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白いワンピース


学校を出て裏に回り込んだはいいがどうやってあの木まで行くか?

まっすぐ木を目指しのぼっていこうにも、斜面が急でめんどくさい。

となれば、一度上までのぼりきった後、上から下りたほうが幾分楽なきがする。

確かこの山の頂上には公園があり、そこに続く石段ならある程度ちゃんとしていたはず。

急な斜面とある程度ちゃんとした石段――

俺は石段を選んだ。

走り出す。

少し走って目的の石段はすぐに見つかった。

石段は草葉に囲まれ、少々わかりずらかったが、足で踏み荒らされた形跡がある。最近になって誰かのぼっていったようだ。

俺はそれを一段飛ばしに駆け上がっていく。

結構きついがそこは気合いだ!頑張れ俺!

木々がざわめき、木漏れ日に包まれた石段は深緑のトンネル。

ひどく綺麗で立ち止まって全身でそれを感じていたかったが、それは後回しだ。余計な事を考えていると足が止まる。

今は落ちたさん(命名俺)の事だけを考えよう。

きっと、今頃落ちたさん(命名俺)は大怪我をして、とても危険な状態だ。

事は一刻を争う、そう考えろ。

そうすれば自然と足に力が篭る。

心配はしすぎてもしすぎることはないはずだ。


石段をのぼりきって公園についた。

荒れた呼吸を整えつつ辺りを見回す。

一通り揃った遊具に辺りをフェンスが取り囲んだ、広めの公園。山の頂上とはいえ辺りを取り囲んだ木々に視界を遮られ眺めは皆無。

立地条件の悪さに加え、さっきのぼってきた細く急な階段。休日でもこんな所に遊びに来る暇人はそうそうにいない。

錆び付いた遊具とところ狭しと伸びまくってる雑草どもがそれを物語っていた。

「これは……」

俺の立っているところから奥のフェンスまで、一本道になるようにちょうど雑草が薙ぎ倒されていた。

……確か、奥のフェンスの方向はあの木があった方向と同じ。

俺はその一本道を辿るように奥のフェンスまで進む。フェンスに手をかけ一気に跨ぎ、公園の外へ、

そのまま止まらず斜面をくだり、あの木の下へと向かった。


斜面が急なぶんそれを降るのは速い、くだり初めてすぐにあの木を見つけた。大きくてよく目立つ。

「……うっ……ぐすっ……」

啜り泣く声。

大きな木の根本に白いワンピースを着た一人の少女がうずくまっていた。

「おい!」

近づいて声をかけた。

少女は俺の声に反応してビクリと体を震わせ顔をあげた。


潤んだ瞳、頬には涙の後がついていた。


「大丈夫か?怪我とかしてないか?」

「えっ?あ、あの、その、な、なんで?」

状況が理解できずに、困惑している。

こういうときはあれだな、少女が安心できるよう、素敵でロマンチックな声をかければいいんだよな。

「フッ、俺はあなたに危機が迫っているとしたら、いつでもどこでも駆け付けます。」

最高の微笑みをプラスでプレゼント。

フッ、これでこの少女は俺にメロメロの骨抜きだ。

また、一人の女性の人生を狂わせちまったぜ、俺も罪な男になったもんだよまったく……。

「発言が痛い、気持ち悪いよ、馬鹿じゃないの?」

そして俺の心が深く傷ついた……痛い!心が痛いよ!俺の汚れを知らず、純粋無垢で、まるでガラス細工のような心が粉々だ。もう立ち直れないよ……

「……冗談はさておき、大丈夫なのか?怪我とかしてるんじゃないのか?」

「え、えっと足が……」

「どれ、見せてみろ。」

俺はしゃがみ込み少女に足を出すようにさとす。少女は少し戸惑ったが、やがて怖ず怖ずと右足を差し出してきた。中々の腫れ具合だった。くるぶしの辺りが痛々しげに赤く腫れ上がっている。みてるこっちも痛くなってきそうだ。

おもむろに少女の後ろにある極太の大樹を見上げた。

高さとしては三階建ての校舎とどっこいどっこいってとこか……これから落ちてこの程度の怪我ですんだのは運がよかったのかもしれない。

「折れてはいないみたいだし、ほおっておけばいずれは治るが、手当したほうがいいな」

少女に背を向け屈む。

「乗れ、おんぶしていくから」

「え、え!?あ……あの、その、えーと…………ありがとう」

少女は少し戸惑っていたがやがて、俺の首にゆっくりと手を回し、体を預けてきた。


柔らかくて、女の子特有のいい匂いがした。


「よし、行くぞ」

少女を背負い俺は立ち上がった。

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