懐かしの開戦
やっと動きますよ!新しいキャラクターがたくさん増えるので期待を!
~第四話~
四時間目。ハルとサキのクラスでは、演習場での射撃訓練が行なわれていた。今日二回目となる射撃訓練だった。一時間目はSMG、そして今の時間にはSRの使い方が説かれていた。広い演習場で、みんなして体育座りで話を聞いている。
(僕としてはもう習った内容なんだけどな...)
軍人兼先生による10分間程の説明が終わり、やっとのことでマガジンに触れる。使われる銃は、百年以上前の旧国で使われていた「SV-98」だ。単発、さらに一発一発排莢しなければ次弾装填できず、その度に標準がずれるという面倒な銃だ。銃口先端にはマズルブレーキが備えてあり、銃床には二脚の標準装備がしてある。装弾数は十発だ。
装填まで終わって、的撃ちに入る。先生から反動が強いという注意が入り、各自狙撃を始める。現在使っている的は円形のものだが、三年生になると人型のものになる。そうやって人を撃つ事への抵抗を減らしていくのだ。
二年生にもなれば、大体の銃には慣れる。皆、当たるが確実でない位置に着弾させているようだ。僕の隣で撃つ彼女も例外ではない。彼女にだけに聞こえる声で「下手...」と呟くと、彼女はアンダーバレルから手を離し、即座にバッ、と振り返った。
「あんたがうますぎるのよ...っ!」
そう言った時には、僕は既に標準を覗き込んでいて、それを見て彼女は顔を赤くして怒る。そして勢いよく的に向き直った。
「ハハ....はぁ...」
誰にも聞こえない声で笑う。
しょうがないんだ。軍に入ってたんだから。まぁ、それだけじゃないけど。
グリップを握ってマガジンを押し付ける。右側面にあるレバーを引き切って装填。標準の中に的を収めて、呼吸を止める。狙撃の基本だ。こうするとスコープが安定する。そして的にレティクルを合わせて引き金を
――――引く。
凄まじいリコイルを強引に抑え込む。どうやら、中心の赤点に当たったようだ。彼女以外誰も見ていない、と思ったら後ろから声を掛けられた。
「さすがだね、ハル!相変わらずうまいね...。ていうかさ、なんで今日は無視するの?僕が君のアイス食べたから?」
真顔で見つめる。すると焦ったように、
「いや、本当にごめん!そんなに大事にしてるとは思わなかったんだよ!同じの買って来るから許してよ~~!」
あれは期間限定発売だったのだ。もうあいつは戻ってこない...。今度何かおごらせよう。それでチャラだ。彼の名はイシュータ・ショウ。金髪、成績優秀で容姿端麗、意志の強そうな瞳は、一見反して静かな印象を与える。女子からは黄色い歓声浴びることも多いのだが、彼の意志で彼女はできたことがない。男子からは妬みも勿論あるが、尊敬の視線を向けられる程やさしい。怒ったところを見たことがない。僕とショウは現在、お金のない者同士でシェアハウスのような生活をしている。家は僕が貯蓄で買った、二人では広すぎる程の一軒家に住んでいる。(当然ながら貯蓄は消えた。たくさんあったんだけどな...)
「サキちゃんはどう?当たる?」
思考にふける僕を置いて、二人の話題は今日の射撃の調子になったようだ。
「ううん。前よりは当たるようになったんだけど、中々中心にいかなくて...」
「そうなの?ハルに見てもらったら?上手だし」
「!?い、いやいや!無理だよそんなの!あんな奴と!」
「サキちゃんっ!?ハルが可哀そうなことになってるよ!?」
そんな、いつもの授業の中の会話をしていたその時。
――――――轟音が鳴り響く。
「何!?」
サキが声を上げ、立ちすくむ。そして消える音。ハルはその中に、平和な今にはありえない「音」を聞いた。
誰かがつぶやいた。
「戦争...?」
その言葉を切っかけに、生徒が騒ぎ始める。
「そんなわけないだろ」
「でもあの音、飛行機飛んでたよね...」
教室の方からもざわめきが聞こえてくる。
「本当に...?」
ショウがつぶやく。
僕にはわかっていた。
「...そんなわけないよね?」
サキは泣きそうに言う。
これまでの経験が、警鐘を鳴らしていた。頭が割れそうなほどに、うるさいそれを止めるため。
「ハル?」
僕は走り出した。
「ハル!?」
ショウの呼ぶ声を無視して、生徒を鎮めている“軍官”にアイコンタクトをとる。彼は頷き、生徒に指示を始めた。僕はそのまま廊下へ飛び出し、校庭へ向かう。既に迎えは来ていた。
「...開戦、だって」
「そう...」
黒い髪を後ろに流した年下の少女に促され、車に乗る。一目で装甲車と分かる車のごついラインに、負けないくらいごつい男が乗っていた。黒い髪を短く切り揃えたその男の名は、ガザンという。僕が“軍”に入っていた時の上官だ。今もだが。
「久しぶりだな!学校生活は楽しめていたか?まぁもう終わってしまいそうだが...」
「.....」
「なんか反応してくれよ...まったく、変わらんようだな」
気さくで良い男だとは思っている。だが。
「彼女はできたか?お前イケメンだからモテただろ?」
......ついていけない。
「まぁそんな事はどうでもいい。戦争が始まったんだ。お前のいた学校から十キロの場所にある基地が、横五キロ、縦十キロに渡って空爆された。ここは敵国との境界線が近いからな...するべきことはわかってるな?」
無言で頷いておく。
「能力は使いたくないだろ?だから、お前愛用してた武器は持ってきた。これだ」
彼は車の下部のトランクから、長大な黒い箱を取り出した。そして、その中には
「それで今回は、後衛を頼みたい」
SR――――H&K PSG-1だった。
やっと物語が動いた気がします。三人も新しく出しました。謎の少女、ハルの上司の軍官。そしてイケメン。これからの展開にもご注目ください!