八十四話 一時の再会-1
砂漠は静寂に支配されている。周囲に生き物の気配を感じられない。
誰もいない砂漠。音もなく浮かぶ天使と俺だけの世界。月光すら排除して、歪んだ神聖を押し広げる天使。
あれが仕える神は、何を託したのか。人を含む生命の営みを穢れと捉え、浄化する。そんなことのためにあれを造り出したのか。
歪んでしまった故、もとの形を推測することは叶わない。
「哀れだな」
『××××――。世界に仇名すもの××××、世界を破壊するもの××××。破壊の神よ。我が汝を浄化する――』
良く理解できない箇所がある。理解できない部分は神の領域とでもいうべきか。俺の頭ではそれを再生できない。
学習能力は、少し厄介だ。出し惜しみはしない。
「火竜刀・極大・爆」
天使の頭上に生成した十メートル級の火竜刀が、障壁に触れ爆ぜた。爆風が砂を巻き上げる。
「…………」
ノーダメージか。もっと、出力を上げないと。次は、何を試そう。この状況ならあれが使えるな。あれとあれを組み合わせて使い潰そう。
この天使が相手ならやり過ぎということはないだろう――。
う~ん。この主人公って万人受けしないだろうな。闇落ち一歩手前いうのか……。笑っているしな。戦闘になった途端、上機嫌だし。
大型のスクリーン――壁に映された映像は、どこまでもリアルだ。狭いボロアパート。プロジェクターの光が埃を浮き彫りしている。
そろそろ掃除しないとな。就職活動に手一杯で、家事にまで手が回らない。メイドさんとかって大変な仕事なんだな。あんなデカい屋敷の掃除をするんだから。
主人公の動きに合わせて画面が動くから、注視していると酔ってしまいそうだ。酒を飲み過ぎているせいかもしれないけど。
それにしても面白みのない作品だ。主人公が様々な力を乱発しているせいか、置いてきぼりにされている気分に陥る。技名も叫ばないし……。
あと、カタルシス度が低い。もっと、派手な技を使ってほしい。敵の内部を攻撃するって地味すぎるだろう。俺だったら、ここで人型機動兵器を登場させるな。天使型の敵も形態変化したりしてさ……。
ん? ノックが聞こえる。誰かがドアを叩いているみたいだ。一体、誰だろう? 友達なんていなしな。音が煩かったか。でも、隣は空いていたはずだ。
今、目が離せないしな。居留守を決め込もうか。