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そして俺は考えることをやめた


あまりの寝心地の悪さに次第に意識が戻ってきた。

全身に刷り込まれたかのような鈍い痛み。

その痛みで意識が途切れる前の記憶が繋がってくる。その繋がった記憶をもとに現在の状況の確認。


目を開けて辺りを見回す。


既に日は沈んでおり、木々の木漏れ日は、月明かりに代わっている。月明かりに照らされた木々は薄ぼんやりと発光しているように淡い光を携えている。それに星の輝きが加わりなんとも幻想的な光景だ。

いい夜だなと思った。


そして、


そして、何故か俺の胸の中には、すやすやと気持ち良さげに白いワンピースの少女、木下紫陽花が寝息を立てていた。

さっきからやたらとフニフニであったかくていい匂いがすると思ったら原因はこれか……。

木下紫陽花はしっかりもといがっちりと俺に抱き着いていた。

なんで、抱き着かれているのって、聞かれたらその質問には答えようがない。

背中に回った腕はしっかりホールドされている。

いや、さっぱりだね、なにがなんだか。

取り敢えず、礼儀として抱き返した。

ああ、なんだ、癒されるな……このフニフニでほんわか暖かくていい匂いがする。木下紫陽花の温もりと一緒ににじむ幸せもじんわりと俺の心を温めるようだ。

俺が抱き返したことに寄って心なしか俺の背中に回った腕に力が篭った気がした。それに答えるように俺は抱きしめる腕に少し力を込めるとアジサイは、目を閉じたまま幸せそうに微笑んだ。


かわいい!!


思わず叫んでしまいそうになるほどにその微笑みは殺人的な破壊力を秘めていた。

父さん、母さん、俺、今、幸せです!生んでくれてありがとう!

俺はそのまま、幸せに包まれ(包み?)ながら、もう一眠りすることにした。


おやすみなさい。


この時の俺は実のところをいえば、この事態のあまりの面倒臭さに目をそらして、ごーとぅー夢の世界で、現実逃避しただけという、まったくもってだめだめな考えだったりした。

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