218 幕間劇 花札
前回のおはなしのおまけです。
妖異界にただひとつ、人間の店主が営む茶屋 《カフェまよい》。
いつもなら、すでに皆、床に就いている時間のはずだが、今夜は客の夜雀を加え、なにやら遊戯に興じていた。
「ほれ。『雨入り四光』じゃ。」
「ええ?」
「またですか?」
「ぐ。」
「ピィィ。」
寒空の中、凍えそうな状態で夜雀が店に現れた晩。
《カフェまよい》の従業員は、珍しく居間に集まって花札に興じ、親交を深めていた。
座敷わらしが並べた札は、桜、松、月、雨。
『四光』という上から二番目に高得点の役だった。
先程から、こういった高得点の役を連発し、座敷わらしが連勝していた。
真宵、金長、右近、夜雀の四人はほとんどあがれていない。
「ああ。『赤短』もついておったわ。まあ、おまけじゃな。」
「な。なんと!」
「嘘でしょ?」
「また、座敷わらしの勝ちか・・。」
「ピィィィ。」
最後に桜の札を合わせた際に、ついてきた短冊札。
それが松、梅の短冊札とあわせて『赤短』が完成していた。
『赤短』とてそう簡単な役ではないはずなのだが、座敷わらしは『四光』ついでに完成させていた。
「まったく。四人あわせても相手にならぬのう。」
「ぐ。」
「言ってくれるわね、座敷わらしちゃん。」
「これは、一泡吹かせるまでは寝られんな。」
「ピィ!!」
「首を洗って待っていてくだされ、座敷わらし殿。この金長、『久万郷』の狸の誇りにかけて、一矢報いてみせましょうぞ。」
金長は真剣な顔で札を混ぜる。
「ふん。返り討ちにしてくれるわ。恥をかかぬうちに撤退するが吉だと教えておいてやろう。」
座敷わらしは余裕の笑みを浮かべた。
『座敷わらし』。
幸運を呼ぶ妖怪とされ、家に憑けばその家には幸運と繁栄が約束されるという。
どうやら、その幸運はカードゲームにも通用するらしい。
結局、四人は連敗に連敗を重ね、遅くまで花札に熱中した挙句、意気消沈したまま解散することとなった。
次の日、全員が寝不足だったのは言うまでもない。
読んでいただいた方ありがとうございます。
前回のおはなしのおまけです。
章末にまわすほどのはなしでもなかったので、変なタイミングで幕間劇扱いです。
次回は狸さんのおはなしの予定です。




