええ、それは間違いないと思いますよ。だから、時々、家出をやめて帰ってきて、天狗様の顔をみたらまた出て行くんだとおもいます。」


「うーむ。わしはずっと綾羽にそばにいてほしいんじゃがのう。」


「あんまりしつこくすると嫌がる年頃ですからねー。」


年頃の娘をもった父親の悩みは、大妖怪『天狗』といえど変わらないようであった。


「ああ、それとこれ。頼まれていたお土産のおはぎです。」

清覧は天狗に包みを渡す。


「約束どおり、六個のうち二つは僕がいただきましたからね。」


「むう、しかないのう。しかし、おぬしは店で食べてきたんじゃろう?」


「それとこれとは、別です!」

清覧は言い切った。


「最近の若いもんは、ちゃっかりしとるのう。」

そう言いながらも、うれしそうにおはぎの包みを受け取った。


「それじゃあ、天狗様。これで失礼します。・・あ、そうだ。また、綾羽さまとお茶する約束をしたんですけど、その日、僕、仕事なんですよね。どうしましょう?」


「むう。しかたあるまい。休みをやるから、いって来い。 そのかわり、いいな。綾羽になにかあったら、どんなことでも報告するんじゃぞ!」


「はい。もちろんです。じゃあ、お休みの件、よろしくお願いします。」


清覧は一礼すると、部屋を後にした。


部屋をでた瞬間、ペロリと舌を出したのは、気のせいだったかどうかはわからない。




天然系烏天狗、清覧。

仕事はできないが、意外と出世するタイプかもしれない。





読んでいただいた方ありがとうございます。

幕間劇でございます。

かなり短めですが、ご容赦ください。


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