赤丸おちた白旗よ
青空の下で白旗を掲げる
負けました もう負けました
これ以上なにを私から奪っていくのですか
日照る太陽 かげろう舞う季節
一葉の葉書はスコープで燃え崩れた
その内容を知るものはもう居ない
明日が来るのなら昨日があった
我武者羅に生きた日々の落陽は思うよりも尚早で
今ひとたび旗を掲げるのは悔しくも遼前たる現実
風凪ぐ空の下で太陽を仰ぐ
日の丸落ちた白旗に追い風は吹かず
労働者たちは黒こげになり火車を引く
ここは地獄
草の芽ひとつ生えぬ干ばつしたヒビ割れの谷間
放射状に広がる脈の失せた人間の残骸
彼方から重ね重ね訪れるは行進する軍靴の響き
逃げ惑え捉われし者たちよ
色を消失した者たちよ 絶望の底を知る者よ
明日食う米もなく飢えしのぐ人喰い
追って啄むカラスが鳥葬
あとには人っ子ひとり居らず
失うものなど無くなった
地層から白く浮き出た骨が遺した記憶は私たちに警告を鳴らし続ける




