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妖怪道中甘味茶屋  作者: 梨本箔李
第二章 若葉
59/286

59 幕間劇 我慢は美徳

55 らんち大戦

の、数日前のおはなしです


妖異界のなか。

とある山は通称猿山と呼ばれていた。

それはその山の主がふたりの猿妖怪であったことから由来する。

狒狒ヒヒ猩猩しょうじょう

ふたりの妖怪は、今、おおきな悩みをかかえていた。




「どうしたらいいじょう? 悩むじょう。」


赤と黄色の派手な体毛をしたオランウータンのような妖怪、猩猩は頭を抱えた。


「ウヒヒ。いっそのこと、今日も食いに行ってしまうかのぉ。」


巨大なニホンザルのような風貌の狒狒は、欲望に任せた提案をした。


ふたりの目の前には、妖異界のお金が数枚積み上げられていた。

ふたりが山菜や筍を集めて稼いだお金の残りだ。


「でも、今日、食べに行ったら、明後日は食べに行けないじょう。」


「ウヒヒ。それはたしかに困るのぉ。」


ふたりは残りの金を、じっと見つめる。

何度数えなおしてもおなじ。

残った金は、《カフェまよい》のランチ四つぶん。

つまり、ふたりで行けば、二食分づつである。


「ウヒヒ。今日食べに行って、一食だけにするというのはどうかのぉ。」

狒狒が新たに提案した。


「今日、一食だけ食べて、明後日も一食だけ食べるなら、金は足りるじょう。」

猩猩は頷く。


「ウヒヒ。なら、今日、一食だけ食べに行くかのぉ。」


「しかし、今日、食ってしまったら、明後日はおかわりできなくなるじょう?」


「・・・・・。」


「・・・・・。」


「明後日は、あの日だのぅ。」


「明後日は、あの日だじょう。」


そう。明後日は特別な日だった。

前に一度出たランチメニュー。そのあまりのうまさに、常連たちが、もう一度作ってくれと声を揃えた。

その甲斐あって、店主は明後日のランチでもう一度、それをつくると約束してくれた。

そう、その魅惑のメニュー。


『鶏のから揚げ』


鶏肉にころもをつけて、油で揚げただけの料理に見えるのに、その味は、外側がサクサク、中身はやけどしそうなほど熱い肉汁が溢れ出すジューシーさ。そして、鶏肉はかめばかむほどうまみが染み出してくる。

狒狒と猩猩は、その味にガッチリと心を奪われていた。


「から揚げ定食は、一食では足りないじょう。」


「ウヒヒ。たしかに、せめておかわりはしたいのぉ。」


「だとしたら、今日は食いにいけないじょう。」


「ウヒヒ。そうなってしまうのぅ。」


「・・・・・。」


「・・・・・。」


「今日と明日は、がまんするじょう。」


「ウヒヒ。明後日のために、しかたないのぅ。」


「明後日は『から揚げ定食』だじょう。」


「ウヒヒ。明後日は『から揚げ定食』をおかわりだのぅ。」


ふたりの猿妖怪は、明後日のために、今日のランチは我慢することにした。




読んでいただいた方ありがとうございます。

今回で幕間劇 終了。

次回からは、三章 雨月、 梅雨時のおはなしになります。

世間はゴールデンウィークなのになぁ。

そのうち、筆が鈍って追い越されるんではないかと思ってますので、書けるときに書いておこうと思っています。

また、続きも読んでいただけると幸いです。

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