自意識過剰
由奈は連日忙しい日々を送っていた。
今日は先々週の代休がやっと取れて、久しぶりに見たかった映画を一人で見てきた。
帰り道、電車の中で気持ちの良い揺れに身を任せ、ふと顔を上げると、斜め前に立っている小学生の女の子と目が合った。そしてすぐに逸らされる目。
その少女は友達と一緒だ。友達と手を繋いで、おしゃべりをしながら楽しそうにしている。
あんまり感じの良い態度では無かったけれど、由奈は気にせず降りる駅まで軽く眠ろうと目を閉じた。
降りる駅に着いて、由奈は慌てて席を立つ。改札に向かう途中、先ほどの少女が前を歩いているのに気が付いた。
改札口を出て帰路に就く。先ほどの少女が少し前を、友達と手を繋ぎながら歩いていた。
その少女が、不意に振り向いて由奈を見る。
「……?」
キョトンとする由奈に、意地悪そうに笑いまた前を向く。そして友達にコソコソと何かを囁き、大声で笑いあっていた。
(何なの、あの子?)
何だかわからないけれど、その小学生はしばらく歩いては時々振り向いて、由奈を見ては嫌な感じで笑うのだ。まるで由奈がその子の後を気にしてつけていると言わんばかりに。
少女の後ろを歩いているのはただの偶然で、家路の方向が一緒なだけなのに、意味深に笑われている。
却って由奈の方がその少女の事を気持ち悪いと思っていた。
数分歩いたところで道が二股に別れる。由奈の前を歩いている少女たちは真っ直ぐ歩いて行った。
その方向を後ろで見ていた由奈はホッと息を吐く。
由奈とは違う方向に歩いて行ったのを見て、これ以上不快な気持ちにならないで済むと思ったのだ。
(ホント、なんだったんだろう)
「あれ、雛ちゃん、さっきの人いなくなってる」
「ホントだー。真凛ちゃんの事つけてたわけじゃないんだね」
「…でも、真凛の事、気にして見てるようだったんだよ」
「…そうなの?」
雛は真凛のそういうクセは前々から気が付いていたので、またかと心の中でこっそり思う。
真凛は常から、みんなに注目を浴びていると勘違いする子なのだ。
それにしても、まったく知らない女の人までが自分の後をつけていると思う神経もどうなんだとも思ってしまう。
雛はこっそり心の中で真凛を笑っていた。




