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妖怪道中甘味茶屋  作者: 梨本箔李
第一章 桜
16/286

16 試練2

人間界とは別の妖怪たちの棲む世界、妖異界。

ひょんなことから異世界で甘味茶屋を営むことになった真宵まよい


剣も魔法もつかえません。

特殊なスキルもありません。

祖母のレシピと仲間の妖怪を頼りに、日々おいしいお茶とお菓子をおだししています。

ぜひ、近くにお寄りの際はご来店ください。

        《カフェまよい》  店主 真宵

飲食業にはトラブルが付き物だ。

なにしろ、毎日、何十人ものお客を相手にするのだ。

お客にもそれぞれ個性があり、何度も通ってくれる常連をいれば、初めて来店するものもいる。

同じメニューを食べ続ける客もいれば、毎回違うものを注文するものもいる。

気軽に話しかけてくる客もいれば、注文するとき以外、一言も発せず黙々と食べる客もいる。

無論、満足して帰ることもあれば、不満を残して後にすることもあるだろう。

そんな、多種多様の客の対応をするのだから、そう一筋縄ではいかないのが、接客だ。

それは、妖異界でもおなじこと。

これは、妖怪の棲む世界で甘味茶屋を営む一人の女性の、《試練》のおはなしである。


「いらっしゃいませー。」

真宵がはいってきたお客に声をかける。


「いらっしゃいませー。」

「いらっしゃいましたー。」


真宵そっくりの声が返ってくる。


(きたか・・。)

真宵はこころのなかで、構えをとった。

特殊なお客だからといって、笑顔を絶やしたり、サービスが雑になっては、プロの接客業とはいえない。


「こだまさん。よぶこさん。いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ。」

真宵は完璧な笑顔をつくり、対応する。


「こだまさん。よぶこさん。いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ。」

「こだまさん。よぶこさん。いらっしゃいました。お好きな席に座ります。」


『こだま』『よぶこ』

やまびこをおこす妖怪として知られる。

見た目は小学生くらいの子供。

『こだま』が相手の言葉をそのまま真似して、『よぶこ』が少しだけ言葉をかえて返答する。

ふたりが並んでいると会話がまるで伝言ゲームのような状態になる。


「すぐに、メニューをおもちしますね。」


「すぐに、メニューをおもちしますね。」

「すぐに、メニューをおもちしてください。」



「こちら、メニューになります。どうぞ。」


「こちら、メニューになります。どうぞ。」

「こちら、メニューですね。どうも。」


なにを言ってもそのまま返される。

それだけなら、まだしも、真宵自身の声真似で返されるため、なんとなく馬鹿にされているような気がしてくる。もちろん、相手に悪意があるわけではないのだろうが・・・。


「注文がお決まりになりましたら、およびください。」


「注文がお決まりになりましたら、およびください。」

「注文がお決まりになりました、およびしますね。」


一旦、距離をとろうとした、真宵を呼び止める。

まったく、こちらに主導権をわたさない。

(ま、負けるものですか。)


「ご注文はお決まりですか?」


「ご注文はお決まりですか?」

「ご注文はお決まりです。」



「何にいたしましょう?」


「何にいたしましょう?」

「何かにいたしましょう。」



「・・・・。」


「・・・・。」

「・・・・。」



「き、きょうのおはぎは、つぶあんときな粉ですよ。」


「き、きょうのおはぎは、つぶあんときな粉ですよ。」

「き、きょうのおはぎは、つぶあんときな粉ですか。」



「おまんじゅうは、そばまんじゅうですよ。」


「おまんじゅうは、そばまんじゅうですよ。」

「おまんじゅうは、そばまんじゅうですか。」



「・・・ご注文、お決まりなんですよね?」


「・・・ご注文、お決まりなんですよね?」

「・・・ご注文、お決まりなんですよ。」



「ご注文は、何にしますか?」


「ご注文は、何にしますか?」

「ご注文は、何かにします。」



「羊羹はいかがですか?」


「羊羹はいかがですか?」

「羊羹はいただきます。」


(羊羹だったか・・。)

真宵は心の中で納得した。


「お茶はお付けいたしますか?」


「お茶はお付けいたしますか?」

「お茶はお付けいたします。」



「羊羹とお茶のセットを二つでよろしいですか?」


「羊羹とお茶のセットを二つでよろしいですか?」

「羊羹とお茶のセットを二つでよろしいです。」



「かしこまりました。少々お待ちください。」


「かしこまりました。少々お待ちください。」

「かしこまりください。少々お待ちします。」



やっと通った注文に、真宵は胸をなでおろす。

(ま、まだまだ、これからよ。気を抜いちゃダメ。)

自分を奮い立たせる。





「お待たせいたしました。羊羹とお茶のセットになります。」


「お待たせいたしました。羊羹とお茶のセットになります。」

「お待ちしました。羊羹とお茶のセットになるのですね。」



「今日のお茶は、玄米茶です。」


「今日のお茶は、玄米茶です。」

「今日のお茶は、玄米茶ですね。」



「それでは、どうぞごゆっくり。」


「それでは、どうぞごゆっくり。」

「それです。どうもごゆっくり。」



もう、なにかよくわからない返答に、笑顔を引きつらせながら、客席を後にする。

しかし、まだここで、気を緩められない。




(ぜったい、向こうからは呼んだり、話しかけたりしてこないのよねぇ。)

やまびこの妖怪なので、こちらから、話しかけないと特に何かするわけではない。

最初に来店したときなど、知らずにそのままにしておいたら、食べ終わっても閉店間際まで、ずっとすわったままだった。

もちろん、サービスのプロとして同じ失敗はしない。

ころあいを見計らって、よぶこたちのテーブルへと向かう。


「お味はいかがでしたか?」


「お味はいかがでしたか?」

「お味は美味でした。」



「満足していただけましたか?」


「満足していただけましたか?」

「満足していただけません。」


(あら?満足はしていないのね。でも味はおいしかったらしいし。。)

真宵は、ふたりの言葉に、さらにさぐりを入れる。


「羊羹のおかわりはいかがですか?」


「羊羹のおかわりはいかがですか?」

「羊羹のおかわりはいりません。」



「ほかに、なにかおもちしましょうか?」


「ほかに、なにかおもちしましょうか?」

「ほかに、なにかおもちしてください。」



「なにがよろしいですか?」


「なにがよろしいですか?」

「なにかがよろしいです。」


(う。面倒くさい。でも負けちゃだめ!)

真宵は自分に叱咤する。


「おはぎはいかがですか?」


「おはぎはいかがですか?」

「おはぎはいりません。」



「おまんじゅうはいかがですか?」


「おまんじゅうはいかがですか?」

「おまんじゅうはいりません。」


メニュー全部かたっぱしから確認すべきか悩んでいると、真宵はふたりの湯飲みが空なのに気がついた。

(もしかして。)


「お茶のおかわりはいかがですか?」


「お茶のおかわりはいかがですか?」

「お茶のおかわりはいただきます。」


(くっ。お茶だったのね。もっとはやくに、湯飲みが空なのに気がついていれば・・・。)

真宵は悔やんだ。


「すぐ、お煎れしますね。二煎めでよろしいですか?」


「すぐ、お煎れしますね。二煎めでよろしいですか?」

「すぐ、お煎れしてください。二煎めでよろしいです。」


真宵がお茶を煎れると、ふたりの妖怪は喜んでそれを飲んだ。

飲みおわったのを確認し、急かしてるかんじがしない程度の間をおいてから、再び席へと赴く。


「もう一杯、お茶のおかわりはいかがですか?」


「もう一杯、お茶のおかわりはいかがですか?」

「もう一杯、お茶のおかわりはいりません。」



「ご満足されましたか?」


「ご満足されましたか?」

「ご満足されました。」



「お会計しましょうか?」


「お会計しましょうか?」

「お会計してください。」


本来なら、会計を急かすようなことはしないのだが、この場合は仕方ない。

真宵は、会計を済ませ、ふたりを送り出す。


「ありがとうございました、。またいらしてください。」


「ありがとうございました、。またいらしてください。」

「ありがとうございました、。またいらっしゃいます。」


二人の背中を見送りながら、真宵はお辞儀する。

(まだまだね。あのふたりを完璧にもてなしてこそ、接客のプロよ!)

心に誓った。

彼らをいつの日か完全攻略することを。



『よぶこ』『こだま』

《カフェまよい》において、店員の先読み接客力がためされる客。
















読んでいただいた方、ありがとうございます

今回の妖怪は 「よぶこ」「こだま」です。いわゆる山彦ですね。

今回、コピペだらけですが手抜きではありません^^;

いつもにもまして、短くなっていますが楽しんでいただけたら幸いです。


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