違和感
前回に引き続き、書きたいもの書いていきます。よろしくお願いします!
~第五章~
僕にとって死というものは、解放である。
だから。
―――――自分の手と足が動かなくなった時、何も感じなかった。
ああ、死ぬんだな、そんな感慨を持った。でも、怖いものは怖かった。それを開放だとはいったが、人間の本能が”それ”を忘れさせてはくれない。だが、とどめを刺す敵も、もういなかった。
僕は任務を遂行した。向かいの廃ビルに敵を見つけ、三人までは移動を繰り返しながら、なんとかばれずに倒すことができた。だが、残りの七人は固まっていて隙が覗えなかった。そのため、侵入を試みたのだ。すると、敵はちょうど仲間の死体を見つけたところのようで、警戒が強まっていた。激しい抵抗を受け、苦戦の末ようやく制圧したのだが、戦闘により老化した建物の骨組みが崩れ、命はまだあるものの、右腕右足がつぶされてしまった。
もう、戦場には出れないかな...。
なくなったはずの右腕が震える感覚を覚え、思わず肩を押さえつけた。まだ血の流れるその様子は、刻一刻と死の近づく様を具現化していた。だんだんと意識が薄れていく。ふいに、赤い髪が頭をよぎった。なぜ?だが意識は消えかかる。周囲が騒がしくなってきた。敵かな?もう死ぬのかな...。
遠くで、聞き覚えのある声が聞こえた。
そこで意識は途切れた。
*
夢の中で、僕はウイルスと話していた。
「なぜ君は」
「ん」
「僕を使わないんだい?」
白く、境目のない空間に二人きり。幼い少年の姿をした美形のそれは、愚門を投げかけてくる。
「使ったら、寿命が縮むからだよ」
赤い髪の少年は笑った。
「それはそうだけれどね?君は死にかけたでしょ?なぜその時に使わなかったのかと思ってね」
「僕は死んでも構わない」
「そんなこと言うなよー。友達できたでしょ?」
「...」
「それに、だ」
赤い瞳をした少年は続ける。
「君の能力が無駄になってしまうよ。君は”回復”できるだろ?ほかのやつらはばかばか殺すしさ。”唯一”人を救える能力なんだから」
「それは、君の意志?」
彼は少し苦い顔をして言う。
「...まだ教えられないかな。それより」
彼は笑った。
「速く行かないと、皆が死んでしまうよ?」
*
目が覚めるとそこは病院だった。何人かの人の影が、視界の隅に発見できた。
「目が覚めたか」
「...」
一人はガザンだった。無駄に体力を使わないために喋らない。だが、首を振ってこたえた。腕と足は見ないようにして体を起こす。時計を見ると午後六時五分。
「言いたい事は分かる。作戦は成功した。これは良い報告だ。だが、悪い報告もある」
首を縦に振る。ガザンは続けた。
「奴らがまた、周辺に兵を送ってきた。空爆は囮で、こっちが本命だろうな」
そうか...学校はどうなったかな...
『?』
なぜそんなことを考えた?
表情が歪む。顔を伏せた。それを見たガザンが、微笑んだ気がした。
「さっきの話だが、あの基地が潰されたことで人員が間に合っていない。このままだと制圧されてしまうだろうな。取り戻せばいい話だが...それはそうと」
顔を上げる。
「お前の学校が危ない。どうする?」
「...行くよ」
どうだったでしょうか。評価等よろしくお願いします!